等加速度直線運動
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理基礎 (1) ア (ア) ㋒「速度が変化する物体の直線運動に関する実験などを行い,速度と時間との関係を見いだして理解するとともに,物体が直線運動する場合の加速度を理解すること。」。
0. どういうまとまりか
一直線上を、一定の加速度で進む運動を等加速度直線運動といいます。斜面を下る台車や、一定の割合でブレーキをかける自動車がこれにあたります。
時刻 0 での速度を初速度 、加速度を 、時刻 での速度を 、時刻 0 の位置からの変位を として、この 5 つの量の関係を 3 つの式で表します。
3 つの式は、それぞれ 5 つの量のうち 1 つを含みません。「問題に出てこない量」を見れば、使う式が決まります。
| 式 | 含まない量 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 変位 | 時間と速度の関係を使う | |
| あとの速度 | 時間と変位の関係を使う | |
| 時間 | 時間が分からず、聞かれてもいない |
分かれ目は次の 3 つ。
- 式を立てる前に、正の向きを決める。、、、 はすべて符号つきで入れる。減速なら は と逆の符号
- 時間が出てこない問題は 。時間を求めてから代入する遠回りをしなくてよい
- は変位であって、道のりではない。折り返す運動では、折り返し点()の前と後に分けて道のりを足す
1. 3 つの式
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(ア)-㋒
加速度が一定なので、速度は時間に比例して変わります。そこから、変位の式と、時間を含まない式が導けます。
等加速度直線運動とは?
一直線上を、一定の加速度で進む運動
速度が毎秒同じだけ変わる。加速度が 0 の場合が等速直線運動にあたる。
初速度 、加速度 の等加速度直線運動で、時刻 での速度 は?
加速度 は 1 秒あたりの速度の変化なので、 秒間の速度の変化は 。これをはじめの速度に足す。
初速度 、加速度 の等加速度直線運動で、時刻 までの変位 は?
は速度が変わらなかった場合の変位、 は速度が変わったぶんの変位。 と の 2 乗を落としやすい。
等加速度直線運動で、時間 を含まない、速度と変位の関係式は?
から として、変位の式に代入して を消すと得られる。
2. 式の選び方と立て方
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(ア)-㋒
式に数値を入れる前に、向きと符号を決めます。そのうえで、分かっている量と求める量から、使う式を選びます。
等加速度直線運動の式を立てる前に、まず何をするか?
正の向きを決め、初速度 と加速度 を符号つきで書き出す
ふつうは初速度の向きを正にする。そのとき、速くなる運動なら は正、遅くなる運動なら は負。
等加速度直線運動の 3 つの式は、どう使い分けるか?
問題に出てこない量を含まない式を選ぶ。変位が出てこなければ 、あとの速度が出てこなければ 、時間が出てこなければ
と はどの式にも入っている。残りの 、、 のうち、どれが要らないかで決まる。
等加速度直線運動の式の は、何を表すか?
時刻 0 にいた位置からの変位。道のりではない
折り返さない運動では、変位の大きさと道のりは同じ。折り返したあとは、 は道のりより小さくなり、負になることもある。
3. 負の加速度と折り返し
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(ア)-㋒
初速度と逆向きの加速度が続くと、物体はだんだん遅くなり、いったん止まって、逆向きに進みはじめます。同じ 3 つの式が、折り返したあともそのまま使えます。
初速度と逆向きの一定の加速度で運動する物体が、折り返す瞬間の条件は?
速度が 0()
出発点から最も遠ざかった点で、速度の符号が正から負に変わる。加速度は 0 にならず、一定のまま。
折り返すまでの時間と、折り返し点までの変位は、どの式で求めるか?
時間は で とおく。変位は で とおく
それぞれ 、 になる。 が負なので、どちらも正の値。ブレーキで止まるまでの時間と距離も同じ計算。
折り返して出発点に戻ってきたとき、時間と速度はどうなっているか?
かかった時間は、折り返すまでの時間の 2 倍。速度は、初速度と大きさが同じで向きが逆()
戻ってきた条件は 。行きと帰りは、時間を逆にたどった同じ運動になっている。
折り返したあとの時刻までの道のりは、どう求めるか?
折り返し点までの距離と、折り返し点から戻った距離を別々に求めて足す
戻った距離は「折り返し点の位置 − その時刻の位置」。式の にそのまま時間を入れて出るのは変位で、道のりではない。
4. グラフ
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(ア)-㋒
等加速度直線運動を - グラフに描くと直線になります。3 つの式は、このグラフの傾きと面積を式にしたものです。
等加速度直線運動の - グラフは、どんな形か?
傾きが加速度 、縦軸との交点が初速度 の直線
をそのままグラフにしたもの。 が負なら右下がりで、 軸と交わる時刻が折り返しの瞬間。
等加速度直線運動の変位の式 は、- グラフのどこに表れるか?
グラフと 軸の間の台形の面積。下の長方形が 、上の三角形が
三角形は底辺 、高さ 。台形の面積として と書くこともできる。
等加速度直線運動の - グラフは、どんな形か?
放物線( が の二次式になるから)
速くなる運動では、時間とともに傾きが急になっていく。折り返す運動では、放物線の頂点が折り返し点にあたる。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(ア)-㋒
問 1 静止していた自動車が、一定の加速度 で一直線上を走りはじめた。 後の速さと、その間に進んだ距離を求めよ。
速さ 、距離
方針 初速度 0 の等加速度直線運動。時間が分かっているので、速さは 、距離は を使う。
- 進む向きを正とする。、、
- 速さは
- 距離は
ここで間違えやすい の 2 乗を落として としないこと。
問 2 速さ で進んでいた自動車が、一定の加速度 で加速して、速さが になった。加速している間に進んだ距離を求めよ。
方針 時間が与えられておらず、聞かれてもいない。時間を含まない を使う。
- 進む向きを正とする。、、
- に入れると、
- 左辺は 、右辺の係数は
- なので、 は
- 確かめ: 加速にかかる時間は 。変位の式でも になる
ここで間違えやすい 左辺を と計算すること。2 乗してから引く。
問 3 速さ で走っていた電車が、一定の割合でブレーキをかけて止まった。加速度の大きさは だった。ブレーキをかけてから止まるまでの時間と、その間に進んだ距離を求めよ。
時間 、距離
方針 進む向きを正とすると、減速なので加速度は負。「止まる」は 。時間は 、距離は で求める。
- 進む向きを正とする。、、止まるので
- に入れると、
- なので、 は
- に入れると、
- 左辺は 、右辺の係数は
- なので、 は
- 確かめ: 変位の式でも になる
ここで間違えやすい 加速度を のまま入れること。 となって時間が負になる。「加速度の大きさ」と書かれていたら、向きは自分で符号にする。
問 4 なめらかな斜面の下から、台車を斜面に沿って上向きに速さ で押し出した。台車の加速度は、斜面に沿って下向きに で一定だった。斜面は十分に長いものとする。(1) 台車が最も高い点に達するまでの時間と、そこまでに進む距離を求めよ。(2) 押し出してから 後の速度と、出発点からの変位を求めよ。(3) 間に台車が動いた道のりを求めよ。
(1) 、 (2) 速度は斜面下向きに 、変位は斜面上向きに (3)
方針 斜面に沿って上向きを正とすると、加速度は負で一定。最も高い点は折り返し点で、条件は 。式は折り返したあともそのまま使える。道のりは、上った距離と下った距離を分けて足す。
- 斜面上向きを正とする。、
- (1) 最も高い点では 。 に入れると なので、 は
- そこまでの変位は、
- (2) での速度は、。負なので斜面下向き
- までの変位は、。正なので出発点より上
- (3) 上った距離は 。そのあと、位置 から まで下ったので、下った距離は
- 道のりは
ここで間違えやすい (3) を (2) の変位と同じ と答えること。式から出る は変位。 は折り返しの時刻 より後なので、道のりは分けて足す。
問 5 駅 P を発車した電車が、次の駅 Q に止まるまでの - グラフは、次の 3 本の線分でできている。時刻 から までは、速度が から まで一定の割合で増える。 から までは、速度 のまま変わらない。 から までは、速度が から まで一定の割合で減る。(1) 3 つの区間の加速度をそれぞれ求めよ。(2) 駅 P から駅 Q までの距離を求めよ。
(1) 順に 、、 (2)
方針 - グラフの傾きが加速度、グラフと 軸の間の面積が変位。面積は、三角形・長方形・三角形の 3 つに分けて求める。
- (1) 1 つ目の区間の傾きは
- 2 つ目の区間は速度が変わらないので、加速度は
- 3 つ目の区間の傾きは
- (2) 1 つ目の区間は底辺 、高さ の三角形。面積は
- 2 つ目の区間は横 、高さ の長方形。面積は
- 3 つ目の区間は底辺 、高さ の三角形。面積は
- 合計は で、
ここで間違えやすい 3 つ目の区間の面積を負として引くこと。速度は減っているが正のままなので、電車は前に進み続けている。面積が負になるのは、グラフが 軸より下にあるときだけ。