ばね振り子と単振り子
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (1) ア (ウ) ㋑「振り子に関する実験などを行い,単振動の規則性を見いだして理解するとともに,単振動をする物体の様子を表す方法やその物体に働く力などについて理解すること。」。
0. どういうまとまりか
単振動の具体例が、ばね振り子と単振り子です。どちらも、「つり合いの位置からずれたときの合力が の形になる」ことを確かめれば、周期は に を入れるだけで出ます。
違うのは、復元力の役をする力と、そこから決まる です。
| 水平ばね振り子 | 鉛直ばね振り子 | 単振り子(振れが小さいとき) | |
|---|---|---|---|
| 復元力の役をする力 | 弾性力 | 弾性力と重力の合力 | 重力の、円弧の接線方向の成分 |
| 比例定数 | (ばね定数) | ||
| 振動の中心 | ばねが自然の長さの位置 | つり合いの位置(自然の長さから 伸びた位置) | 最下点 |
| 周期 | |||
| 周期を決めるもの | 質量とばね定数 | 質量とばね定数 | 糸の長さと重力加速度 |
| 周期に関係しないもの | 振幅、重力加速度 | 振幅、重力加速度 | 振幅、おもりの質量 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 鉛直ばね振り子の振動の中心は、つり合いの位置。自然の長さの位置ではない。重力は中心をずらすだけで、周期は水平のときと同じ
- 単振り子の周期は、おもりの質量によらない。ばね振り子の周期は質量による。逆に、重力加速度に関係するのは単振り子だけ
- 単振り子が単振動とみなせるのは、振れが小さいときだけ。 も、振れが小さいときの式
このノートでは、周期を と書くので、糸の張力の大きさは と書きます。
1. 水平ばね振り子
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋑
ばねにおもりを付けて振動させるものを、ばね振り子といいます。なめらかな水平面上に置いた場合がいちばん単純で、水平方向の力は弾性力だけです。
なめらかな水平面上の水平ばね振り子(ばね定数 、質量 )で、復元力の役をする力と、周期は?
復元力は、ばねの弾性力 ( は自然の長さの位置からの変位)。周期は
の がばね定数 そのものになる。おもりが重いほど、ばねが弱いほど、周期は長い。
水平ばね振り子で、ばねを自然の長さから だけ伸ばして静かに手を離した。振動の中心と振幅は?
振動の中心は、ばねが自然の長さになる位置。振幅は
静かに離した(初速度 0 の)位置は、速さが 0 の点なので振動の端になる。中心から端までの距離が振幅である。
2. 鉛直ばね振り子
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋑
ばねを天井からつるして振動させると、弾性力のほかに重力も受けます。それでも単振動になり、周期は水平のときと変わりません。
鉛直ばね振り子(ばね定数 、質量 )の振動の中心はどこか?
弾性力と重力がつり合う位置。ばねが自然の長さから だけ伸びた位置
つり合いの式は 。自然の長さの位置を中心としてしまうのが典型的な誤りである。
鉛直ばね振り子で、おもりがつり合いの位置から鉛直下向きに だけずれた位置にある。受ける力の合力は?
鉛直下向きを正として ( はつり合いの位置でのばねの伸び)
なので、重力はつり合いの位置での弾性力と打ち消しあう。残るのは、つり合いの位置からのずれに比例する復元力だけである。
鉛直ばね振り子の周期は? 水平ばね振り子と比べると?
。同じばねと同じおもりなら、水平のときと同じ
合力が なので 。重力は振動の中心をずらすだけで、周期には関係しない。重力加速度の違う場所でも、周期は変わらない。
鉛直ばね振り子で、ばねが自然の長さの位置でおもりを静かに離した。振幅は? おもりが最も下がったときのばねの伸びは?
振幅は 。最も下がったときのばねの伸びは
離した位置が上の端で、中心(つり合いの位置)はそこから だけ下。下の端は、中心からさらに同じだけ下になる。
3. 単振り子
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋑
軽い糸におもりをつるし、鉛直面内で小さく振らせるものを単振り子といいます。おもりは円弧の上を動きますが、振れが小さければ、水平な直線の上の単振動とみなせます。
単振り子の周期は?(糸の長さ 、重力加速度の大きさ ) 成り立つ条件は?
。振れが小さいときに成り立つ
糸が長いほど周期は長く、重力加速度が大きいほど周期は短い。おもりの質量と振幅は式に入っていない。
単振り子で、復元力の役をする力は何か? 変位 を使って表すと?
重力の、円弧の接線方向の成分。糸が鉛直から角 傾いているとき大きさ で、最下点へ戻す向き。 で、振れが小さいとおもりはほぼ水平な直線の上を動くとみなせるので
は最下点からの水平方向の変位。 の が にあたる。
単振り子で、糸の張力は復元力に加わるか?
加わらない。張力は糸の方向の力で、おもりが動く方向(円弧の接線方向)に垂直だから
張力は、重力の糸の方向の成分とあわせて、円弧に沿って向きを変えるための向心力の役をする。
単振り子の周期が、おもりの質量によらないのはなぜか?
復元力の比例定数 が質量に比例するので、 に入れると が消えるから
重いおもりは動かしにくいが、そのぶん復元力も大きい。自由落下の加速度が質量によらないのと同じ事情である。
振り子の等時性とは何か?
振れが小さいとき、単振り子の周期が振幅によらず一定であること
振れを大きくしていくと、円弧を水平な直線とみなす近似が悪くなり、周期は よりわずかに長くなる。
4. 周期を変える要因
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋑
ばね振り子と単振り子では、周期を決めるものが違います。「何を変えたら周期が変わるか」を、2 つを並べて押さえます。
ばね振り子と単振り子を、重力加速度が地上より小さい月面へ持っていった。周期はそれぞれどうなるか?
ばね振り子の周期は変わらない。単振り子の周期は長くなる
ばね振り子は で を含まない。単振り子は で、 が小さいほど周期が長い。
ばね振り子と単振り子で、おもりの質量を大きくした。周期はそれぞれどうなるか?
ばね振り子の周期は長くなる。単振り子の周期は変わらない
月面へ持っていく場合と、ちょうど逆の組み合わせになる。振幅を変えた場合は、どちらの周期も変わらない(単振り子は振れが小さい範囲で)。
単振り子の周期を 2 倍にするには、糸の長さを何倍にするか? ばね振り子の周期を 2 倍にするには、おもりの質量を何倍にするか?
どちらも 4 倍
周期は 、 に比例する。平方根の中を 4 倍にして、はじめて周期が 2 倍になる。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ウ)-㋑
以下、問 5 を除いて、重力加速度の大きさを とします。円周率の扱いは、問題ごとに指定します。
問 1 なめらかな水平面上で、ばね定数 の軽いばねの一端を固定し、他端に質量 の物体を付けた。ばねを自然の長さから だけ伸ばして、静かに手を離した。(1) 周期を求めよ。円周率は とする。(2) 物体の速さの最大値を求めよ。
(1) (2)
方針 水平ばね振り子なので 。静かに離した位置が端なので、振幅は 。速さが最大になるのは振動の中心で、値は である。
- (1) は 。その平方根は (単位は s)
- に入れると、
- (2) に値を入れると、。よって
- 振幅は 。速さの最大値は で、
問 2 ばね定数 の軽いばねの上端を天井に固定し、下端に質量 のおもりをつるした。(1) おもりが静止しているときの、ばねの伸びを求めよ。(2) おもりをつり合いの位置からさらに だけ引き下げて、静かに手を離した。振動の周期を求めよ。円周率は とする。(3) おもりがつり合いの位置を通るときの速さを求めよ。
(1) (2) (3)
方針 鉛直ばね振り子の振動の中心はつり合いの位置で、周期は水平のときと同じ 。つり合いの位置から引き下げた距離が振幅になる。
- (1) つり合いの式 から 。値を入れると、
- (2) は 。その平方根は (単位は s)
- に入れると、
- (3) に値を入れると、。よって
- 振幅は、つり合いの位置から離した位置までの 。中心での速さは で、
ここで間違えやすい 振幅を、自然の長さの位置から測って としてしまうこと。振幅は振動の中心(つり合いの位置)から測る。
問 3 (1) 糸の長さが の単振り子の周期を求めよ。(2) 周期が の単振り子を作るには、糸の長さをいくらにすればよいか。どちらも振れは小さいものとし、円周率は とする。
(1) (2)
方針 を使う。(2) は両辺を 2 乗して について解く。
- (1) は 。その平方根は (単位は s)
- に入れると、
- (2) の両辺を 2 乗すると
- について解くと
- 分子は 、分母は
- よって
ここで間違えやすい (2) で 2 乗するときに、 の 2 乗を としてしまうこと。 である。
問 4 周期がどちらも の、ばね振り子 A と単振り子 B がある。次のそれぞれの操作をしたあとの A、B の周期を、 を使って答えよ。単振り子の振れは小さいものとする。(1) おもりの質量を 4 倍にする。(2) 振幅を 2 倍にする。(3) 重力加速度の大きさが地上の 倍の天体の上へ持っていく。(4) A はばね定数が 4 倍のばねに取りかえ、B は糸の長さを 4 倍にする。
(1) A は 、B は (2) A は 、B は (3) A は 、B は (4) A は 、B は
方針 A は 、B は 。操作で変わる文字が式に入っているかを見て、入っていれば平方根の中が何倍になるかを数える。
- (1) A は が 4 倍で、 から周期は 2 倍。B の式に は無いので変わらない。
- (2) どちらの式にも振幅は無いので、変わらない。
- (3) A の式に は無いので変わらない。B は の分母が 倍になり、平方根の中が 4 倍。周期は 2 倍。
- (4) A は の分母が 4 倍になり、平方根の中が 倍。周期は 倍。B は が 4 倍で、周期は 2 倍。
ここで間違えやすい (1) で B も重くなったぶん遅くなる、(3) で A も重力が弱いぶん遅くなる、と考えてしまうこと。式に入っていない量は、周期に関係しない。
問 5 糸の長さ(固定点からおもりの中心まで)が の単振り子を小さく振らせ、10 往復する時間を測ったところ であった。(1) 周期を求めよ。(2) この測定から、重力加速度の大きさを有効数字 3 桁で求めよ。円周率は とする。
(1) (2)
方針 周期は 1 往復の時間。 を について解き、測った と を入れる。
- (1) 10 往復で なので、1 往復の時間は
- (2) の両辺を 2 乗すると
- について解くと
- 分子は 、分母は
- よって
ここで間違えやすい 1 往復だけを測って周期とすること。ストップウォッチを押す遅れの影響が大きくなる。10 往復の時間を測って 10 で割ると、その影響が になる。
【発展】鉛直上向きに加速度 で動くエレベーターの中で、単振り子の周期はどうなるか。
となり、静止のときより短くなる
エレベーターの中の観測者から見ると、おもりは重力 のほかに、下向きの慣性力 を受ける。2 つをまとめると、重力加速度の大きさが になったのと同じである。
加速度が下向きに のときは になり、周期は長くなる。同じエレベーターの中のばね振り子は、振動の中心がずれるだけで、周期は変わらない。