弦の振動
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理基礎 (2) ア (ア) ㋑「気柱の共鳴に関する実験などを行い,気柱の共鳴と音源の振動数を関連付けて理解すること。また,弦の振動,音波の性質を理解すること。」。内容の取扱いは「波の反射,共振,うなりなどを扱うこと」としています。
0. どういうまとまりか
両端を固定した弦をはじくと、弦を伝わる波が両端で反射をくり返し、逆向きに進む波どうしが重なり合って定在波ができます。
両端は固定されているので必ず節になり、この条件に合う波長の定在波だけが生き残ります。
こうしてできる、その弦に特有の振動を固有振動、そのときの振動数を固有振動数といいます。
長さ の弦を伝わる波の速さを とすると、固有振動は次のようになります。
| 名前 | 腹の数 | 波長 | 振動数 | |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 基本振動 | 1 | ||
| 2 | 2 倍振動 | 2 | ||
| 3 | 3 倍振動 | 3 | ||
| 倍振動 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 弦の両端は節。固定されていて動けないから
- 弦の長さに、半波長がちょうど 個入る。 から波長を出す
- は弦を伝わる波の速さで、空気中の音の速さではない。弦と、弦が出す音とで共通なのは振動数だけ
1. 弦にできる定在波
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(ア)-㋑
弦の振動は、反射と重ね合わせでできる定在波です。どんな波長でもよいわけではなく、両端が節になるものだけが残ります。
両端を固定した弦をはじくと、弦に定在波ができるのはなぜか?
弦を伝わる波が両端で反射をくり返し、逆向きに進む波どうしが重なり合うから
弦の端で反射した波と、そこへ向かう波は、波長と速さが等しく向きが逆。定在波のできる条件を満たしている。
両端を固定した弦にできる定在波で、弦の両端は腹か節か?
どちらも節
両端は固定端なので動けない。固定端での反射では、端が定在波の節になる。
固有振動・固有振動数とは?
物体が、外から力を加え続けられなくても自由に振動するときの、その物体に特有の振動が固有振動。そのときの振動数が固有振動数
弦の固有振動は、両端が節になる定在波。固有振動数は 1 つではなく、とびとびの値がいくつもある。
弦の基本振動とは? そのときの波長は、弦の長さ の何倍か?
腹が 1 個だけの固有振動。波長は
両端の節の間隔が で、これが半波長にあたる。 から 。固有振動のうち、波長が最も長く、振動数が最も小さい。
弦の 2 倍振動、3 倍振動とは?
腹が 2 個の固有振動が 2 倍振動、腹が 3 個の固有振動が 3 倍振動。振動数がそれぞれ基本振動の 2 倍、3 倍になる
腹が 個の振動を 倍振動という。節の数は、両端を含めて 個。
2. 固有振動の波長と振動数
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(ア)-㋑
腹の数が分かれば波長が決まり、弦を伝わる波の速さと合わせて振動数が決まります。
長さ の弦に腹が 個の定在波ができているとき、波長 は? どう導くか?
。腹 1 個ぶんの長さが半波長なので、 を解く
。式を覚えるより、「弦に半波長がいくつ入っているか」を数えるほうが間違えにくい。
長さ の弦を伝わる波の速さが のとき、 倍振動の振動数 は?
に を入れたもの。基本振動数 の整数倍になっている()。
弦が出す音の「基本音」「倍音」とは?
基本振動による音が基本音。2 倍振動、3 倍振動などによる音が倍音
実際の弦は、基本振動といくつもの倍振動が重なって振動している。倍音の混ざり方の違いが、楽器の音色の違いになる。
弦の振動数と、その弦が空気中に出す音の振動数・波長の関係は?
振動数は等しい。波長は等しくない
弦が 1 回振動するたびに空気を 1 回押すので、振動数は同じ。弦の上の波長は 、空気中の音の波長は音の速さ を使って で、速さが違う分だけ波長も違う。
3. 弦の音の高さと共振
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(ア)-㋑
弦の音の高さは、長さと、弦を伝わる波の速さで決まります。また、固有振動数に合った振動を外から加えると、弦は大きく振動します。
弦を伝わる波の速さは、弦の張り方や弦の重さによってどう変わるか?
弦を強く張るほど(張力が大きいほど)速くなる。同じ長さあたりの質量が大きい弦(太く重い弦)ほど遅くなる
強く張った弦は、ずれた部分を元に戻す力が強い。重い弦は動きにくい。物理基礎では、この関係を式ではなく向きで押さえる。
弦の基本音を高くする方法を 3 つ挙げると?
弦を短くする。弦を強く張る。細くて軽い弦に替える
なので、 を小さくするか、 を大きくすればよい。ギターは、弦を指で押さえて長さを変え、ねじで張力を変えて音の高さを合わせる。
共振(共鳴)とは?
物体に、その固有振動数と等しい振動数で周期的に力を加えると、物体が大きく振動するようになる現象
ブランコを、揺れの周期に合わせて押すと大きく揺れるのが共振。音による共振は、ふつう共鳴と呼ぶ。
弦の一端に、振動数を変えられる振動源をつないで弦を揺らす。弦に大きな定在波ができるのは、どんなときか?
振動源の振動数が、弦の固有振動数のどれかと一致したとき(共振)
振動数を上げていくと、腹が 1 個、2 個、3 個、…の定在波が順に現れる。固有振動数からずれた振動数では、弦はほとんど振動しない。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(ア)-㋑
問 1 長さ の弦があり、弦を伝わる波の速さは である。基本振動と 3 倍振動のそれぞれについて、波長と振動数を求めよ。
基本振動は波長 、振動数 。3 倍振動は波長 、振動数
方針 弦の長さに半波長がいくつ入るかで波長を決め、 で振動数を出す。基本振動は半波長 1 個、3 倍振動は 3 個。
- 基本振動では なので、
- 基本振動数は から、
- 3 倍振動では なので、
- 3 倍振動の振動数は から、
- 確かめ: で、基本振動数の 3 倍になっている。
問 2 長さ の弦が、振動数 で、腹が 2 個の定在波をつくって振動している。弦を伝わる波の速さと、この弦の基本振動数を求めよ。
速さ 、基本振動数
方針 腹の数から波長を求め、 で速さを出す。同じ弦なら速さは変わらないので、その速さで基本振動数を計算する。
- 腹が 2 個なので、弦の長さに半波長が 2 個入る。 から、
- 速さは
- 基本振動の波長は
- 基本振動数は
ここで間違えやすい を基本振動数としない。腹が 2 個なので 2 倍振動であり、基本振動数はその半分。
問 3 長さ の弦の基本振動数は であった。弦の張り方を変えずに、振動する部分の長さを にすると、基本振動数はいくらになるか。
方針 張り方が同じなら、弦を伝わる波の速さは変わらない。はじめの条件から速さを求め、短くした弦の基本振動に使う。
- はじめの基本振動の波長は
- 弦を伝わる波の速さは
- 短くした弦の基本振動の波長は
- 基本振動数は
ここで間違えやすい 長さが 倍になったから振動数も 倍、としない。基本振動数は長さに反比例するので、 倍になる。
問 4 長さ の弦の一端に振動源をつなぎ、振動数 で振動させると、弦に腹が 3 個の定在波ができた。弦を伝わる波の速さを求めよ。また、弦の張り方を変えずに、腹が 4 個の定在波をつくるには、振動源の振動数をいくらにすればよいか。弦の両端は節とみなしてよい。
速さ 、振動数
方針 腹の数から波長を求め、速さを出す。張り方が同じなら速さは変わらないので、腹 4 個のときの波長から振動数を計算する。
- 腹が 3 個のとき、 なので、
- 速さは
- 腹が 4 個のとき、波長は
- 必要な振動数は
- 確かめ: 基本振動数は で 。4 倍振動は で合っている。
問 5 長さ の弦が、基本振動数 で振動して音を出している。弦を伝わる波の速さと、この音の空気中での波長を求めよ。空気中の音の速さは とする。
弦を伝わる波の速さ 、空気中の音の波長
方針 弦の上の波と、空気中の音は、振動数だけが共通で、速さと波長は別々である。弦の上では弦の波長と弦の速さを、空気中では音の速さを使う。
- 弦の基本振動の波長は
- 弦を伝わる波の速さは
- 音の振動数は弦の振動数と同じ
- 空気中の音の波長は
ここで間違えやすい 弦の上の波長 を、そのまま音の波長としない。弦から空気へ伝わるときに変わらないのは振動数だけ。