原子核と放射線
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理基礎 (2) ア (エ) ㋐「人類が利用可能な水力,化石燃料,原子力,太陽光などを源とするエネルギーの特性や利用などについて,物理学的な観点から理解すること。」。
内容の取扱いは、原子力について「核分裂によってエネルギーが発生していることに触れること。関連して放射線の種類と性質,放射性物質の基本的な性質及び原子力の利用とその課題にも触れること。」としています。
0. どういうまとまりか
原子の中心には原子核があり、原子核は陽子と中性子でできています。
原子核の中には不安定なものがあり、ひとりでに放射線を出して別の原子核に変わります。
また、ウランのような重い原子核は、中性子を吸収すると 2 つに割れて(核分裂)、大きなエネルギーを出します。原子力発電はこのエネルギーを利用しています。
放射線は目に見えませんが、種類ごとに性質がはっきり分かれているので、表で整理して覚えます。
| 放射線 | 正体 | 電気 | 物質を通り抜ける力(透過力) | 電離作用 | さえぎるもの |
|---|---|---|---|---|---|
| α 線 | ヘリウムの原子核の流れ | 正 | 弱い | 強い | 紙 |
| β 線 | 高速の電子の流れ | 負 | 中くらい | 中くらい | 薄いアルミニウムなどの金属板 |
| γ 線 | 波長の短い電磁波 | もたない | 強い | 弱い | 鉛や厚い鉄の板 |
| 中性子線 | 中性子の流れ | もたない | 強い | 直接には起こさない | 水やコンクリート |
分かれ目は次の 3 つ。
- 放射線・放射能・放射性物質を言い分ける。出てくるものが放射線、出す能力が放射能、出す物質が放射性物質
- 透過力と電離作用は、順番が逆になる。α 線は電離作用が最も強く、透過力が最も弱い
- 単位は「出す側」と「受ける側」で分かれる。ベクレルは出す側、グレイとシーベルトは受ける側
なお、太陽などの恒星は、軽い原子核どうしが合体する核融合でエネルギーを生み出しています。核分裂とは逆向きの反応です。
1. 原子核と放射性同位体
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(エ)-㋐
原子核の種類は、陽子の数と中性子の数で決まります。同じ元素でも中性子の数が違うものがあり、その中に放射線を出すものがあります。
原子核は何でできているか? 原子番号と質量数は、それぞれ何の数か?
陽子と中性子でできている。原子番号は陽子の数、質量数は陽子の数と中性子の数の和
陽子は正の電気をもち、中性子は電気をもたない。陽子と中性子をまとめて核子という。
同位体(アイソトープ)とは?
原子番号(陽子の数)が同じで、中性子の数が違う(質量数が違う)原子どうし
同じ元素なので化学的な性質はほぼ同じ。ウランには、質量数が 235 のもの()と 238 のもの()などがある。
放射性同位体(ラジオアイソトープ)とは? 放射性崩壊とは?
原子核が不安定で、ひとりでに放射線を出す同位体。放射線を出して別の原子核に変わることを放射性崩壊という
崩壊は、温度や圧力を変えても速めたり止めたりできない。
放射線・放射能・放射性物質の違いは?
放射線は、原子核などから出る高速の粒子や電磁波。放射能は、放射線を出す性質(能力)。放射性物質は、放射能をもつ物質
懐中電灯にたとえると、光が放射線、光を出す能力が放射能、懐中電灯そのものが放射性物質にあたる。
2. 放射線の種類と性質
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(エ)-㋐
放射線には、粒子の流れであるものと、電磁波であるものがあります。正体が違うので、物質を通り抜ける力も違います。
α 線・β 線・γ 線の正体は、それぞれ何か? もっている電気は?
α 線はヘリウムの原子核の流れで、正の電気をもつ。β 線は高速の電子の流れで、負の電気をもつ。γ 線は波長の非常に短い電磁波で、電気をもたない
ヘリウムの原子核は、陽子 2 個と中性子 2 個からなる。医療の撮影に使われる X 線も電磁波のなかまで、放射線にふくまれる。
α 線・β 線・γ 線を、透過力(物質を通り抜ける力)の弱い順に並べよ。それぞれ何でさえぎれるか?
α 線、β 線、γ 線の順に弱い。α 線は紙、β 線は薄いアルミニウムなどの金属板、γ 線は鉛や厚い鉄の板でさえぎれる
γ 線は完全には止まらず、厚くするほど弱くなる。
放射線の電離作用とは? α 線・β 線・γ 線のうち、電離作用が最も強いのは?
放射線が物質を通るとき、原子から電子をはじき出してイオンにするはたらき。最も強いのは α 線
電離作用が強いほど、物質の中で早くエネルギーを失うので、透過力は弱くなる。順番は透過力とちょうど逆。
ベクレル()・グレイ()・シーベルト()は、それぞれ何を表す単位か?
ベクレルは放射能の強さ(1 秒間に崩壊する原子核の数)。グレイは物質が吸収した放射線のエネルギーの量。シーベルトは放射線が人体に与える影響の大きさ
ベクレルは放射線を出す側、グレイとシーベルトは受ける側の単位。 は、物質 あたり のエネルギーを吸収したときの量。
半減期とは?
放射性同位体の原子核の数が、崩壊によって元の半分になるまでの時間
半減期ごとに半分になるので、半減期の 2 倍の時間がたつと 、3 倍の時間がたつと が残る。半減期の長さは、放射性同位体の種類ごとに決まっている。
3. 核分裂と原子力の利用
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(エ)-㋐
原子力発電のエネルギーのもとは、原子核が割れるときに出るエネルギーです。放射線は、性質を生かして医療や産業でも使われています。
核分裂とは? 核分裂が起こると、エネルギーのほかに何が出るか?
ウランなどの重い原子核が、中性子を吸収して、2 つの軽い原子核に分かれる反応。エネルギーとともに、2〜3 個の中性子が出る
分かれてできた原子核の多くは、放射線を出す放射性物質である。
核分裂の連鎖反応とは?
核分裂で出た中性子が別の原子核に吸収されて、次の核分裂を引き起こし、核分裂が次々に続くこと
連鎖反応が一定の割合で続いている状態を臨界という。
原子力発電では、核分裂のエネルギーをどうやって電気にしているか? 連鎖反応はどう調節しているか?
原子炉の中で核分裂の連鎖反応を起こし、出てきた熱で水蒸気をつくってタービンを回す。連鎖反応は、中性子を吸収する制御棒で調節する
制御棒を出し入れして中性子の数を加減し、連鎖反応が増えすぎも減りすぎもしないようにしている。
原子力の利用には、どんな課題があるか? 3 つ挙げよ。
安全性の確保、放射性廃棄物の処理、使い終えた原子炉の廃炉
使い終えた燃料には半減期の長い放射性物質がふくまれ、長い期間にわたって管理しなければならない。事故が起きると、放射性物質が環境中に広がるおそれがある。
放射線は、どんな分野で利用されているか? 医療・工業・農業から 1 つずつ例を挙げよ。
医療では X 線撮影やがんの治療。工業では、こわさずに内部を調べる検査や、材料の厚さの測定。農業では、品種改良やジャガイモの芽が出るのを止める処理
X 線撮影や内部の検査は透過力を、がんの治療や品種改良は細胞に与える作用を利用している。
私たちは、ふだんから宇宙や大地、食物などに由来する放射線(自然放射線)を受けています。放射線の人体への影響は、受けた量(シーベルト)で考えます。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(エ)-㋐
問 1 半減期が 8 日の放射性同位体がある。24 日後に崩壊せずに残っている原子核の数は、はじめの何分の 1 か。
方針 半減期ごとに半分になる。24 日が半減期の何回ぶんかを数え、その回数だけ をかける。
- 半減期の回数は 回
- 1 回ごとに半分になるので、残る割合は
ここで間違えやすい 3 回ぶんだからといって や にしない。「半分の半分の半分」で、かけ算になる。
問 2 半減期が 30 年の放射性同位体がある。崩壊せずに残っている原子核の数が、はじめの になるのは何年後か。
120 年後
方針 が を何回かけた値かを調べる。その回数に半減期をかければ、かかる時間になる。
- なので、半減期 4 回ぶん
- かかる時間は 年
ここで間違えやすい としない。16 は「2 を 4 回かけた数」で、半減期の回数は 4 である。
問 3 ある放射性物質の放射能の強さを測ると、 であった。この放射性物質にふくまれる放射性同位体の半減期は 5 日である。20 日後の放射能の強さは何 か。放射能の強さは、残っている放射性同位体の原子核の数に比例するものとする。
方針 放射能の強さは残っている原子核の数に比例するので、原子核の数と同じように、半減期ごとに半分になる。20 日が半減期の何回ぶんかを数える。
- 半減期の回数は 回
- 残る割合は
- 20 日後の放射能の強さは
- 有効数字 2 桁で表すと