交流回路
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (3) ア (イ) ㋒「電磁誘導に関する実験などを行い,磁束の変化と誘導起電力の向きや大きさとの関係を見いだして理解するとともに,電磁誘導の法則を理解すること。また,交流の発生について理解すること。」。
0. どういうまとまりか
交流回路では、抵抗・コイル・コンデンサーが、それぞれ違うふるまいをします。違いは 2 つの点に現れます。電流の流れにくさ(周波数でどう変わるか)と、電圧と電流の山のずれ(位相のずれ)です。
抵抗は直流のときと同じですが、コイルは電流の変化を妨げ、コンデンサーは充電と放電をくり返すので、電圧と電流の山が 4 分の 1 周期ずれます。
素子に加わる電圧を としたときの電流をまとめます。
| 抵抗 | コイル | コンデンサー | |
|---|---|---|---|
| 電流の流れにくさ | 抵抗 | リアクタンス | リアクタンス |
| 周波数を高くすると | 変わらない | 流れにくくなる | 流れやすくなる |
| 直流(一定の電流)では | 変わらない | ただの導線(流れにくさ 0) | 流れない |
| 電流の最大値 | |||
| 電流の位相(電圧に対して) | 同じ | 遅れる | 進む |
| 電流の式 | |||
| 消費電力の平均 | 0 | 0 |
分かれ目は次の 3 つ。
- コイルは電流が電圧より遅れ、コンデンサーは電流が電圧より進む。ずれはどちらも (4 分の 1 周期)
- リアクタンスは周波数で変わる。コイルは で周波数に比例、コンデンサーは で周波数に反比例。抵抗 は変わらない
- 電力を消費するのは抵抗だけ。コイルとコンデンサーは、エネルギーを蓄えては電源に返すことをくり返し、平均の消費電力は 0
このノートでは、コイルの導線の抵抗は無視します。
1. 抵抗に流れる交流
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(イ)-㋒
抵抗では、どの瞬間もオームの法則が成り立ちます。交流回路の基本的な性質を考えるときの基準になります。
抵抗 に交流電圧 を加えた。流れる電流の式と、電圧との位相の関係は?
()。電流と電圧は同位相で、山と山、0 と 0 の時刻が一致する
どの瞬間も が成り立つ。抵抗の値は、交流の周波数によらない。
コイルやコンデンサーを含む交流回路で、「電圧 = 流れにくさ × 電流」の形の式が成り立つのは、どの値どうしか?
実効値どうし、または最大値どうし。瞬間の値どうしでは成り立たない
コイルやコンデンサーでは、電圧が最大の瞬間に電流は 0 になる。瞬間の値どうしで比をとっても、一定の値にならない。瞬間の値どうしでオームの法則が成り立つのは、抵抗だけである。
2. コイルに流れる交流
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(イ)-㋒
コイルには、電流の変化を妨げる自己誘導の起電力が生じます。コイルに加わる電圧は、電流そのものではなく、電流の変化の速さに比例します(大きさ )。
コイルに交流電圧 を加えた。流れる電流の位相は、電圧に対してどうなるか? 電流の式は?
電流の位相は、電圧より 遅れる。
電流の山は、電圧の山より 4 分の 1 周期あとに来る。コイルが電流の変化を妨げるので、電流は電圧に遅れてついていく、と覚える。
コイルで、電圧が最大の瞬間に電流が 0 になるのはなぜか?
コイルに加わる電圧は、電流の変化の速さに比例するから。電流が 0 を横切る瞬間に、電流の変化がいちばん速い
逆に、電流が最大の瞬間は、増加から減少へ折り返すところで変化の速さが 0。このとき電圧は 0 になる。
コイルのリアクタンスとは? 周波数を変えるとどうなるか?
コイルの、交流に対する電流の流れにくさ。 で、単位は 。周波数に比例して大きくなる
実効値どうしで が成り立つ。周波数が高いほど電流の変化が速く、妨げる起電力が大きくなる。変化しない直流に対しては、流れにくさは 0 で、ただの導線になる。
コイルが交流回路で消費する電力の平均は?
0
電流の大きさが増えるあいだは電源からエネルギーを受けとって として蓄え、電流の大きさが減るあいだは同じだけ電源へ返す。4 分の 1 周期ごとに、受けとりと返しが入れかわる。
3. コンデンサーに流れる交流
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(イ)-㋒
コンデンサーの極板のあいだを、電荷は通りぬけません。それでも、交流の電圧を加えると充電と放電がくり返され、導線には電流が流れ続けます。蓄えられる電気量は で、電流はその変化の速さ です。
コンデンサーに交流電圧 を加えた。流れる電流の位相は、電圧に対してどうなるか? 電流の式は?
電流の位相は、電圧より 進む。
電流の山は、電圧の山より 4 分の 1 周期前に来る。先に電流が流れこんで電荷がたまり、そのあとで電圧が上がる、と覚える。コイルとは、ずれの向きが逆である。
コンデンサーで、電圧が最大の瞬間に電流が 0 になるのはなぜか?
電流は、蓄えられた電気量 の変化の速さだから。電圧が最大の瞬間は、充電から放電へ折り返すところで、電気量の変化の速さが 0
逆に、電圧が 0 を横切る瞬間は電気量の変化がいちばん速く、電流が最大になる。
コンデンサーのリアクタンスとは? 周波数を変えるとどうなるか?
コンデンサーの、交流に対する電流の流れにくさ。 で、単位は 。周波数に反比例して小さくなる
実効値どうしで が成り立つ。周波数が高いほど、充電と放電が速くくり返されて電流が大きくなる。直流では充電が終わると電流は流れない。コイルとは、周波数による変わり方が逆である。
コンデンサーが交流回路で消費する電力の平均は?
0
充電のあいだは電源からエネルギーを受けとって として蓄え、放電のあいだは同じだけ電源へ返す。交流回路で電力を消費するのは、抵抗だけである。
4. 抵抗・コイル・コンデンサーの直列回路
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(イ)-㋒
3 つを直列につなぐと、流れる電流は共通です。それぞれに加わる電圧は、電流に対する位相が違うので、山の時刻がそろいません。
抵抗 、コイル 、コンデンサー を直列につないだ回路の、インピーダンス とは? 式は?
回路全体の、交流に対する電流の流れにくさ。 で、単位は
電源の電圧と電流の実効値のあいだに、 が成り立つ。コイルとコンデンサーのリアクタンスは、足すのではなく引く。
抵抗・コイル・コンデンサーの直列回路で、それぞれに加わる電圧の実効値 、、 を足すと、電源の電圧の実効値 になるか?
ならない。 である
電流に対して、抵抗の電圧は同位相、コイルの電圧は 進み、コンデンサーの電圧は 遅れる。コイルとコンデンサーの電圧はつねに逆向きで打ち消しあう。瞬間の値なら、3 つの和が電源の電圧に等しい。
抵抗・コイル・コンデンサーの直列回路が消費する電力の平均は?
。抵抗で消費する分だけ
電源の電圧と電流の実効値をそのまま掛けた は、コイルやコンデンサーがあると、ふつう消費電力より大きくなって一致しない(一致するのは、コイルとコンデンサーのリアクタンスがちょうど等しいときだけ)。抵抗に加わる電圧 を使えば と書ける。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(3)-ア-(イ)-㋒
電圧と電流は、断りがなければ実効値です。コイルの導線の抵抗は無視します。
問 1 自己インダクタンス のコイルに、周波数 、電圧 の交流電源をつないだ。円周率は とする。(1) コイルのリアクタンスを求めよ。(2) 流れる電流を求めよ。(3) 電圧はそのままで、周波数を にすると、電流は何倍になるか。
(1) (2) (3) 倍
方針 コイルのリアクタンスは 。実効値どうしで が成り立つので、オームの法則と同じように電流を求める。
- (1) に値を入れると、
- (2) に値を入れると、
- (3) リアクタンスは周波数に比例する。周波数が 2 倍なので、リアクタンスも 2 倍。
- 電圧が同じなら、電流はリアクタンスに反比例する。よって 倍。
ここで間違えやすい (3) で、周波数が上がると電流も増える、としてしまうこと。それはコンデンサーの場合で、コイルは周波数が高いほど電流を通しにくい。
問 2 電気容量 のコンデンサーに、角周波数 、電圧 の交流電源をつないだ。(1) コンデンサーのリアクタンスを求めよ。(2) 流れる電流を求めよ。(3) 電圧はそのままで、角周波数を にしたときの電流を求めよ。
(1) (2) (3)
方針 コンデンサーのリアクタンスは 。実効値どうしで が成り立つ。角周波数が与えられているので、 を掛ける必要はない。
- (1) まず を計算すると、
- リアクタンスはその逆数で、
- (2) 電流は、電圧をリアクタンスで割って、
- (3) リアクタンスは角周波数に反比例する。角周波数が 2 倍なので、リアクタンスは半分の
- 電流は、
ここで間違えやすい リアクタンスを としてしまうこと。 は、電圧に掛けると電流になる量()で、流れにくさはその逆数である。
問 3 抵抗、コイル、コンデンサーのそれぞれに、同じ交流電圧 を別々に加える。周期を 、それぞれの電流の最大値を とする。電流の正の向きは、抵抗に が正の電圧を加えたときに電流が流れる向きとし、どの素子でも同じにとる。(1) 時刻 (電圧が 0 で、これから正の向きに増える瞬間)の電流を、3 つの素子について答えよ。(2) 時刻 (電圧が正の最大の瞬間)の電流を、3 つの素子について答えよ。
(1) 抵抗は 、コイルは 、コンデンサーは (2) 抵抗は 、コイルは 、コンデンサーは
方針 それぞれの電流の式に、位相 の値を入れる。時刻 0 は 、時刻 は にあたる。抵抗は同位相、コイルは 遅れ、コンデンサーは 進みである。
- 電流の式は、抵抗が 、コイルが 、コンデンサーが
- (1) を入れる。抵抗は で
- コイルは で 。コンデンサーは で
- (2) を入れる。抵抗は で
- コイルは で 。コンデンサーは で
ここで間違えやすい コイルとコンデンサーの「遅れ」と「進み」を逆に覚えること。(1) の結果で確かめられる。コンデンサーは、電圧がまだ 0 のうちに電流がもう最大になっている(電流が先)。コイルは、電流がまだ負の側に残っている(電流が後)。
問 4 の抵抗、自己インダクタンス のコイル、電気容量 のコンデンサーを直列につなぎ、角周波数 、電圧 の交流電源をつないだ。(1) コイルとコンデンサーのリアクタンスを、それぞれ求めよ。(2) 回路のインピーダンスを求めよ。(3) 流れる電流を求めよ。(4) 抵抗、コイル、コンデンサーに加わる電圧を、それぞれ求めよ。(5) 回路が消費する電力の平均を求めよ。
(1) コイル 、コンデンサー (2) (3) (4) 抵抗 、コイル 、コンデンサー (5)
方針 リアクタンスを 2 つ求めてから、 でインピーダンスを出す。電流は 。直列なので電流は共通で、各素子の電圧は「流れにくさ × 電流」。電力を消費するのは抵抗だけである。
- (1) コイルのリアクタンスは で、
- コンデンサーは、まず が 。リアクタンスはその逆数で、
- (2) リアクタンスの差は
- インピーダンスは、
- (3) 電流は、
- (4) 抵抗は 、コイルは 、コンデンサーは
- 確かめ。 で、電源の電圧に一致する。
- (5) 電力の平均は で、
ここで間違えやすい (4) の 3 つの電圧を足して とし、電源の と合わないと悩むこと。3 つの電圧は山の時刻がずれているので、実効値は単純には足せない。コイルの電圧が電源の電圧より大きくなることもある。
問 5 の抵抗と、リアクタンスが のコイルを直列につなぎ、電圧 の交流電源をつないだ。(1) 回路のインピーダンスを求めよ。(2) 流れる電流を求めよ。(3) 回路が消費する電力の平均を求めよ。
(1) (2) (3)
方針 コンデンサーが無いので、インピーダンスは 。電力を消費するのは抵抗だけなので、 で求める。
- (1) インピーダンスは、
- (2) 電流は、
- (3) 電力の平均は で、
- 確かめ。抵抗に加わる電圧は 。これに電流を掛けると で一致する。
ここで間違えやすい 電源の電圧と電流をそのまま掛けて、 としてしまうこと。コイルは電力を消費しないので、実際の消費電力はこれより小さい。インピーダンスを と足すのも誤りである。
【発展】抵抗・コイル・コンデンサーの直列回路で、電源の電圧を一定にしたまま周波数を変えていく。電流が最大になるのは、どんな周波数のときか。
コイルとコンデンサーのリアクタンスが等しくなる周波数 のとき。これを直列共振といい、 を共振周波数という
のとき、インピーダンスの式の括弧の中が 0 になり、 で最小になる。このとき電流は で最大になる。
を について解くと で、 から上の式が出る。
周波数が より低いとコンデンサーのリアクタンスが、高いとコイルのリアクタンスが大きくなり、どちらの側でも電流は小さくなる。ラジオの選局は、この性質を使って、受けたい周波数の電波だけを取り出している。共振周波数は、次のノートの電気振動の固有周波数と同じ式である。