光電効果
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (4) ア (ア) ㋑「電子や光の粒子性と波動性について理解すること。」。
0. どういうまとまりか
「09 光」では、光を波として扱いました。干渉も回折も、波でなければ説明できません。
ところが、金属に光を当てると電子が飛び出す光電効果は、光を波と考えると実験と合いません。
アインシュタインは、光を「エネルギー をもつ粒(光子)の集まり」と考えれば、すべての実験事実が説明できることを示しました(光量子仮説)。
このノートの中心は、実験事実と、それを 1 本の式 で読むことです。
光の振動数を 、プランク定数を 、金属の仕事関数を とします。
| 実験事実 | 光が波だとすると | 光が光子の集まりだとすると |
|---|---|---|
| 振動数が限界振動数より小さいと、光を強くしても電子は出ない | 強くすればエネルギーは足りるはず | 光子 1 個の が に足りない。数を増やしても同じ |
| 光電子の運動エネルギーの最大値は振動数で決まり、光の強さによらない | 強い光ほど大きくなるはず | 電子 1 個は光子 1 個から を受け取る |
| 飛び出す光電子の数は、光の強さに比例する | (説明できる) | 光が強いとは、光子の数が多いこと |
| 弱い光でも、当てるとすぐに電子が出る | エネルギーがたまるまで時間がかかるはず | 光子が 1 個当たれば足りる |
分かれ目は次の 3 つ。
- 光子 1 個のエネルギーを決めるのは振動数、光子の数を決めるのは光の強さ。この 2 つを混ぜない
- の は最大値。金属の内部から出てくる電子は、これより小さいエネルギーで飛び出す
- 阻止電圧は を電圧に読みかえたもの()。光を強くしても阻止電圧は変わらない
1. 光電効果の実験事実
根拠: 学習指導要領 物理-(4)-ア-(ア)-㋑
負に帯電させた箔検電器の上に亜鉛板を置いて紫外線を当てると、開いていた箔が閉じます。亜鉛板から電子が飛び出して、負の電荷が減るからです。この現象をくわしく調べると、波の考えでは説明できない事実が出てきました。
光電効果とは何か。飛び出す電子を何というか?
金属の表面に光を当てると、電子が飛び出す現象。飛び出す電子を光電子という
波長の短い(振動数の大きい)光ほど起こりやすい。亜鉛では紫外線で起こり、可視光では起こらない。
限界振動数とは何か?
光電効果が起こる最小の振動数。これより振動数の小さい光は、どれだけ強くしても光電子を出さない
値は金属の種類で決まる。限界振動数に対応する波長を限界波長といい、これより波長の長い光では光電効果は起こらない。
光電子の運動エネルギーの最大値は、何で決まり、何によらないか?
当てる光の振動数(と金属の種類)で決まり、光の強さによらない
振動数が大きいほど、最大値は大きくなる。光を強くしても、1 個 1 個の光電子のエネルギーは増えない。
振動数を変えずに光を強くすると、光電効果の何が変わり、何が変わらないか?
単位時間に飛び出す光電子の数(光電流)が、光の強さに比例して増える。光電子の運動エネルギーの最大値は変わらない
限界振動数より小さい振動数の光では、強くしても光電子の数は 0 のままである。
光電効果の実験事実のうち、光を波と考えると説明できないのはどれか。3 つ挙げよ。
①限界振動数があること ②光電子の運動エネルギーの最大値が光の強さによらないこと ③弱い光でも、当てるとすぐに光電子が出ること
波のエネルギーは振幅(強さ)で決まるので、波なら「強くすれば出る」「強いほど勢いよく出る」「弱ければ時間がかかる」となるはずである。
2. 光量子仮説
根拠: 学習指導要領 物理-(4)-ア-(ア)-㋑
アインシュタインは、光のエネルギーは空間に連続して広がっているのではなく、粒のようにまとまって運ばれると考えました。この粒を光子(光量子)といいます。
光量子仮説とは何か。光子 1 個のエネルギーを、振動数 と波長 で表すと?
光は、振動数に比例するエネルギーをもつ粒子(光子)の集まりであるという考え。
はプランク定数、 は真空中の光の速さ。 を使って振動数を波長に書きかえている。波長が短いほど、光子 1 個のエネルギーは大きい。
プランク定数 は、およそいくらか。単位は?
エネルギー(J)を振動数()で割った単位になっている。値がとても小さいので、ふだんは光のエネルギーが粒になっていることに気づかない。
光量子仮説では、「光が強い」とはどういうことか?
単位時間に届く光子の数が多いこと
光子 1 個のエネルギー は、光を強くしても変わらない。振動数 の光が単位時間に運ぶエネルギーは、 に光子の数を掛けたものになる。
3. 光電効果の式
根拠: 学習指導要領 物理-(4)-ア-(ア)-㋑
金属の中の電子は、金属の陽イオンに引かれているので、外へ出るにはエネルギーが要ります。光子 1 個のエネルギーから、この「出るための代金」を引いた残りが、光電子の運動エネルギーになります。
仕事関数とは何か?
金属の中の電子を、金属の外へ取り出すのに必要な最小のエネルギー
記号は 。値は金属の種類で決まる。J のほか、eV で表すことも多い。
振動数 の光を仕事関数 の金属に当てた。光電子の運動エネルギーの最大値 を表す式は?
電子 1 個が光子 1 個のエネルギー をすべて受け取り、そのうち を金属から出るために使う。エネルギーの保存を表した式である。
が、光電子の運動エネルギーの「最大値」の式であるのはなぜか?
金属の表面より内側にあった電子は、出てくるまでに より多くのエネルギーを失うから
失うエネルギーがいちばん少ない場合が で、そのときの運動エネルギーが最大になる。飛び出す光電子の運動エネルギーは、0 から までのさまざまな値をとる。
仕事関数 の金属の、限界振動数 と限界波長 を表す式は?
、
光子のエネルギーがちょうど仕事関数に等しいとき()が、光電効果が起こる境目である。 で としても同じ式になる。
4. 阻止電圧とグラフ
根拠: 学習指導要領 物理-(4)-ア-(ア)-㋑
光電子の運動エネルギーは、直接には測れません。光電管(光を当てる陰極と、光電子を受ける陽極を真空のガラス管に入れたもの)に逆向きの電圧をかけ、光電子を押し返して測ります。
阻止電圧とは何か。光電子の運動エネルギーの最大値 との関係は?
光電管の陽極の電位を陰極より低くしていき、光電流がちょうど 0 になるときの電圧の大きさ 。
いちばん勢いのある光電子でも陽極に届かなくなる電圧である。陰極から陽極へ進むあいだに電界から の仕事をされ、運動エネルギーをすべて失う。光を強くしても は変わらない。
横軸に光の振動数 、縦軸に光電子の運動エネルギーの最大値 をとったグラフは、どんな形か。傾きと、軸との交点は何を表すか?
右上がりの直線。傾きはプランク定数 、横軸との交点は限界振動数 、直線を延長したときの縦軸との交点は
を の一次関数として読んだもの。金属を変えると が変わるので直線は平行に移動するが、傾き はどの金属でも同じである。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(4)-ア-(ア)-㋑
以下、プランク定数を 、真空中の光の速さを 、電気素量を とします。
問 1 波長 の光の、光子 1 個のエネルギーを、J と eV の両方で答えよ。
、
方針 波長が与えられているので、 を使う。eV に直すには、J の値を で割る。
- 分子の は
- に値を入れると、
- eV に直すと、
問 2 仕事関数が の金属がある。(1) 限界振動数を求めよ。(2) 限界波長を求めよ。(3) 波長 の赤い光を強く当てたとき、光電効果は起こるか。
(1) (2) (3) 起こらない
方針 光子 1 個のエネルギーがちょうど仕事関数に等しいときが境目なので、。波長は で振動数から直す。(3) は限界波長と比べる。
- (1) から
- 値を入れると、
- (2) から
- 値を入れると、
- (3) 当てた光の波長 は、限界波長 より長い。光子 1 個のエネルギーが仕事関数に足りないので、光電効果は起こらない
ここで間違えやすい (3) で「強く当てれば起こる」と考えてしまうこと。光を強くしても光子の数が増えるだけで、1 個あたりのエネルギーは変わらない。また、振動数は「限界より大きい」と起こり、波長は「限界より短い」と起こる。大小が逆になる。
問 3 問 2 の金属(仕事関数 )に、振動数 の光を当てた。(1) 光電子の運動エネルギーの最大値を求めよ。(2) 阻止電圧を求めよ。
(1) (2)
方針 光子 1 個のエネルギー から仕事関数を引くと、運動エネルギーの最大値になる。阻止電圧は から求める。
- (1) 光子 1 個のエネルギーは 。値を入れると、
- に値を入れると、
- (2) から
- 値を入れると、
ここで間違えやすい (2) で、(1) の答えとして丸めた を使うと となり、答えがずれる。続きの計算には、丸める前の を使う。
問 4 ある金属に、振動数を変えながら光を当てて、光電子の運動エネルギーの最大値を測った。振動数が のとき 、 のとき だった。この測定の結果だけを使って(はじめに与えたプランク定数の値は使わずに)、(1) プランク定数、(2) この金属の限界振動数、(3) 仕事関数 を求めよ。
(1) (2) (3)
方針 横軸に振動数、縦軸に運動エネルギーの最大値をとると、測定値は直線 の上にある。傾きが なので、2 点から傾きを求める。そのあと、直線が横軸と交わる振動数を求める。
- (1) 振動数の差は
- 運動エネルギーの最大値の差は
- 傾きがプランク定数なので、
- (2) 振動数を から下げていくと、 下げるごとに は 減る。 での値がちょうど なので、 下げたところで 0 になる
- 限界振動数は
- (3) 仕事関数は 。値を入れると、
ここで間違えやすい (1) で、問題文の前に与えた をそのまま答えてしまうこと。ここで問われているのは、測定値から決まる値である。実験から求めた値は、測定の誤差のぶんだけずれる。
問 5 波長 の光が、光電管の陰極に毎秒 のエネルギーを運んでいる。この波長は陰極の金属の限界波長より短い。(1) 光子 1 個のエネルギーを求めよ。(2) 陰極に毎秒当たる光子の数を求めよ。(3) 光子 100 個につき 1 個の割合で光電子が飛び出し、そのすべてが陽極に届くとき、光電流の大きさを求めよ。
(1) (2) 個 (3)
方針 光が運ぶエネルギーは「光子 1 個のエネルギー × 光子の数」。毎秒のエネルギーを 1 個ぶんで割れば、毎秒の光子の数になる。電流は、毎秒運ばれる電気量である。
- (1) に値を入れると、
- (2) 毎秒のエネルギーを光子 1 個のエネルギーで割ると、 個
- (3) 毎秒飛び出す光電子の数は、その 100 分の 1 で 個
- 光電子 1 個が運ぶ電気量の大きさは なので、電流は
ここで間違えやすい 光を 2 倍に強くしたとき、(1) の値まで 2 倍にしてしまうこと。2 倍になるのは (2) の光子の数と (3) の光電流で、光子 1 個のエネルギーは波長だけで決まる。