熱量と比熱
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理基礎 (2) ア (イ) ㋑「熱に関する実験などを行い,熱の移動及び熱と仕事の変換について理解すること。」。このノートは前半の「熱の移動」を扱います。
0. どういうまとまりか
同じ熱量を与えても、温度の上がり方は物体によって違います。その「温まりにくさ」を表すのが熱容量と比熱です。
熱容量は物体 1 個についての量、比熱は物質 についての量で、質量をかけると比熱から熱容量になります。
温度の違う物体をふれ合わせたときは、高温の物体が失った熱量と低温の物体が得た熱量が等しい(熱量の保存)ことから式を立てます。
| 知りたいもの | 式 | 文字の意味 |
|---|---|---|
| 温度を変えるのに必要な熱量(熱容量から) | は熱容量 、 は温度変化 | |
| 温度を変えるのに必要な熱量(比熱から) | は質量 、 は比熱 | |
| 熱容量と比熱の関係 | 比熱に質量をかけると熱容量 | |
| 熱量の保存 | 失った熱量 = 得た熱量 | 外部との熱の出入りがないとき |
| 状態を変えるのに必要な熱量 | は融解熱や蒸発熱 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 熱容量は「物体」の量、比熱は「物質」の量。同じ鉄でも、大きい鉄球のほうが熱容量は大きいが、比熱は同じ
- 熱量の保存の式は、両辺とも正の量にして立てる。温度変化は「高いほう − 低いほう」で書く
- 状態変化があるときは、温度を上げる熱量 と状態を変える熱量 を別々に計算して足す
1. 熱容量と比熱
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(イ)-㋑
熱量は移動した熱運動のエネルギーの量なので、単位は仕事やエネルギーと同じジュール()です。
熱容量とは? 単位は? 熱容量 の物体の温度を だけ変えるのに必要な熱量は?
物体の温度を 上げるのに必要な熱量。単位は 。必要な熱量は
熱容量が大きい物体ほど、温まりにくく冷めにくい。熱容量は物体ごとに決まる量で、同じ物質でも質量が大きいほど大きい。
比熱(比熱容量)とは? 単位は?
物質 の温度を 上げるのに必要な熱量。単位は
比熱は物質の種類で決まる量。 あたりで表して を使うこともあるので、問題文の単位を先に確かめる。
質量 、比熱 の物体の温度を だけ変えるのに必要な熱量は?
を 上げるのに が要るので、 倍・ 倍する。鉄(比熱 ) を 上げるには 。
熱容量 と比熱 の関係は? 2 つは何が違うか?
。熱容量は物体 1 個についての量、比熱は物質 についての量
同じ物質でできていれば比熱は同じだが、質量が 2 倍なら熱容量は 2 倍になる。 の をまとめたものが の 。
水の比熱はおよそいくらか?
約
水 の温度を 上げるのに約 が要る。鉄や銅などの金属の比熱は 1 より小さく、水の比熱は身近な物質の中でとくに大きい。
比熱が大きい物質は、同じ質量に同じ熱量を与えたとき、温度の変化が大きいか小さいか?
小さい(温まりにくく、冷めにくい)
なので、 が大きいほど は小さい。海の近くで昼夜の気温の差が小さいのは、水の比熱が大きいため。
2. 熱量の保存
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(イ)-㋑
高温の物体と低温の物体をふれ合わせると、熱は高温の側から低温の側へ移り、やがて同じ温度(熱平衡)になります。
熱量の保存とは?
外部との熱の出入りがないとき、高温の物体が失った熱量と、低温の物体が得た熱量は等しい
熱は物体の間を移動するだけで、途中で増えたり消えたりしない。まわりの空気や容器へ熱が逃げるときは、その分も数えないと成り立たない。
温度の違う 2 つの物体を混ぜたあとの温度を求めるとき、式はどう立てるか?
混ぜたあとの温度を とおき、「高温の物体が失った熱量 = 低温の物体が得た熱量」を立てる。温度変化は、高温側は(はじめの温度 )、低温側は( はじめの温度)と書く
どちらの温度変化も「高いほう − 低いほう」にして正の量にそろえる。 の形になる。
温度の違う 2 つの物体が熱平衡になったときの温度は、はじめの 2 つの温度とどういう関係にあるか?
必ず 2 つの温度の間になる。熱容量の大きい物体の、はじめの温度に近い値になる
求めた温度がはじめの 2 つの温度の間に入っていなければ、計算のどこかが違っている。検算に使える。
水熱量計を使って金属の比熱を求めるとき、容器(熱量計)の扱いはどうするか?
容器も水と同じだけ温度が上がるので、「得た熱量」に容器の分(容器の熱容量 × 温度変化)を加える
失った熱量 = 水が得た熱量 + 容器が得た熱量。問題文に「容器の熱容量は無視する」とあれば、水の分だけでよい。
3. 状態変化と熱量
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(イ)-㋑
状態が変わっている間は温度が変わらないので、 は使えません。状態変化に出入りする熱(潜熱)は、質量に比例します。
質量 の物質の状態を変えるのに必要な熱量は?( あたりの融解熱や蒸発熱を とする)
温度変化が無いので は式に入らない。氷の融解熱は約 、水の蒸発熱は約 で、蒸発のほうがずっと大きい。
の氷を加熱して、 より高い温度の水にするのに必要な熱量は、どう計算するか?
「氷をとかす熱量 」と「とけた水の温度を上げる熱量 」を別々に計算して足す
状態変化の区間と温度変化の区間に分ける。温度変化の区間で使う比熱は、そのときの状態(水なら水の比熱)のものを使う。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(イ)-㋑
以下、水の比熱は とし、断りがなければ外部や容器との熱の出入りは無視します。
問 1 の水 を にするのに必要な熱量を求めよ。
方針 質量と比熱が分かっていて温度が変わるので、 を使う。先に温度変化 を出す。
- 温度変化は なので、
- に 、、 を入れる
ここで間違えやすい に、あとの温度の 50 をそのまま入れてしまうこと。 は温度の変化分。
問 2 質量 の銅製の容器がある。銅の比熱を として、(1) この容器の熱容量、(2) この容器の温度を 上げるのに必要な熱量を求めよ。
(1) (2)
方針 熱容量は比熱に質量をかけたもの()。熱容量が分かれば、必要な熱量は で出せる。
- (1) に 、 を入れる
- (2) に 、 を入れる
問 3 の水 と、 の水 を混ぜた。全体の温度は何 になるか。
方針 熱量の保存を使う。混ぜたあとの温度を とおき、「 の水が失った熱量 = の水が得た熱量」を立てる。
- 混ぜたあとの温度を とおく。高温の水の温度変化は 、低温の水の温度変化は
- 高温の水が失った熱量は 、低温の水が得た熱量は
- 熱量の保存から、
- 両辺を で割ると、
- 右辺を展開すると 。移項して なので、
- 確かめ: 失った熱量は 、得た熱量は で等しい
ここで間違えやすい 2 つの温度の平均の と答えてしまうこと。質量が違うので平均にはならず、量の多い の水の側に寄る。
問 4 に熱した質量 の金属球を、 の水 の中に入れたところ、全体の温度が になった。この金属の比熱を求めよ。
方針 熱量の保存を使う。金属球が失った熱量と水が得た熱量が等しい。水が得た熱量は数値で出せるので、そこから金属の比熱 を求める。
- 金属球の温度変化は なので 、水の温度変化は なので
- 水が得た熱量は、
- 金属の比熱を とすると、金属球が失った熱量は
- 熱量の保存から、
- 両辺を 15000 で割ると、
ここで間違えやすい 金属球の温度変化を、水と同じ や、はじめの温度の 100 としてしまうこと。温度変化は物体ごとに「はじめの温度と熱平衡の温度の差」で出す。
問 5 の氷 を、すべて の水にするのに必要な熱量を求めよ。氷の融解熱は とする。
方針 氷がとける区間(温度は のまま)と、とけた水の温度が上がる区間に分ける。前の区間は 、後の区間は で計算して足す。
- 氷をとかすのに必要な熱量は、
- とけた の水 を にするのに必要な熱量は、
- 合計は
ここで間違えやすい 2. だけを計算して と答えてしまうこと。この問題では、とかすための熱量のほうが、温度を上げる熱量より大きい。