半導体とダイオード
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (3) ア (ア) ㋓「電気回路に関する実験などを行い,電気回路における基本的な法則を理解すること。」。
0. どういうまとまりか
物理基礎では、ケイ素(シリコン)やゲルマニウムのように、抵抗率が導体と絶縁体の中間にある物質を半導体と呼ぶことを学びました。
ここでは、半導体に不純物を混ぜてつくる 2 種類の半導体と、それを接合してつくるダイオードのはたらきを扱います。ダイオードは、電流を一方向にだけ流す素子です。
| n 型半導体 | p 型半導体 | |
|---|---|---|
| ケイ素に混ぜる不純物 | 価電子が 5 個の元素(リン、ヒ素など) | 価電子が 3 個の元素(ホウ素、アルミニウムなど) |
| 電流の主な担い手(キャリア) | 電子(負の電荷) | 正孔(ホール。正の電荷としてふるまう) |
| 名前の由来 | negative(負) | positive(正) |
| ダイオードのつなぎ方 | 電源のつなぎ方 | 電流 |
|---|---|---|
| 順方向 | p 型の側を電源の正極に、n 型の側を負極につなぐ | 流れる |
| 逆方向 | p 型の側を電源の負極に、n 型の側を正極につなぐ | ほとんど流れない |
分かれ目は次の 3 つ。
- 半導体の抵抗率は、温度が上がると小さくなる。金属とは逆である
- n 型のキャリアは電子、p 型のキャリアは正孔。どちらの半導体も、全体としては電気的に中性である
- ダイオードは、p 型から n 型へ向かう向きにだけ電流を流す。電流と電圧が比例しないので、回路は特性のグラフと回路の式の交点で解く
1. 半導体の性質
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋓
金属では、温度によらず自由電子の数はほぼ決まっています。半導体では、電流の担い手の数そのものが温度で変わります。
半導体の抵抗率は、温度が上がるとどうなるか? 金属と比べて答え、理由も述べよ。
小さくなる(金属とは逆)。温度が上がると、原子にしばられていた電子の一部が動けるようになり、電流の担い手が増えるから
金属では担い手の数が変わらず、陽イオンの熱運動によるさまたげだけが増えるので、抵抗率が大きくなる。半導体では、担い手が増える効果のほうが大きい。
キャリアとは? 半導体のキャリアには何があるか?
電流の担い手となる、電荷をもった粒子のこと。半導体では、電子と正孔(ホール)の 2 種類がある
正孔は、電子が抜けたあとの「孔」である。となりの電子がそこへ移ると孔の位置が逆向きに動くので、正の電荷をもつ粒子が動いているのと同じようにふるまう。
2. n 型半導体と p 型半導体
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋓
純粋なケイ素はキャリアが少なく、電流をあまり流しません。わずかな不純物を混ぜると、キャリアが大きく増えます。混ぜる元素によって、増えるキャリアの種類が変わります。
n 型半導体とは? ケイ素に何を混ぜてつくり、キャリアは何か?
価電子が 5 個の元素(リン、ヒ素など)をわずかに混ぜた半導体。キャリアは主に電子
ケイ素の価電子は 4 個。価電子が 5 個の原子が入ると、結合に使われない電子が 1 個余り、これが自由に動く。
p 型半導体とは? ケイ素に何を混ぜてつくり、キャリアは何か?
価電子が 3 個の元素(ホウ素、アルミニウムなど)をわずかに混ぜた半導体。キャリアは主に正孔
価電子が 3 個の原子が入ると、結合のための電子が 1 個足りず、そこが正孔になる。
n 型半導体は、キャリアが電子だから、全体として負に帯電しているか?
帯電していない。全体としては電気的に中性である
混ぜた不純物の原子は、電子と同じ数だけ陽子ももっている。n 型・p 型という名前は、動ける担い手の電荷の符号を表すだけで、半導体全体の電荷のことではない。
3. pn 接合とダイオード
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋓
p 型半導体と n 型半導体を接合すると、電流を流す向きによって流れやすさがまったく違う素子になります。
pn 接合とは? それを使った、電流を一方向にだけ流す素子を何というか?
p 型半導体と n 型半導体を、1 つの結晶の中で接するようにしたもの。その両端に電極を付けた素子がダイオード
p 型の側の電極から n 型の側の電極へ向かう向きには電流が流れ、逆の向きにはほとんど流れない。
ダイオードの順方向と逆方向とは、それぞれどんなつなぎ方か?
順方向は、p 型の側を電源の正極に、n 型の側を負極につなぐ向き(電流が流れる)。逆方向は、その反対のつなぎ方(電流がほとんど流れない)
順方向では、p 型の正孔と n 型の電子がどちらも接合面へ向かって進み、接合面で次々に出会って打ち消しあうので、電流が流れつづける。逆方向では、正孔も電子も接合面から遠ざかり、接合面の近くにキャリアが無くなる。
ダイオードの整流作用とは?
電流を一方向にだけ流すはたらき
交流の電源につなぐと、順方向になる半周期のあいだだけ電流が流れる。これを利用して、交流を直流に変える。
ダイオードに順方向の電圧をかけたとき、電流と電圧の関係はどうなるか?
比例しない。電圧が小さいうちは電流がほとんど流れず、ある電圧を超えたあたりから急に大きな電流が流れる
ダイオードは非直線抵抗である。電流と電圧の関係のグラフ(特性曲線)は、途中から急に立ち上がる曲線になる。
ダイオードと抵抗値 の抵抗を直列にして、起電力 の電池(内部抵抗は無視)に順方向につないだ。流れる電流は、どんな手順で求めるか?
ダイオードにかかる電圧を 、電流を として、回路の式 を立てる。この式と、ダイオードの特性曲線とを、同時にみたす点(交点)を探す
ダイオードはオームの法則にしたがわないので、抵抗値を決めて計算することができない。電球を含む回路と同じ解き方である。
問題で「順方向には抵抗が 0、逆方向には電流を流さない」という理想的なダイオードを考えるとき、回路の中でどう扱うか?
順方向の電圧がかかるときは、ただの導線に置きかえる。逆方向の電圧がかかるときは、そこで回路が切れているものとする
どちらになるかは、ダイオードを取りはずしたと考えて、その両端のどちらの電位が高いかで判断する。
4. 半導体の利用
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋓
p 型と n 型の半導体を組み合わせると、ダイオードのほかにも、いろいろなはたらきをもつ素子がつくれます。
トランジスタとは、どんなつくりで、どんなはたらきをする素子か?
p 型と n 型の半導体を、npn または pnp の順に 3 層に接合した素子。小さな電流の変化を大きな電流の変化に変える増幅作用と、電流を流す・止めるを切りかえるスイッチのはたらきをもつ
多数のトランジスタを 1 枚の小さな基板の上につくりこんだものが集積回路(IC)である。
太陽電池は、何を利用して、何をする素子か?
pn 接合に光を当てると起電力が生じることを利用して、光のエネルギーを電気エネルギーに変える素子
光のエネルギーで接合面の近くに電子と正孔が生まれ、電子は n 型の側へ、正孔は p 型の側へ分かれて集まるので、両端に電位差ができる。
発光ダイオード(LED)は、どうつないだときに光るか? そのとき何が起こっているか?
順方向に電流を流したときに光る。接合面で電子と正孔が出会って打ち消しあうとき、エネルギーが光として放出される
太陽電池と逆のはたらきで、電気エネルギーを光のエネルギーに変えている。逆方向につなぐと電流が流れず、光らない。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(ア)-㋓
以下、電池の内部抵抗は無視します。
問 1 順方向には抵抗が 0 で、逆方向には電流を流さない理想的なダイオードがある。このダイオードと の抵抗を直列にして、起電力 の電池につないだ。(1) ダイオードが順方向になるようにつないだとき、流れる電流を求めよ。(2) 電池の向きを逆にしたとき、流れる電流と、ダイオードの両端の電位差を求めよ。
(1) (2) 電流は 、ダイオードの両端の電位差は
方針 理想的なダイオードは、順方向なら導線、逆方向なら回路の切れ目として扱う。順方向のときは抵抗だけの回路になる。逆方向のときは電流が 0 なので、抵抗での電圧降下も 0 になることに注目する。
- (1) 順方向なので、ダイオードを導線に置きかえる。回路は電池と の抵抗だけになる
- オームの法則から、電流は
- (2) 逆方向なので、ダイオードのところで回路が切れている。電流は
- 電流が 0 なので、抵抗での電圧降下は 。電池の電圧 は、すべてダイオードの両端にかかる
ここで間違えやすい (2) で「電流が流れないのだから、ダイオードにかかる電圧も 0」としてしまうこと。電圧が 0 になるのは抵抗のほうである。
問 2 あるダイオードに順方向の電圧をかけて電流を測ったところ、次のようになった。電圧 で 、 で 、 で 、 で 。このダイオードと の抵抗を直列にして、起電力 の電池に順方向につないだ。(1) 流れる電流と、ダイオードにかかる電圧を求めよ。(2) 抵抗にかかる電圧を求めよ。
(1) 電流 、ダイオードの電圧 (2)
方針 ダイオードの電圧を 、電流を とおいて回路の式を立て、測定値の中から、その式もみたす組を探す(グラフでいえば、特性曲線と回路の式の直線の交点)。
- 直列なので、抵抗にもダイオードと同じ電流 が流れる。抵抗での電圧降下は
- 回路の式は
- 測定値の電流を入れて、抵抗での電圧降下と の和が になるものを探す。 では、電圧降下は 。 と合わせて にしかならず、合わない
- では、電圧降下は 。 と合わせると で、回路の式をみたす
- (1) 電流は 、ダイオードの電圧は 。(2) 抵抗にかかる電圧は
ここで間違えやすい ダイオードを導線とみなして を電流としてしまうこと。特性が与えられているときは、ダイオードにも電圧がかかるものとして解く。
問 3 周期 の交流電源に、ダイオード 1 個と抵抗を直列につないだ。(1) 抵抗に電流が流れるのは、1 周期のうちどれだけの時間か。(2) 抵抗を流れる電流の向きは、時間とともにどうなるか。ダイオードは、順方向の電圧がかかっているあいだだけ電流を流すものとする。
(1) (2) いつも同じ向き。流れる半周期と、流れない半周期がくり返される
方針 交流の電圧は、半周期ごとに向きが入れかわる。ダイオードに順方向の電圧がかかる半周期だけ電流が流れ、逆方向の電圧がかかる半周期は流れない。
- 交流の電圧の向きは、半周期ごとに入れかわる。半周期は
- (1) ダイオードに順方向の電圧がかかるのは、そのうち一方の半周期だけ。電流が流れるのは、1 周期のうち
- (2) 電流が流れるのは順方向の半周期だけなので、抵抗を流れる電流の向きは変わらない。 流れては 止まる、というくり返しになる
問 4 順方向には抵抗が 0 で、逆方向には電流を流さない理想的なダイオード 、 がある。点 と点 のあいだに、次の 2 本の枝を並列につないだ。枝 1 は、( から へ向かう向きが順方向)と の抵抗の直列。枝 2 は、( から へ向かう向きが順方向)と の抵抗の直列。(1) 起電力 の電池の正極を に、負極を につないだとき、電池から流れ出る電流を求めよ。(2) 電池の向きを逆にしたとき、電池から流れ出る電流を求めよ。
(1) (2)
方針 ダイオードごとに、順方向か逆方向かを判断する。順方向のダイオードは導線、逆方向のダイオードは切れ目なので、どちらの場合も、電流が流れる枝は 1 本だけになる。
- (1) の電位が より高い。 から へ向かう向きが順方向の は導線、 は切れ目になる
- 電流が流れるのは枝 1 だけで、電流は
- (2) の電位が より高い。 から へ向かう向きが順方向の は導線、 は切れ目になる
- 電流が流れるのは枝 2 だけで、電流は
ここで間違えやすい 2 本の枝の並列として合成抵抗を求めてしまうこと。どちらの向きでも、一方の枝には電流が流れない。