熱と仕事
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理基礎 (2) ア (イ) ㋑「熱に関する実験などを行い,熱の移動及び熱と仕事の変換について理解すること。」。このノートは後半の「熱と仕事の変換」を扱います。
0. どういうまとまりか
手をこすり合わせると温かくなるように、物体の温度は熱を加えなくても仕事をすることで上げられます。
熱も仕事も、物体の内部エネルギーを変える手段であり、どちらもエネルギーの移動です。この関係をまとめたのが熱力学第一法則です。
逆に、熱を仕事に変える装置が熱機関です。ただし、仕事はすべて熱に変えられるのに、熱をすべて仕事に変え続けることはできません。この向きの決まった性質が不可逆変化です。
| 知りたいもの | 式 | 文字の意味 |
|---|---|---|
| 内部エネルギーの変化 | は物体が受け取った熱量、 は物体が外部からされた仕事 | |
| 外部へした仕事で書くとき | は物体が外部へした仕事() | |
| 熱機関のする仕事 | ここの は熱機関が外部へした仕事。 は高温の熱源から受け取った熱量、 は低温の熱源へ捨てた熱量 | |
| 熱効率 | 受け取った熱量のうち、仕事に変わった割合 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 熱力学第一法則は、符号の約束を先に決める。「受け取った熱」「された仕事」が正。放出した熱と、外部へした仕事は負の数で入れる
- 熱効率の分母は、受け取った熱量 。捨てた熱量 や仕事 を分母にしない
- 熱効率は必ず 1 より小さい。熱機関は、受け取った熱の一部を必ず低温の側へ捨てる
1. 仕事による温度の上昇
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(イ)-㋑
物体に仕事をすると、そのエネルギーが原子や分子の熱運動のエネルギーに変わり、温度が上がります。
物体の内部エネルギーを増やす(温度を上げる)方法を 2 つ挙げよ。
熱を加える。仕事をする(こする・たたく・圧縮するなど)
どちらもエネルギーを物体に移す方法で、結果としての内部エネルギーの増加に区別はない。摩擦で熱くなるのは、摩擦力に逆らってした仕事が内部エネルギーになったため。
ジュールの実験とは、どんな実験か? 何が分かったか?
おもりを落下させて水中の羽根車を回し、水をかき混ぜて水温の上昇を測った実験。おもりがした仕事と、同じ温度上昇を起こす熱量とが、いつも決まった割合で対応することが分かった
熱が仕事と同じエネルギーの一つの形であることを示した。水 の温度を 上げるには、約 の仕事が要る。
空気を閉じこめた容器を、熱の出入りが間に合わないほど急激に圧縮すると、空気の温度はどうなるか? それはなぜか?
上がる。圧縮するときに外部からされた仕事が、そのまま内部エネルギーの増加になるから
熱の出入りがないので 、された仕事は で、。逆に急激に膨張させると、外部へ仕事をした分だけ内部エネルギーが減り、温度は下がる。
2. 熱力学第一法則
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(イ)-㋑
熱と仕事まで含めたエネルギー保存の法則です。式そのものより、文字が「どちら向き」を正としているかを先に確かめます。
熱力学第一法則とは? 式で書け。
物体の内部エネルギーの変化 は、物体が受け取った熱量 と、物体が外部からされた仕事 の和に等しい。
物体に入ってきたエネルギーの合計だけ、内部エネルギーが増える。熱現象を含めたエネルギー保存の法則。
で、物体が熱を放出したときや、外部へ仕事をしたときは、 や をどう入れるか?
負の数で入れる。熱を 放出したなら 、外部へ の仕事をしたなら
は「受け取った」熱量、 は「された」仕事を正とする約束。問題文の「吸収した・放出した」「された・した」を読んで、符号を付けてから式に入れる。
物体が外部へ「した」仕事を とすると、熱力学第一法則はどう書けるか?
(または )
「受け取った熱量は、内部エネルギーの増加と、外部へした仕事に使われる」と読める。 の関係で、 と同じ内容。教科書や問題によって使う形が違うので、 がどちら向きの仕事かを必ず確かめる。
3. 熱機関と熱効率
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(イ)-㋑
蒸気機関や自動車のエンジンのように、熱を繰り返し仕事に変える装置を熱機関といいます。
この節の は、熱機関が外部へした仕事の大きさです。2 節の の (外部からされた仕事)とは向きが逆なので、混ぜて使わないようにします。
熱機関とは? 熱と仕事の出入りはどうなっているか?
熱を仕事に変える装置。高温の熱源から熱量 を受け取り、その一部を仕事 に変え、残りの熱量 を低温の熱源へ捨てる
エネルギーの保存から 。蒸気機関、ガソリンエンジン、火力発電所のタービンなどが熱機関。
熱機関の熱効率 は?
受け取った熱量 のうち、仕事に変わった割合。 を受け取って を捨てる熱機関なら、仕事は で 。
熱機関の熱効率は 1(100 %)になるか?
ならない。熱機関は受け取った熱の一部を必ず低温の熱源へ捨てるので、 は必ず 1 より小さい
を 0 にはできない。受け取った熱をすべて仕事に変え続ける熱機関はつくれない。
4. 不可逆変化
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(イ)-㋑
エネルギーは保存されますが、変化はどちら向きにも同じように起こるわけではありません。熱の関わる現象には、決まった向きがあります。
不可逆変化とは? 例を挙げよ。
ひとりでに逆向きには進まず、外部から何かをしないかぎり元の状態に戻らない変化。熱が高温の物体から低温の物体へ移動する、摩擦で物体が止まって熱が発生する、インクが水に広がる、など
熱の関わる現象は不可逆変化。これに対し、摩擦や空気抵抗がない振り子の運動のように、逆向きにもそのまま進める変化を可逆変化という。
熱がひとりでに移動する向きは? 逆向きに移動することはあるか?
高温の物体から低温の物体へ移動する。低温の物体から高温の物体へ、ひとりでに移動することはない
逆向きに移動してもエネルギーの保存には反しないが、自然には起こらない。冷蔵庫やエアコンは、電気で仕事をすることで、低温の側から高温の側へ熱を運んでいる。
「仕事を熱に変える」ことと「熱を仕事に変える」ことは、どう違うか?
仕事はすべて熱に変えられる(摩擦で止まる物体)が、熱をすべて仕事に変え続けることはできない
床の上で摩擦によって止まった物体が、床と自分の熱を集めてひとりでに動き出すことはない。熱機関の熱効率が 1 にならないことと同じ内容。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(イ)-㋑
問 1 容器に閉じこめた気体が の熱量を吸収し、膨張して外部へ の仕事をした。気体の内部エネルギーの変化を求めよ。
増加した
方針 熱力学第一法則 を使う。 は受け取った熱量、 は外部から「された」仕事なので、「外部へした」仕事は負の数にして入れる。
- 熱量は吸収したので、
- 仕事は外部へ「した」ので、された仕事は
- が正なので、内部エネルギーは 増加した
ここで間違えやすい のまま足して としてしまうこと。気体が外部へ仕事をすると、その分だけ気体のエネルギーは減る。
問 2 容器に閉じこめた気体が外部へ の仕事をし、その間に内部エネルギーが 減少した。この間に気体が吸収または放出した熱量を求めよ。
の熱量を吸収した
方針 熱力学第一法則 を について解く。「減少した」内部エネルギーと「外部へした」仕事は、どちらも負の数にして入れる。
- 内部エネルギーは減少したので、
- 仕事は外部へ「した」ので、された仕事は
- の を移項すると、
- が正なので、気体は の熱量を吸収した
ここで間違えやすい 内部エネルギーが減ったのだから熱を放出した、と決めつけること。吸収した熱より多くの仕事を外部へしたので、内部エネルギーが減っている。
問 3 ある熱機関が、高温の熱源から の熱量を受け取り、外部へ の仕事をした。この熱機関の熱効率と、低温の熱源へ捨てた熱量を求めよ。
熱効率 、捨てた熱量
方針 熱効率は「した仕事 ÷ 受け取った熱量」。捨てた熱量は、エネルギーの保存 から求める。
- 、
- 熱効率は
- を について解くと、
問 4 熱効率 の熱機関に の仕事をさせたい。高温の熱源から受け取る熱量と、低温の熱源へ捨てる熱量を求めよ。
受け取る熱量 、捨てる熱量
方針 熱効率の式 を について解く。捨てる熱量は で出す。
- の両辺に をかけて で割ると、
- 捨てる熱量は
ここで間違えやすい として としてしまうこと。受け取る熱量は、した仕事より必ず大きい。
問 5 質量 のおもりを 落下させて羽根車を回し、水 をかき混ぜる。これを 5 回繰り返した。重力がおもりにした仕事がすべて水の温度上昇に使われたとすると、水の温度は何 上がるか。重力加速度の大きさを 、水の比熱を とする。
方針 重力がした仕事を求め、それが水の得た熱量 に等しいとおいて、温度上昇 を求める。
- おもりにはたらく重力の大きさは、
- 1 回の落下で重力がする仕事は、
- 5 回分の仕事は、
- これが水の得た熱量に等しいので、
- なので、
ここで間違えやすい おもりの質量は 、水の質量は で入れること。力は で計算し、この問題の比熱は あたりの値なので水は のまま使う。