ケプラーの法則
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (1) ア (エ) ㋐「惑星の観測資料に基づいて,惑星の運動に関する法則を理解すること。」。
0. どういうまとまりか
惑星が太陽のまわりをどう回るかを、観測の記録からまとめた 3 つの法則がケプラーの法則です。
「なぜそう動くのか」(万有引力)は次のノートで扱い、ここでは「どう動くのか」だけを押さえます。
楕円は、2 つの焦点からの距離の和が一定になる点を連ねた曲線です。いちばん長い直径を長軸といい、その半分の長さを半長軸といいます。
| 何についての法則か | 中身 | |
|---|---|---|
| 第 1 法則(楕円軌道の法則) | 軌道の形 | 惑星は、太陽を 1 つの焦点とする楕円軌道を描く |
| 第 2 法則(面積速度一定の法則) | 1 つの惑星の速さの変わり方 | 太陽と惑星を結ぶ線分が、一定の時間に通過する面積は一定 |
| 第 3 法則(調和の法則) | 惑星どうしの比べ方 | 公転周期 の 2 乗と、軌道の半長軸 の 3 乗の比 は、どの惑星でも同じ |
分かれ目は次の 3 つ。
- 太陽があるのは楕円の中心ではなく、焦点の 1 つ。だから太陽までの距離は場所によって変わり、近日点と遠日点ができる
- が使えるのは、近日点と遠日点だけ。ほかの点では、太陽と惑星を結ぶ線分と速度が垂直でないので、この形にならない
- 第 3 法則の は半長軸で、近日点距離でも遠日点距離でもない。比 が共通なのは、同じ天体のまわりを回るものどうしだけ
1. 第 1 法則(軌道の形)
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(エ)-㋐
惑星の軌道は円ではなく楕円です。太陽は楕円の中心からずれた位置にあるので、惑星と太陽の距離は 1 周のあいだに変わります。
ケプラーの第 1 法則とは?
惑星は、太陽を 1 つの焦点とする楕円軌道を描く
太陽があるのは楕円の中心ではない。もう 1 つの焦点には何も無い。
惑星の軌道の「近日点」「遠日点」とは?
近日点は軌道上で太陽にいちばん近い点、遠日点は太陽からいちばん遠い点
どちらも楕円の長軸の両端にある。地球のまわりを回る人工衛星では、同じ意味で近地点・遠地点という。
楕円軌道の半長軸 を、近日点距離 と遠日点距離 で表すと?
近日点と遠日点は長軸の両端で、太陽はその線上にあるから、長軸の長さは 。半長軸はその半分である。
円軌道は、楕円軌道のどんな場合にあたるか?
2 つの焦点が一致した場合。太陽は円の中心にあり、半長軸は円の半径に等しい
円軌道では太陽までの距離が変わらないので、近日点と遠日点の区別が無くなる。実際の惑星の軌道は、円に近い楕円である。
2. 第 2 法則(速さの変わり方)
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(エ)-㋐
1 つの惑星の速さは、軌道の上で一定ではありません。太陽に近いところで速く、遠いところで遅くなります。その変わり方を決めるのが第 2 法則です。
ケプラーの第 2 法則(面積速度一定の法則)とは?
太陽と惑星を結ぶ線分が、一定の時間に通過する面積は一定である
この線分を動径という。動径が単位時間に通過する面積を面積速度といい、1 つの惑星については軌道のどこでも同じ値になる。
太陽からの距離が の点で、惑星の速さが 、動径と速度のなす角が のとき、面積速度は?
わずかな時間 に動径が通過するのは、2 辺が と で、そのあいだの角が の細い三角形。その面積 を で割る。
近日点(距離 、速さ )と遠日点(距離 、速さ )のあいだで、第 2 法則はどんな式になるか? その式がほかの点で使えないのはなぜか?
。近日点と遠日点では動径と速度が垂直()なので、面積速度が になるから
ほかの点では動径と速度が垂直でないので、 の を落とせない。
楕円軌道を回る惑星の速さが最大になるのはどこか? 最小になるのはどこか?
最大は近日点、最小は遠日点
面積速度が一定なので、太陽までの距離が短いところほど速く動かないと、同じ面積を通過できない。
3. 第 3 法則(惑星どうしを比べる)
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(エ)-㋐
第 1・第 2 法則は 1 つの惑星についての法則でした。第 3 法則は、軌道の大きさが違う惑星どうしを結びつけます。
ケプラーの第 3 法則とは? 式で書くと?
惑星の公転周期 の 2 乗は、軌道の半長軸 の 3 乗に比例する。( はどの惑星でも同じ定数)
円軌道のときは、 に円の半径を入れる。
第 3 法則の定数 は、何によって決まるか?
中心にある天体(太陽)で決まる。回っている惑星の質量や軌道の形にはよらない
地球のまわりを回る月や人工衛星どうしでも同じ形の法則が成り立つが、中心が地球なので、 の値は太陽のまわりの惑星のものとは違う。
太陽のまわりを回る天体について、半長軸 を天文単位、周期 を年で測ると、第 3 法則はどんな式になるか?
天文単位は太陽と地球の平均距離を 1 とする長さの単位。地球が 、 なので になる。太陽のまわりを回るものにだけ使える形である。
同じ天体のまわりを回る 2 つの衛星で、軌道の半長軸が 4 倍になると、周期は何倍になるか?
8 倍
は に比例するから、 は 倍。 はその平方根で 8 倍になる。4 倍でも 16 倍でもない。
ケプラーの法則は、惑星のほかにどんな運動に成り立つか?
1 つの天体から万有引力を受けてそのまわりを回る運動に、広く成り立つ(太陽のまわりの彗星や小惑星、惑星のまわりの衛星、地球のまわりの人工衛星)
そのときは「太陽」を、中心にある天体に読みかえる。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(エ)-㋐
問 1 ある小惑星が、太陽のまわりを楕円軌道で回っている。近日点距離は 天文単位、遠日点距離は 天文単位で、近日点での速さは である。(1) 遠日点での速さを求めよ。(2) 軌道の半長軸は何天文単位か。(3) 公転周期は何年か。
(1) (2) 天文単位 (3) 年
方針 (1) は近日点と遠日点の関係なので、面積速度一定の法則が の形で使える。(3) は太陽のまわりの天体なので、天文単位と年で測った第 3 法則 を使う。
- (1) から
- 値を入れると、
- (2) 半長軸は なので、 天文単位
- (3) に入れると、
- 年
ここで間違えやすい (3) で に近日点距離 や遠日点距離 を入れてしまうこと。第 3 法則に入れるのは半長軸である。
問 2 太陽のまわりを周期 年で回る彗星がある。(1) 軌道の半長軸は何天文単位か。(2) 近日点距離が 天文単位のとき、遠日点距離は何天文単位か。
(1) 天文単位 (2) 天文単位
方針 周期から半長軸を出すので、 を について解く。遠日点距離は、長軸の長さ から近日点距離を引けば出る。
- (1) に を入れると、
- なので、 天文単位
- (2) 長軸の長さは なので、
- 値を入れると、 天文単位
ここで間違えやすい (2) で遠日点距離を としてしまうこと。 は長軸の半分で、太陽から遠日点までの距離ではない。
問 3 地球のまわりを等速円運動する人工衛星 A と B がある。B の軌道半径は A の軌道半径の 4 倍で、A の周期は 時間である。(1) B の周期は何時間か。(2) B の速さは A の速さの何倍か。
(1) 時間 (2) 倍
方針 A と B は同じ天体(地球)のまわりを回っているので、第 3 法則の定数が共通である。速さは「1 周の長さ ÷ 周期」で比べる。
- (1) は半径の 3 乗に比例するので、B の は A の 倍
- 周期はその平方根で、 倍
- B の周期は 時間
- (2) 円軌道の速さは 。B は が 4 倍、 が 8 倍なので、速さは 倍
ここで間違えやすい 外側の衛星ほど 1 周が長いので速い、と考えてしまうこと。周期の延び(8 倍)のほうが 1 周の延び(4 倍)より大きいので、外側ほど遅い。
問 4 ある恒星のまわりを、惑星が楕円軌道で回っている。近日点は恒星から の距離にあり、そこでの速さは である。遠日点は恒星から の距離にある。(1) この惑星の面積速度を求めよ。(2) 遠日点での速さを求めよ。(3) 恒星からの距離が の点での速さを 、動径と速度のなす角を とする。 の値を求めよ。
(1) (2) (3)
方針 面積速度は で、軌道のどこでも同じ値。近日点と遠日点では なので になる。(3) の点では を残したまま等しいと置く。
- (1) 近日点では動径と速度が垂直なので、面積速度は
- 値を入れると、
- (2) から 。値を入れると、
- (3) この点の面積速度は で、これが (1) の値に等しいので、
- 値を入れると、
ここで間違えやすい (3) で として と答えてしまうこと。求まったのは速度のうち動径に垂直な成分 で、速さ そのものはこれより大きい。
問 5 惑星の観測から、軌道の半長軸 (天文単位)と公転周期 (年)が次のように得られている。火星と木星について を有効数字 2 桁で求め、地球の値と比べよ。
惑星
半長軸 (天文単位)
公転周期 (年)
地球
火星
木星
| 惑星 | 半長軸 (天文単位) | 公転周期 (年) |
|---|---|---|
| 地球 | ||
| 火星 | ||
| 木星 |
火星も木星も で、地球の値()と同じになる
方針 惑星ごとに と を計算して割る。第 3 法則が成り立っていれば、軌道の大きさが違っても比は同じ値になるはずである。
- 地球は
- 火星の は 、 は
- 火星の比は
- 木星の は 、 は
- 木星の比は
- 半長軸が 5 倍以上違っても比は変わらない。これが第 3 法則である。