エネルギーの変換と保存
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理基礎 (2) ア (エ) ㋐「人類が利用可能な水力,化石燃料,原子力,太陽光などを源とするエネルギーの特性や利用などについて,物理学的な観点から理解すること。」。
0. どういうまとまりか
エネルギーには、力学的エネルギー、熱エネルギー、電気エネルギー、光エネルギー、化学エネルギー、核エネルギーなど、いろいろな形があります。
これらは互いに移り変わりますが、移り変わりの前後でエネルギーの総量は変わりません(エネルギー保存の法則)。
私たちは、自然の中にあるエネルギーを、運びやすく使いやすい電気エネルギーに変えて利用しています。
発電の方式は、「もとのエネルギーが何で、どんな順に形を変えて電気になるか」で整理できます。
| 発電の方式 | もとになるエネルギー | 電気になるまでの道すじ | 資源の性質 |
|---|---|---|---|
| 水力発電 | 高いところにある水の位置エネルギー | 位置エネルギーから水の運動エネルギーへ。水車(タービン)を回し、発電機で電気へ | くり返し使える(再生可能) |
| 火力発電 | 化石燃料の化学エネルギー | 燃やして熱エネルギーへ。水蒸気でタービンを回し、発電機で電気へ | 限りがある。二酸化炭素が出る |
| 原子力発電 | ウランなどの核エネルギー | 核分裂で熱エネルギーへ。水蒸気でタービンを回し、発電機で電気へ | 限りがある。放射性物質の管理が要る |
| 太陽光発電 | 太陽の光エネルギー | 太陽電池で、光から直接電気へ | くり返し使える(再生可能) |
| 風力発電 | 風(空気)の運動エネルギー | 風車を回し、発電機で電気へ | くり返し使える(再生可能) |
分かれ目は次の 3 つ。
- エネルギーは形を変えても、総量は変わらない。「使うと無くなる」のではなく、使いにくい形(散らばった熱)に変わる
- 火力発電と原子力発電は、熱で水蒸気をつくってタービンを回すところからは同じ。違うのは熱のつくり方(燃焼か核分裂か)
- 太陽光発電だけは、タービンも発電機も使わない。光エネルギーを直接、電気エネルギーに変える
各方式が発電量に占める割合は年ごとに変わるので、ここでは扱いません。新しい統計で確かめてください。
1. エネルギーの移り変わりと保存
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(エ)-㋐
エネルギーは、ほかの物体に仕事をする能力でした。形はいろいろあっても、どれもジュールで測れる同じ量で、互いに移り変わります。
エネルギーにはどんな種類があるか? 6 つ挙げよ。
力学的エネルギー、熱エネルギー、電気エネルギー、光エネルギー、化学エネルギー、核エネルギー
化学エネルギーは燃料や電池などの物質がたくわえているエネルギー、核エネルギーは原子核がたくわえているエネルギー。単位はどれもジュール()。
エネルギー保存の法則とは?
エネルギーがある形から別の形に移り変わっても、その総量は変わらないこと
力学的エネルギーだけを見ると摩擦で減るが、発生した熱まで含めて数えれば、全体の量は変わっていない。
モーターと発電機は、それぞれ何エネルギーを何エネルギーに変えるか?
モーターは電気エネルギーを力学的エネルギー(運動エネルギー)に、発電機は力学的エネルギーを電気エネルギーに変える
変換の向きがちょうど逆になっている。水力・火力・原子力・風力は、どれも最後に発電機を回して電気を取り出す。
エネルギーの総量は変わらないのに、「エネルギーを大切に使う」必要があるのはなぜか?
変換のたびに一部が熱になって周りに散らばり、その熱は集めて再び利用することが難しいから
無くなるのではなく、利用しにくい形になる。散らばった熱がひとりでに集まって、元の電気や運動のエネルギーに戻ることはない。
エネルギーの変換効率とは?
投入したエネルギーのうち、目的の形のエネルギーに変わった割合
例えば の光エネルギーから の電気エネルギーが得られれば、変換効率は 20 %。残りは主に熱になる。
2. 電気エネルギーへの変換
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(エ)-㋐
電気エネルギーは、送電線で遠くまで運べて、熱・光・動力のどれにも変えやすいエネルギーです。発電の方式ごとに、エネルギーが移り変わる順を言えるようにします。
水力発電で、エネルギーはどんな順に移り変わって電気になるか?
水の位置エネルギー、水の運動エネルギー、水車(タービン)の運動エネルギー、電気エネルギーの順
ダムなどの高いところにためた水を落とし、その勢いで水車を回して発電機を動かす。落差が大きく、水の量が多いほど、多くの電気が得られる。
火力発電で、エネルギーはどんな順に移り変わって電気になるか?
化石燃料の化学エネルギー、熱エネルギー、タービンの運動エネルギー、電気エネルギーの順
燃料を燃やした熱で水を高温・高圧の水蒸気にし、その水蒸気でタービンを回して発電機を動かす。
原子力発電で、エネルギーはどんな順に移り変わって電気になるか?
核エネルギー、熱エネルギー、タービンの運動エネルギー、電気エネルギーの順
ウランなどの原子核が核分裂するときに出る熱で水蒸気をつくる。水蒸気でタービンを回すところから先は、火力発電と同じ。
太陽光発電で、エネルギーはどう移り変わるか? ほかの発電の方式と違う点は?
太陽電池が、光エネルギーを直接、電気エネルギーに変える。タービンも発電機も使わない
得られる電気は直流なので、家庭や送電線で使うときは交流に変換する。
火力発電と原子力発電で、共通している点と違っている点は?
共通点は、熱で水蒸気をつくってタービンを回し、発電機で電気にすること。違いは熱のつくり方で、火力は燃料の燃焼、原子力は核分裂
火力発電は燃焼で二酸化炭素を出す。原子力発電は発電のときに二酸化炭素を出さないが、放射線を出す放射性物質を扱うので厳重な管理が要る。
3. エネルギー資源の性質
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(エ)-㋐
エネルギーのもとになる資源は、使えば減っていくものと、くり返し使えるものに分かれます。
化石燃料とは何か? エネルギー資源として使うときの課題は?
石炭・石油・天然ガスなど、大昔の生物がもとになってできた燃料。埋蔵量に限りがあり、燃やすと二酸化炭素が出る
化石燃料がたくわえている化学エネルギーは、もとをたどると、大昔の植物が光合成でとり入れた太陽の光エネルギーである。
再生可能エネルギーとは何か? 例を挙げよ。
自然の中でくり返し補われ、使ってもなくならないエネルギー。太陽光、風力、水力、地熱など
水力は、太陽の熱で蒸発した水が雨となって高いところに戻るので、くり返し使える。風も、太陽の熱による空気の動きである。
太陽光発電や風力発電を利用するときの課題は?
天候や時刻によって発電量が変わり、必要なときに必要な量を得にくいこと
発電した電気をためておく蓄電池と組み合わせるなどの工夫をして使う。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(エ)-㋐
問 1 ある水力発電所では、毎秒 の水が、高さ のところから発電機のある位置まで落ちる。水が失う重力による位置エネルギーの 80 % が電気エネルギーに変わるとすると、 あたりに得られる電気エネルギーは何 か。重力加速度の大きさを とする。
方針 の間に落ちる水が失う位置エネルギーを で出し、そのうち電気に変わる割合(0.80)をかける。
- の間に落ちる水の質量は
- この水が失う位置エネルギーは
- その 80 % が電気エネルギーになるので、
ここで間違えやすい 残りの 20 % は消えたのではない。水や機械の摩擦による熱、発電機を出たあとの水の運動エネルギーなどになっている。
問 2 面積 の太陽電池のパネルに、 あたり毎秒 の光エネルギーが当たっている。この太陽電池の変換効率を 20 % とすると、 あたりに得られる電気エネルギーは何 か。
方針 まずパネル全体が に受ける光エネルギーを出し、それに変換効率(0.20)をかける。
- パネル全体が に受ける光エネルギーは
- 変換効率は 20 % なので、得られる電気エネルギーは
- 有効数字 2 桁で表すと
問 3 ある火力発電所では、燃料を燃やして毎秒 の熱エネルギーを得て、毎秒 の電気エネルギーをつくっている。熱エネルギーから電気エネルギーへの変換効率は何 % か。また、電気にならなかったエネルギーは毎秒何 か。
変換効率は 40 %。電気にならなかったエネルギーは毎秒
方針 変換効率は「得られた電気エネルギー ÷ 投入した熱エネルギー」。電気にならなかったぶんは、エネルギー保存の法則から引き算で求められる。
- 変換効率は で、40 %
- エネルギーの総量は変わらないので、電気にならなかったぶんは
- このぶんは、主に熱として発電所の外(海水や大気)に出ていく
ここで間違えやすい 変換効率が 100 % でないことを、エネルギー保存の法則に反すると考えない。電気にならなかったぶんも、熱として数えれば合計は合っている。