力の表し方と重力
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理基礎 (1) ア (イ) ㋐「物体に様々な力が働くことを理解すること。」。
0. どういうまとまりか
物体の形を変えたり、運動のようす(速さや向き)を変えたりする原因を力といいます。
力は大きさと向きをもつ量なので、矢印で表します。力学の問題は、物体が受けている力を漏れなく見つけるところから始まります。
見つけ方には決まった手順があります。重力を最初に書き、あとは「物体に接しているもの」を 1 つずつ調べます。
| 力 | 何から受けるか | 向き | 大きさ |
|---|---|---|---|
| 重力 | 地球 | 鉛直下向き | |
| 垂直抗力 | 接している面 | 面に垂直で、面が物体を押す向き | 決まった式は無い。つり合いの式から求める |
| 糸の張力 | つながっている糸 | 糸に沿って、糸が物体を引く向き | 決まった式は無い。つり合いの式から求める |
| 弾性力・摩擦力・浮力 | ばね・面・液体や気体 | このフォルダの別のノートで扱う |
分かれ目は次の 3 つ。
- 質量と重さは別の量。質量は で測り、場所によらない。重さは重力の大きさで、 で測り、場所で変わる
- 重力のほかの力は、物体に接しているものからしか受けない。接しているものを数えれば、力を数え落とさない
- 垂直抗力と張力には公式が無い。大きさは、ほかの力とのつり合いから決まる
1. 力の表し方
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋐
力は「どこに・どの向きに・どれだけ」の 3 つを決めてはじめて決まります。矢印 1 本で、この 3 つを同時に表します。
力の働きを 2 つ挙げると?
物体を変形させる。物体の運動のようす(速さや向き)を変える
逆にいえば、物体が変形したり、速さや向きが変わったりしていれば、その物体は力を受けている。
力の三要素とは? 矢印のどこで表すか?
作用点(矢印の始点)・向き(矢印の向き)・大きさ(矢印の長さ)
作用点を通り、力の向きに引いた直線を作用線という。力は、大きさと向きをもつ量(ベクトル)である。
力の単位は? どのくらいの大きさか?
ニュートン(記号 )。質量約 の物体が受ける重力の大きさが、およそ
質量 の物体が受ける重力は 。
2. 重力
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋐
地球上のすべての物体は、地球から鉛直下向きに引かれています。この力が重力で、大きさは質量に比例します。
重力とは? 向きは?
地球が物体を引く力。向きは鉛直下向き
物体が空中にあっても、机の上にあっても、動いていても、同じ大きさで受けている。作用点は物体の重心にとる。
質量 の物体が受ける重力の大きさ は?
( は重力加速度の大きさ)
質量 の物体が受ける重力は 。質量が 2 倍になれば重力も 2 倍になる。
重力加速度の大きさ の値は?
地球上の場所によってわずかに違うが、問題では断りがなければこの値を使う。
質量と重さの違いは?
質量は物体そのものの量で、単位は 。場所によらない。重さは物体が受ける重力の大きさで、単位は 。場所で変わる
月面では重力が地球上の約 になるので、重さは約 になるが、質量は変わらない。
3. 接して働く力
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋐
面や糸は、接している物体に力を及ぼします。面からの力は面に垂直、糸からの力は糸に沿う、と向きが決まっています。
垂直抗力とは? 向きは?
面が、接している物体を押す力。向きは面に垂直で、面から物体へ向かう向き
机の上の物体が机にめり込まないのは、机が物体を押し返しているから。斜面の上でも、向きは鉛直ではなく斜面に垂直。
糸の張力とは? 向きは?
ぴんと張った糸が、つながっている物体を引く力。向きは糸に沿って、物体から糸の側へ向かう向き
糸は引くことしかできない。たるんだ糸の張力は 0 である。
「軽い糸」と書いてあるとき、張力について何が言えるか?
糸の質量を無視してよく、1 本の糸の張力の大きさは、糸のどこでも(両端でも)等しい
なめらかな滑車に糸をかけて向きを変えても、張力の大きさは変わらない。
垂直抗力や張力の大きさは、どうやって求めるか?
公式は無い。物体が受ける力のつり合いの式(動いているときは運動方程式)から求める
「垂直抗力は 」と決めつけない。上から押されたり、斜面の上にあったりすると、 とは違う値になる。
4. 空間を隔てて働く力
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋐
力には、接しているものから受ける力のほかに、離れていても働く力があります。
力を「接して働く力」と「空間を隔てて働く力」に分けると、それぞれ何があるか?
接して働く力は、垂直抗力・摩擦力・張力・弾性力・浮力。空間を隔てて働く力は、重力・静電気力・磁力
静電気力は電気を帯びた物体どうし、磁力は磁石どうしや磁石と鉄の間に働く。力学の問題で出てくる「隔てて働く力」は、ふつう重力だけ。
5. 物体が受ける力の見つけ方
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋐
力を 1 つでも数え落とすと、あとの式が全部ずれます。見つける順番を決めておきます。
物体が受ける力を漏れなく見つける手順は?
① 注目する物体を 1 つ決める ② 重力を書く ③ 物体に接しているものを全部挙げ、1 つにつき受ける力を書く(面なら垂直抗力と摩擦力、糸なら張力、ばねなら弾性力、液体なら浮力)
書いた力の 1 つ 1 つについて「何から受ける力か」を言えるか確かめる。言えない力は、存在しない力である。
なめらかな水平面の上を、右向きに滑っている物体がある。この物体が受けている力は?
重力(鉛直下向き)と垂直抗力(鉛直上向き)の 2 つだけ
右向きに動いていても、右向きの力は受けていない。接しているのは面だけで、なめらかな面は摩擦力を及ぼさない。「動いている向きに力がある」と思い込まない。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋐
問 1 質量 の物体が受ける重力の大きさを求めよ。重力加速度の大きさを とする。
方針 重力の大きさは質量に比例し、 で求められる。質量を のまま入れれば、答えは で出る。
- 、 を に入れる。
ここで間違えやすい 「重さ 」と答えない。 は質量の単位で、重力の大きさは で答える。
問 2 質量 の人がいる。地球上での重さと、月面での重さをそれぞれ求めよ。また、月面でのこの人の質量を答えよ。重力加速度の大きさは、地球上で 、月面で とする。
地球上 、月面 。月面での質量は のまま
方針 重さは重力の大きさ で、 が場所によって違うので場所ごとに計算する。質量は物体そのものの量なので、どこへ行っても変わらない。
- 地球上の重さは 。有効数字 2 桁にすると
- 月面の重さは
- 質量は場所によらないので、月面でも
ここで間違えやすい 月面で質量まで小さくしてしまうこと。変わるのは重さだけである。
問 3 水平な机の上に、質量 の本が置かれて静止している。本が受けている力をすべて挙げ、それぞれについて「何から受けるか・向き・大きさ」を答えよ。重力加速度の大きさを とする。
重力(地球から・鉛直下向き・)と、垂直抗力(机から・鉛直上向き・)の 2 つ
方針 まず重力を書き、次に本に接しているものを数える。接しているのは机だけなので、机から受ける力を調べる。本は静止しているので、受ける力はつり合っている。
- 重力を書く。地球から、鉛直下向きに、。有効数字 2 桁で
- 本に接しているのは机の面だけ。面からは垂直抗力を受ける。向きは面に垂直なので、鉛直上向き。
- 本を水平に動かそうとする力は無いので、摩擦力は働いていない。
- 本は静止しているので、鉛直上向きの垂直抗力と鉛直下向きの重力は同じ大きさである。垂直抗力は
ここで間違えやすい 「本が机を押す力」を数に入れてしまうこと。それは机が受ける力で、本が受ける力ではない。
問 4 天井から軽い糸で、質量 のおもりをつるして静止させた。おもりが受けている力をすべて挙げ、それぞれについて「何から受けるか・向き・大きさ」を答えよ。重力加速度の大きさを とする。
重力(地球から・鉛直下向き・)と、張力(糸から・鉛直上向き・)の 2 つ
方針 重力を書いてから、おもりに接しているものを数える。接しているのは糸だけ。張力には公式が無いので、つり合いから大きさを決める。
- 重力を書く。地球から、鉛直下向きに、
- おもりに接しているのは糸だけ。糸からは張力を受ける。向きは糸に沿って上向き。
- おもりは静止しているので、上向きの張力と下向きの重力は同じ大きさである。張力は
ここで間違えやすい 天井を、おもりに力を及ぼすものとして数えてしまうこと。天井はおもりに接していない。おもりに接しているのは糸だけである。
問 5 粗い斜面の上に物体が置かれ、滑らずに静止している。この物体が受けている力をすべて挙げ、それぞれについて「何から受けるか・向き」を答えよ。
重力(地球から・鉛直下向き)、垂直抗力(斜面から・斜面に垂直で斜面から離れる向き)、静止摩擦力(斜面から・斜面に沿って上向き)の 3 つ
方針 重力を書いてから、物体に接しているものを数える。接しているのは斜面だけだが、粗い面からは垂直抗力と摩擦力の 2 つを受けることがある。
- 重力を書く。地球から、鉛直下向き。斜面の上でも、重力の向きは斜面に垂直ではなく鉛直下向きである。
- 物体に接しているのは斜面だけ。面からはまず垂直抗力を受ける。向きは斜面に垂直で、斜面から物体へ向かう向き。
- もし摩擦が無ければ、物体は斜面に沿って滑り下りる。それが止まっているので、斜面から、滑り下りるのを妨げる向き(斜面に沿って上向き)に静止摩擦力を受けている。
- ほかに接しているものは無いので、力は 3 つ。
ここで間違えやすい 「斜面に沿って下向きに滑らせる力」を 4 つ目として書いてしまうこと。それは重力の一部(分力)で、重力と別に数えると二重になる。