速度の合成と相対速度
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理基礎 (1) ア (ア) ㋑「物体の運動の表し方について,直線運動を中心に理解すること。」。
0. どういうまとまりか
速度は「誰から見たか」で変わります。流れる川を進む船は、水に対する速度と岸に対する速度が違います。走る電車から見た隣の車は、地面から見たときとは違う速度で動いて見えます。
動くものの上で動く物体の、地面に対する速度を求めるのが速度の合成、動いている観測者から見た相手の速度を求めるのが相対速度です。
物理基礎で扱うのは、どちらも同じ一直線上の場合です。向きが斜めに交わる平面内の場合は、発展科目の「物理」で学びます。
| 何を求めるか | 式(符号つきの速度で) | 計算 | |
|---|---|---|---|
| 速度の合成 | 動くものの上で動く物体の、地面に対する速度 | 足す | |
| 相対速度 | 動いている A から見た、B の速度 | 相手から自分を引く |
分かれ目は次の 3 つ。
- 合成は足し算、相対速度は引き算。どちらも、正の向きを決めて符号つきの速度で計算する
- 相対速度は「相手 − 自分」。見ている側(観測者)の速度を引く。順番を逆にすると向きが逆になる
- 「何に対する速度か」を先に確かめる。水に対する速度か岸に対する速度か、地面に対する速度か電車に対する速度か
1. 速度の合成
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(ア)-㋑
動いているものの上でさらに動く物体は、地面から見ると 2 つの速度を合わせた速度で動きます。
速度の合成とは? 一直線上での合成速度の式は?
2 つの速度を合わせて 1 つの速度にすること。速度 で動くものの上を、それに対して速度 で動く物体の、地面に対する速度は
合わせてできた速度を合成速度という。、 は正の向きを決めた符号つきの値で、逆向きなら負の数を足すことになる。
流れの速さが の川を、静水上での速さが の船が進む。岸から見た船の速さは、下るときと上るときでそれぞれいくらか?
下るときは 、上るときは
下りは流れと同じ向きなので足し、上りは流れと逆向きなので引く。 が より小さいと、上ろうとしても下流へ流される。
「静水上での船の速さ」とは、何に対する速さか?
水に対する速さ(流れのない水の上で船が進む速さ)
川では水そのものが岸に対して動いているので、岸に対する船の速度は「水に対する船の速度 + 岸に対する水の速度」になる。
速さ で動く歩道の上を、歩道に対して速さ で、歩道の進む向きと逆向きに歩く。地面から見た人の速度は?(歩道の進む向きを正とする)
( と考える)
正なら歩道の向きにゆっくり進み、0 なら地面から見て止まって見え、負なら歩道と逆向きに進む。
2. 相対速度
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(ア)-㋑
自分も動いているとき、相手の動きは地面から見たときと違って見えます。動いている観測者から見た相手の速度が相対速度です。
相対速度とは?
動いている観測者から見た、相手の物体の速度
「A に対する B の相対速度」は、A が自分は止まっていると考えたときに B が動いて見える速度。観測者は A。
一直線上を A が速度 、B が速度 で動いている。A に対する B の相対速度 は?
相手(見られる側)の速度から、自分(見る側)の速度を引く。、 は符号つきの値。
A に対する B の相対速度と、B に対する A の相対速度は、どういう関係か?
大きさが同じで、向きが逆()
A から B が東向きに遠ざかって見えるなら、B からは A が西向きに遠ざかって見える。
2 つの物体が同じ向きに進むときと、逆向きに進むときで、相対速度の大きさはどうなるか?
同じ向きなら速さの差、逆向きなら速さの和
追い越すときは相手がゆっくり動いて見え、すれ違うときは相手が速く動いて見える。式 に符号つきの値を入れれば、自動的にこうなる。
A に対する B の相対速度が 0 になるのは、どんなときか?
A と B が同じ速度(同じ速さで同じ向き)で動いているとき
並んで走る電車から隣の電車が止まって見えるのがこの場合。2 つの間の距離は変わらない。
3. 合成と相対速度の使い分け
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(ア)-㋑
合成と相対速度は、同じ関係を逆向きに使っているだけです。分かっている速度が「何に対する速度か」を整理すれば、どちらを使うかが決まります。
A の速度 と、A に対する B の相対速度 が分かっているとき、地面に対する B の速度 は?
を移項したもので、速度の合成の式と同じ形。「A の速度」に「A から見た B の速度」を足す。
速度の合成と相対速度は、それぞれどんなときに使うか?
合成は、動くものに対する速度から地面に対する速度を求めるとき。相対速度は、地面に対する 2 つの速度から、一方から見たもう一方の速度を求めるとき
問題文の速度に「何に対する速度か」を書き添えてから式にすると、足すか引くかを取り違えない。
同じ直線上を動く 2 つの物体が、はじめ距離 だけ離れている。追いつく(または出会う)までの時間を、相対速度で求めるには?
を、近づく向きの相対速度の大きさで割る
一方から見れば、相手が相対速度で距離 を近づいてくるだけの運動になる。追いかけるときは速さの差、向かい合うときは速さの和で割る。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(ア)-㋑
問 1 流れの速さが のまっすぐな川を、静水上での速さが の船が進む。(1) 岸から見た船の速さを、下るときと上るときについて求めよ。(2) 川に沿って 離れた 2 地点の間を往復するのにかかる時間を求めよ。
(1) 下り 、上り (2)
方針 岸に対する船の速度は、水に対する船の速度と流れの速度の合成。下りは同じ向きなので足し、上りは逆向きなので引く。往復の時間は、下りと上りを別々に求めて足す。
- (1) 下りは、船の向きと流れの向きが同じ。
- 上りは、船の向きと流れの向きが逆。
- (2) 下りにかかる時間は
- 上りにかかる時間は
- 往復の時間は
ここで間違えやすい 往復 を静水上での速さ で割って とすること。流れがあると、遅い上りに時間がかかるぶん、往復の時間は長くなる。
問 2 速さ で動く、長さ の動く歩道がある。(1) 歩道の上を、歩道に対して速さ で歩道の進む向きに歩くとき、端から端まで何秒かかるか。(2) 歩道の上を、歩道に対して速さ で歩道の進む向きと逆向きに歩くとき、地面から見た人の速度を求めよ。
(1) (2) 歩道の進む向きと逆向きに
方針 歩道の進む向きを正とし、歩道の速度と、歩道に対する人の速度を符号つきで足して、地面に対する人の速度を求める。
- (1) 歩道の速度は 、歩道に対する人の速度は
- 地面に対する人の速度は
- 地面から見て 進めばよいので、時間は
- (2) 逆向きに歩くので、歩道に対する人の速度は
- 地面に対する人の速度は
- 負なので、歩道の進む向きと逆向きに
ここで間違えやすい (1) で とすること。 は歩道に対する速さで、地面に対する速さではない。
問 3 東西にのびるまっすぐな道路を、自動車 A が東向きに 、自動車 B が東向きに 、自動車 C が西向きに で走っている。(1) A に対する B の相対速度、(2) A に対する C の相対速度、(3) B に対する A の相対速度を求めよ。
(1) 西向きに (2) 西向きに (3) 東向きに
方針 東向きを正として 3 台の速度を符号つきで書き、「相手の速度 − 自分(見る側)の速度」を計算する。答えの符号を向きに直す。
- 東向きを正とすると、、、
- (1) 見る側は A、相手は B。 で、負なので西向きに
- (2) 見る側は A、相手は C。 で、負なので西向きに
- (3) 見る側は B、相手は A。 で、正なので東向きに
ここで間違えやすい (1) を「B は東向きに走っているから東向き」と答えること。A のほうが速いので、A から見ると B は後ろ(西)へ下がっていく。(2) は逆向きどうしなので、速さの和になる。
問 4 まっすぐな道路を、自動車 A が速さ で走っている。その前方 のところを、自動車 B が同じ向きに速さ で走っている。A が B に追いつくまでの時間と、その間に A が進む距離を求めよ。
時間 、距離
方針 B から見ると、A は相対速度で の距離を近づいてくる。距離を相対速度の大きさで割ると、追いつくまでの時間が出る。
- 進む向きを正とする。B に対する A の相対速度は
- B から見ると、A は 後ろから で近づいてくる
- 追いつくまでの時間は
- その間に A が地面に対して進む距離は で、
- 確かめ: B が進む距離は 。はじめの差を足すと で、A の進む距離と合う
ここで間違えやすい A が進む距離を、相対速度を使って とすること。これは B から見て近づいた距離。地面に対して進む距離は、地面に対する速さ で計算する。
問 5 東向きに で走る電車の中から、線路と平行な道路を走る自動車を見たところ、自動車は西向きに で動いて見えた。地面に対する自動車の速度を求めよ。
東向きに
方針 見えた速度は、電車に対する自動車の相対速度。 を について解いた を使う。
- 東向きを正とする。電車の速度は
- 電車に対する自動車の相対速度は、西向きなので
- 地面に対する自動車の速度は
- 正なので、東向きに
ここで間違えやすい 「西向きに見えたから、自動車は西向きに走っている」と考えること。自動車も東向きに走っているが、電車より遅いので、電車からは後ろへ下がって見える。