物理学が拓く世界
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理基礎 (2) ア (オ) ㋐「この科目で学んだ事柄が,日常生活や社会を支えている科学技術と結び付いていることを理解すること。」。
0. どういうまとまりか
物理基礎で学んだ法則は、教科書の中だけのものではありません。交通、医療、情報通信、建築、防災など、身のまわりの技術はどれも、ここまでに学んだ原理の上に成り立っています。
このノートでは新しい公式は出てきません。「この技術は、どの単元のどの法則を使っているか」を結びつけることが目的です。
学習指導要領の解説が挙げている分野に沿って、物理基礎の範囲で説明できる例を選んであります。
| 分野 | 技術の例 | 使われている物理基礎の内容 |
|---|---|---|
| 交通 | ブレーキと止まるまでの距離、ブレーキで発電する電車や自動車 | 運動エネルギーと仕事、エネルギーの変換 |
| 重い物を動かす | クレーンの滑車 | 仕事の原理 |
| 医療 | 超音波検査、X 線撮影、放射線による治療 | 波の反射、放射線の透過力と細胞への作用 |
| 情報通信 | 携帯電話、光ファイバー、人工衛星による位置の測定 | 電磁波、速さと時間と距離の関係 |
| 建築・防災 | 地震に備えた建物の設計 | 共振と固有振動数 |
| 空調・エネルギー | エアコンや冷蔵庫(ヒートポンプ)、高い電圧での送電 | 熱の移動と仕事、電流による発熱 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 技術の名前だけでなく、もとになる法則を言えるようにする。「超音波検査は波の反射」のように対で覚える
- 同じ法則が、まったく違う分野で使われている。波の反射は医療の検査にも、魚群探知機にも使われる
- エネルギーを「つくる」技術は無い。どの技術も、エネルギーを別の形に変えるか、別の場所へ移している
MRI やレーザー、人工知能のように、発展科目「物理」やその先の内容を土台にした技術も数多くあります。
1. 運動とエネルギーが支える技術
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(オ)-㋐
乗り物の安全や、重い物を動かす機械には、力学で学んだ仕事とエネルギーの考え方がそのまま使われています。
自動車の速さが 2 倍になると、ブレーキが効きはじめてから止まるまでの距離が約 4 倍になる。これは物理基礎のどの内容で説明できるか?
運動エネルギーが速さの 2 乗に比例すること(仕事と運動エネルギーの関係)
止まるまでに、ブレーキの力がする負の仕事で運動エネルギーをすべて失わせる。力が同じなら、必要な距離は運動エネルギーに比例する。
港や工事現場のクレーンは、滑車を組み合わせて、小さな力で重い物を持ち上げる。このとき代わりに何が増えているか? もとになる考え方は?
ロープを引く距離が長くなっている。もとになるのは仕事の原理
道具を使っても仕事の量は変わらない。動滑車 1 個なら、力は半分になり、引く距離は 2 倍になる。
電車やハイブリッド自動車の「ブレーキで発電するしくみ」は、どんなエネルギーの変換を利用しているか?
車体の運動エネルギーを、電気エネルギーに変えて回収している
減速するとき、車輪の回転でモーターを発電機としてはたらかせる。ふつうのブレーキでは摩擦で熱になって散らばるエネルギーを、電気として再び利用できる。
2. 波と電磁波が支える技術
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(オ)-㋐
音や電磁波は、「離れたところの様子を知る」「離れたところへ情報を送る」ために使われています。
医療の超音波検査で、体の中の様子が分かるのは、波のどんな性質を利用しているからか?
波の反射。体に当てた超音波が、臓器などの境目で反射して戻ってくることを利用する
超音波は、振動数が高くて人には聞こえない音波。戻ってくるまでの時間から、反射した場所までの距離が分かる。
携帯電話、テレビ放送、光ファイバーによる通信は、情報を何にのせて運んでいるか?
電磁波(電波や光)
電波も光も電磁波のなかまで、波長(振動数)が違う。電磁波は真空中でも伝わり、非常に速いので、遠くまで瞬時に情報を送ることができる。
人工衛星を使って地上の位置を測るしくみ(衛星測位)は、基本的に何を測って距離を求めているか?
人工衛星が出した電波が、受信機に届くまでにかかる時間
電波の速さは分かっているので、「距離 = 速さ × 時間」で衛星までの距離が求められる。複数の衛星からの距離を組み合わせて位置を決める。
地震に強い建物を設計するとき、建物の固有振動数に注意するのはなぜか?
地面の揺れの振動数が建物の固有振動数に近いと、共振して揺れが非常に大きくなるから
建物と地面の間に揺れを伝えにくくする装置を入れる免震構造などで、建物に伝わる揺れを小さくする。
3. 熱・電気・原子核が支える技術
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(オ)-㋐
エネルギーをむだなく使う技術や、医療の診断・治療にも、熱・電気・放射線で学んだことが使われています。
エアコンや冷蔵庫に使われているヒートポンプは、熱をどちらからどちらへ移す装置か? そのために何が必要か?
温度の低いほうから高いほうへ熱を移す装置。そのためには外から仕事(電気エネルギー)を加える必要がある
熱は、ひとりでには温度の高いほうから低いほうへしか移らない。逆向きに移すには仕事が要る。
発電所から電気を送るとき、電圧を非常に高くして送るのはなぜか?
同じ電力を送るとき、電圧を高くすると電流が小さくなり、送電線で熱になって失われるエネルギーが減るから
送電線にも抵抗があり、電流が流れると発熱する。交流は変圧器で電圧を簡単に変えられるので、送電に使われている。
医療では放射線を「X 線撮影」と「がんの治療」に使う。それぞれ放射線のどんな性質を利用しているか?
X 線撮影は、物質を通り抜ける力(透過力)が体の部分によって違うこと。がんの治療は、放射線が細胞をこわす作用
骨は X 線を通しにくいので、影になって写る。治療では、がんの細胞にねらいをしぼって放射線を当てる。