弾性力とフックの法則
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理基礎 (1) ア (イ) ㋐「物体に様々な力が働くことを理解すること。」。内容の取扱いは、ここで弾性力を扱うこととしています。
0. どういうまとまりか
ばねを引いて伸ばすと、ばねは縮もうとして手を引き返します。押して縮めると、伸びようとして手を押し返します。
変形した物体がもとの形に戻ろうとする性質を弾性といい、そのとき相手に及ぼす力を弾性力といいます。
ばねの弾性力の大きさは、伸び(または縮み)に比例します。これがフックの法則です。
| 決めるもの | 中身 |
|---|---|
| 向き | ばねが自然の長さに戻ろうとする向き。伸びていれば引く、縮んでいれば押す |
| 大きさ | |
| 自然の長さからの伸び(または縮み)。単位は | |
| ばね定数。単位は 。大きいほど伸びにくい(かたい)ばね |
分かれ目は次の 3 つ。
- はばねの全長ではない。自然の長さから何 伸びたか(縮んだか)を入れる
- 伸びが で与えられたら、先に に直す。ばね定数の単位が だから
- ばねの両端を ずつで引いても、ばねの弾性力は 。 にはならない
1. 弾性力
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋐
弾性力は、変形したばねがつながっている相手に及ぼす力です。向きは、ばねが伸びているか縮んでいるかで決まります。
弾性とは? 弾性力とは?
弾性は、変形した物体がもとの形に戻ろうとする性質。弾性力は、変形した物体がもとに戻ろうとして、接している相手に及ぼす力
ばねのほか、ゴムひもや、たわんだ板も弾性力を及ぼす。
ばねの「自然の長さ」とは?
ばねが伸びても縮んでもいないときの長さ(力を受けていないときの長さ)
自然の長さのとき、ばねの弾性力は 0。伸びや縮みは、この長さを基準にして測る。
ばねが物体に及ぼす弾性力の向きは? 伸びているときと縮んでいるときで答えよ。
伸びているときは、物体をばねの側へ引く向き。縮んでいるときは、物体をばねから遠ざかるほうへ押す向き
どちらも「ばねが自然の長さに戻ろうとする向き」とまとめられる。
2. フックの法則
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋐
弾性力の大きさは、伸びや縮みに比例します。比例定数がばね定数で、ばね 1 本ごとに決まった値です。
フックの法則とは? 式は?
ばねの弾性力の大きさ は、自然の長さからの伸び(または縮み) に比例する。
伸びが 2 倍になれば弾性力も 2 倍になる。例えば のばねを 伸ばすと、弾性力は 。
ばね定数 とは何を表す量か? 単位は?
ばねを単位の長さ()だけ伸ばすのに必要な力の大きさ。単位は (ニュートン毎メートル)
ばね定数が大きいばねほど、伸ばすのに大きな力が要る。つまり、かたいばねである。
フックの法則 の に入れるのは、ばねの全長か?
全長ではない。自然の長さからの伸び(または縮み)を入れる
伸びは「いまの長さ − 自然の長さ」。全長を入れると、力を加えていないばねにも弾性力があることになってしまう。
伸びが で与えられたばねの問題で、最初にすることは?
伸びを に直す()
ばね定数の単位が なので、 のまま入れると答えが 100 倍ずれる。
横軸にばねの伸び 、縦軸に弾性力の大きさ をとったグラフは、どんな形か? 傾きは何を表すか?
原点を通る直線。傾きがばね定数 を表す
傾きが急なばねほど、ばね定数が大きい(かたい)。直線上の 1 点の を で割れば、ばね定数が求められる。
同じ大きさの力で引いたとき、ばね定数が 2 倍のばねの伸びは何倍か?
倍
から 。力が同じなら、伸びはばね定数に反比例する。
3. ばねとつり合い
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋐
ばねにつないだ物体が静止しているとき、弾性力はほかの力とつり合っています。ここから伸びやばね定数を求めます。
天井からつるした軽いばね(ばね定数 )に質量 のおもりをつるして静止させた。ばねの伸び を求める式は?
から
おもりが受ける力は、上向きの弾性力 と下向きの重力 の 2 つ。静止しているので、この 2 つの大きさが等しい。
ばねの一端を壁に固定し、他端を大きさ の力で引く。これと、ばねの両端をそれぞれ大きさ の力で引くのとでは、伸びはどう違うか?
同じ(どちらも伸びは )
一端を壁に固定して引くとき、壁もばねを大きさ で引いている。ばねから見れば、どちらも両端を ずつで引かれている。
ばねばかりは、どんな原理で力の大きさを測っているか?
ばねの伸びが、加えた力の大きさに比例すること(フックの法則)
伸びを読めば力の大きさが分かる。目盛りが等間隔なのは、伸びが力に比例するから。
【発展】ばね定数 と の 2 本の軽いばねを、並列につないだときと直列につないだとき、全体を 1 本のばねとみなしたばね定数 はそれぞれどうなるか。
並列は 。直列は
学習指導要領の解説が物理基礎で扱うとした範囲の外ですが、教科書や問題集でよく見かけるので、考え方だけ置いておきます。
- 並列(2 本を並べて、同じだけ伸ばす) 伸びがどちらも で共通。全体の力は 2 本の弾性力の和なので、。全体はかたくなる。
- 直列(2 本を縦につなぐ) 弾性力がどちらも で共通。全体の伸びは 2 本の伸びの和なので、。全体はやわらかくなる。
同じばね(ばね定数 )を 2 本つなぐと、並列では 、直列では になります。「並列は伸びが共通、直列は力が共通」が分かれ目です。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋐
問 1 ばね定数 のばねを、自然の長さから 伸ばした。このときの弾性力の大きさを求めよ。
方針 ばね定数と伸びが分かっているので、フックの法則 にそのまま入れる。
- 、 を に入れる。
問 2 あるばねを の力で引いたところ、自然の長さから 伸びた。このばねのばね定数を求めよ。また、このばねを の力で引いたときの伸びは何 か。
ばね定数 、伸び
方針 力と伸びの組が 1 つ分かれば、 からばね定数が決まる。ばね定数はそのばねに固有の値なので、決まれば別の力での伸びも求められる。伸びは先に に直す。
- 伸びを に直す。 は
- から 。数値を入れると
- で引いたときの伸びは から
- に直すと
ここで間違えやすい のまま割って としてしまうこと。それは の値で、 ではない。
問 3 自然の長さ 、ばね定数 の軽いばねを天井からつるし、下端に質量 のおもりをつけて静止させた。このときのばねの全長を求めよ。重力加速度の大きさを とする。
方針 おもりは静止しているので、ばねの弾性力と重力がつり合う。つり合いの式から伸びを出し、自然の長さに足して全長にする。
- おもりが受ける力は、下向きの重力と上向きの弾性力の 2 つ。
- 重力の大きさは
- 伸びを とすると、つり合いの式は 。 に数値を入れて
- 全長は、自然の長さに伸びを足して
ここで間違えやすい 伸び をそのまま答えにしてしまうこと。問われているのは全長である。
問 4 ばね定数 の軽いばねの両端を、左右にそれぞれ の力で引いて静止させた。ばねの伸びを求めよ。
方針 ばねの両端を ずつで引くのは、一端を壁に固定して他端を で引くのと同じ状態である。弾性力の大きさは で、これを に入れる。
- 一端を壁に固定して で引くとき、壁もばねを で引き返している。これは、両端を ずつで引くのと同じ。
- よって、ばねの弾性力の大きさは
- に数値を入れて
ここで間違えやすい 両側の力を足して とし、伸びを としてしまうこと。
問 5 あるばねについて、伸びと弾性力の大きさの関係を調べたところ、伸びが のとき 、伸びが のとき で、グラフは原点を通る直線になった。このばねのばね定数を求めよ。また、伸びが のときの弾性力の大きさを求めよ。
ばね定数 、弾性力
方針 伸びと弾性力のグラフは原点を通る直線で、その傾きがばね定数である。傾きを求めてから、 で別の伸びのときの力を出す。
- 傾きは、直線上の 1 点の力を伸びで割れば求められる。1 つ目の点から
- 確かめに 2 つ目の点でも計算すると で、同じ値になる。
- 伸びが のときの弾性力は