熱と温度
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理基礎 (2) ア (イ) ㋐「熱と温度について,原子や分子の熱運動の観点から理解すること。」。
0. どういうまとまりか
物質をつくる原子や分子は、目に見えないところでいつも乱雑に動いています。この運動を熱運動といい、温度は熱運動の激しさを表す量です。
温度の違う物体をふれ合わせると、熱運動のエネルギーが高温の側から低温の側へ移ります。この移動するエネルギーが熱です。
「温度」「熱」「内部エネルギー」はふだん区別せずに使いがちですが、物理では 3 つとも別のものを指します。
| 言葉 | 何を指すか | 単位 |
|---|---|---|
| 温度 | 原子・分子の熱運動の激しさ | 、 |
| 熱(熱量) | 温度の差によって移動するエネルギー(その量) | |
| 内部エネルギー | 物体の中の原子・分子がもつエネルギーの総和 | |
| 絶対温度 | 熱運動がもっとも穏やかになる温度を 0 とした温度 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 熱は「移動するエネルギー」、温度は「熱運動の激しさ」。物体が「熱をもっている」とは言わない。物体がもっているのは内部エネルギー
- 絶対温度はセルシウス温度に 273 を足す。ただし温度の差は、 で表しても で表しても同じ数になる
- 状態が変わっている間は、熱を加えても温度が上がらない。加えた熱は、粒子どうしの結びつきをゆるめるのに使われる
1. 熱運動と温度
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(イ)-㋐
温度を「熱い・冷たい」の感覚でなく、原子や分子の運動で説明するのがこの節です。
温度が上がると熱運動が激しくなって粒子どうしの間隔が少し広がるので、多くの物質は温度が上がると体積が増えます(熱膨張)。
熱運動とは?
物質をつくる原子や分子が行っている、乱雑な運動
固体の中でも粒子は決まった位置を中心に振動している。止まっているように見える物体の中でも、熱運動は続いている。
温度は、原子や分子の何を表す量か?
熱運動の激しさ
温度が高いほど、原子や分子の熱運動は激しい。温度は粒子 1 個の値ではなく、多数の粒子をならして見たときの量。
ブラウン運動とは? 何の証拠になるか?
水に浮かべた花粉から出た微粒子や、空気中の煙の粒子が不規則に動き続ける現象。水や空気の分子が熱運動をしている証拠になる
熱運動している分子が四方からぶつかり、そのぶつかり方がそろわないので、微粒子が不規則に動かされる。温度が高いほど動きは激しい。
2. セルシウス温度と絶対温度
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(イ)-㋐
熱運動には「これ以上穏やかにならない」という下限があります。その温度を 0 として目盛りを振り直したのが絶対温度です。
絶対零度とは? セルシウス温度では何度か?
熱運動がもっとも穏やかになる、温度の下限。
これより低い温度は存在しない。より正確には 。
絶対温度 とセルシウス温度 の関係は?
絶対零度を とし、目盛りの間隔はセルシウス温度と同じにした温度。単位はケルビン(記号 )。 は 。
温度の差を で表すときと で表すときで、数は変わるか?
変わらない。目盛りの間隔が同じなので、温度差は同じ数になる
から への温度変化は であり、 でもある。273 を足すのは温度そのものを直すときだけ。
3. 熱・熱平衡・内部エネルギー
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(イ)-㋐
温度の違う物体をふれ合わせると、熱運動の激しい側の粒子が穏やかな側の粒子を揺り動かし、エネルギーが移っていきます。
物理でいう「熱」とは? その量を何といい、単位は何か?
高温の物体から低温の物体へ移動する、熱運動のエネルギー。その量を熱量といい、単位はジュール()
熱は移動するときの呼び名なので、「物体がもっている熱」とは言わない。物体がもっているのは内部エネルギー。
熱平衡とは?
ふれ合わせた 2 つの物体の温度が等しくなり、熱の移動が止まった状態
高温の物体は温度が下がり、低温の物体は温度が上がって、やがて同じ温度に落ち着く。温度計が測っているのは、物体と熱平衡になった温度計自身の温度。
内部エネルギーとは?
物体をつくる原子や分子がもつ、熱運動の運動エネルギーと、粒子どうしが及ぼし合う力による位置エネルギーの総和
物体全体が動く運動エネルギーや、高さによる位置エネルギーは含めない。物体の「中」に蓄えられているエネルギー。
同じ物体で、温度が上がると内部エネルギーはどうなるか?
大きくなる(熱運動が激しくなり、粒子の運動エネルギーが増える)
内部エネルギーは粒子の数にもよる。同じ温度でも、コップ 1 杯の水より浴槽の水のほうが内部エネルギーは大きい。
4. 物質の三態と潜熱
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(イ)-㋐
固体・液体・気体の違いは、粒子どうしを結びつける力と熱運動の、どちらが勝っているかで決まります。
| 状態 | 粒子の様子 | 形と体積 |
|---|---|---|
| 固体 | 決まった位置を中心に振動している | 形も体積も決まっている |
| 液体 | たがいに位置を入れかえながら動いている | 形は変わるが、体積はほぼ決まっている |
| 気体 | ばらばらになって空間を飛び回っている | 形も体積も決まっていない |
物質の三態とは? 粒子の熱運動の様子はそれぞれどう違うか?
固体・液体・気体の 3 つの状態。固体は決まった位置で振動し、液体は位置を入れかえながら動き、気体はばらばらに飛び回る
温度が上がって熱運動が激しくなると、粒子どうしの結びつきに打ち勝って、固体から液体へ、液体から気体へと変わる。
氷がとけている間や水が沸騰している間、加熱し続けても温度はどうなるか? それはなぜか?
一定のまま変わらない。加えた熱が、粒子どうしの結びつきをゆるめる(切る)のに使われるから
熱運動の激しさ(温度)は増えず、粒子の配置が変わることに使われる。氷がとける温度が融点、水が沸騰する温度が沸点。
潜熱とは? 融解熱と蒸発熱はそれぞれ何か?
状態変化のために出入りする熱が潜熱。固体を液体にするのに必要な熱が融解熱、液体を気体にするのに必要な熱が蒸発熱
ふつう物質 あたりの熱量(単位 )で表す。逆向きの変化(凝固・凝縮)では、同じ量の熱を放出する。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(イ)-㋐
問 1 次の温度を、(1) は絶対温度に、(2) はセルシウス温度に直せ。(1) (2)
(1) (2)
方針 絶対温度とセルシウス温度の関係 を使う。セルシウス温度を求めるときは、この式を に直してから数を入れる。
- (1) を に入れると、
- (2) の 273 を移項すると、
- を入れると、
ここで間違えやすい (2) で 273 を足してしまうこと。絶対温度のほうがいつも 273 だけ大きい数になるので、セルシウス温度に直すときは引く。
問 2 ある液体の温度が から に上がった。温度の変化は何 か。
方針 温度の差は、セルシウス温度で引き算した数がそのまま での差になる。念のため、絶対温度に直してから引いても同じになることを確かめる。
- セルシウス温度のまま引くと、
- 絶対温度に直すと、はじめは 、あとは
- 絶対温度で引くと、。1. と同じ数になる
ここで間違えやすい 温度差の 60 に 273 を足して としてしまうこと。273 を足すのは温度そのものを直すときで、差には足さない。
問 3 の氷に、一定の割合で熱を加え続けた。氷がすべて水になり、さらに沸騰して水蒸気になるまでの温度の変化を、順に説明せよ。
「上がる・一定・上がる・一定・上がる」の 5 段階になる。 と のところで、温度が一定のままの時間がある
方針 状態が 1 つだけの間は、加えた熱が熱運動を激しくするので温度が上がる。2 つの状態が混ざっている間は、加えた熱が状態変化に使われるので温度は変わらない。この 2 つを順に当てはめる。
- 氷だけの間は、温度が から まで上がる
- になると氷がとけ始める。氷と水が混ざっている間は、加えた熱が融解熱として使われ、温度は のまま
- すべて水になると、温度が から まで上がる
- になると沸騰が始まる。水と水蒸気が混ざっている間は、加えた熱が蒸発熱として使われ、温度は のまま
- すべて水蒸気になると、温度はふたたび上がる
ここで間違えやすい 加熱しているのだから温度は上がり続ける、と考えてしまうこと。温度が一定の間も熱は吸収されていて、内部エネルギーは増えている。