交流と電磁波
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理基礎 (2) ア (ウ) ㋑「発電,送電及び電気の利用について,基本的な仕組みを理解すること。」。
0. どういうまとまりか
発電所の発電機がつくるのは、向きが周期的に入れかわる交流です。交流は変圧器で電圧を簡単に変えられるので、高い電圧にして送電し、使う場所の近くで電圧を下げています。
一方、電池や太陽電池がつくるのは、向きの変わらない直流です。電子機器の多くは直流で動くので、コンセントの交流を直流に変換して使っています。
電気の振動は電磁波として空間を伝わり、通信・加熱・医療など広く利用されています。
| 知りたいもの | 式・内容 | 補足 |
|---|---|---|
| 周波数と周期 | 周波数 、周期 | |
| 変圧器の電圧 | 電圧の比は巻数の比に等しい | |
| 理想的な変圧器の電力 | 電圧を上げると電流は小さくなる | |
| 送電線での電力の損失 | は送電線を流れる電流、 は送電線の抵抗 | |
| 電磁波の速さ | 、 | 真空中ではどの電磁波も同じ速さ |
分かれ目は次の 3 つ。
- 変圧器が電圧を変えられるのは交流だけ。直流ではコイルを貫く磁界が変化しないので、電圧が生じない
- 送電線での損失は で考える。送電電圧 を使って としない(送電電圧は送電線の両端にかかる電圧ではない)
- 電磁波は波長の長い順に、電波・赤外線・可視光線・紫外線・X 線・γ 線。波長が短いほど周波数は大きい
1. 発電と交流
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(ウ)-㋑
コイルの近くで磁石を動かすと、コイルに電圧が生じて電流が流れます(電磁誘導)。発電機はこれを連続して起こす装置です。
発電機は、どういう仕組みで電気をつくるか?
磁界の中でコイルを回転させる(またはコイルの近くで磁石を回転させる)と、コイルを貫く磁界が変化し、電磁誘導によってコイルに電圧が生じる
回転させる運動エネルギーが電気エネルギーに変わる。火力・水力・原子力・風力の発電所は、タービンや水車で発電機を回している点で共通している。
直流と交流の違いは? それぞれの電源の例を挙げよ。
直流は電流の向きが一定。交流は電流の向きと大きさが周期的に変わる。直流の例は乾電池・蓄電池・太陽電池、交流の例は発電所の発電機と家庭のコンセント
発電機のコイルが半回転するたびに電圧の向きが入れかわるので、発電機がつくる電気は交流になる。直流は DC、交流は AC と表す。
交流の周波数とは? 単位は? 周期 との関係は?
電流の向きと大きさの周期的な変化が、1 秒あたりに繰り返される回数(行って戻る 1 往復を 1 回と数える)。単位はヘルツ()。
波の振動数と周期の関係と同じ。向きが入れかわる回数は、1 往復に 2 回なので周波数の 2 倍になる。家庭用の交流の周波数は、東日本で 、西日本で 。
家庭用のコンセントの電圧「」は、交流の何という値か?
実効値(同じ抵抗につないだとき、同じ電力を消費する直流の電圧に置きかえた値)
交流の電圧は時々刻々変わり、最大値は より大きい。実効値を使えば、電力の式 を直流と同じように使える。
2. 変圧と送電
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(ウ)-㋑
発電所から家庭までの長い送電線にも抵抗があり、電流が流れるとジュール熱が発生してエネルギーが失われます。この損失を減らす工夫が高電圧での送電です。
変圧器とは? 一次コイルと二次コイルの電圧 、 と、巻数 、 の関係は?
共通の鉄心に 2 つのコイルを巻き、交流の電圧を変える装置。(電圧の比は巻数の比に等しい)
電源につなぐ側が一次コイル、電気を取り出す側が二次コイル。巻数の多い側の電圧が高い。
変圧器は直流の電圧を変えられるか? それはなぜか?
変えられない。直流では一次コイルがつくる磁界が変化せず、二次コイルに電磁誘導が起こらないから
交流は電流が絶えず変化するので、鉄心の中の磁界も絶えず変化し、二次コイルに交流の電圧が生じる。送電に交流が使われる理由の一つ。
変圧器でエネルギーの損失がないとき、一次側と二次側の電力の関係は? 電圧を高くすると電流はどうなるか?
電力は等しい()。電圧を高くすると、電流はその分だけ小さくなる
変圧器はエネルギーを増やす装置ではない。電圧を 10 倍にすると、電流は 倍になる。
発電所から電気を送るとき、電圧を高くして送るのはなぜか?
同じ電力を送るとき、電圧を高くすると電流が小さくなり、送電線で発生するジュール熱による損失 が小さくなるから
送る電力は なので、 を大きくすれば は小さくてすむ。損失は電流の 2 乗に比例するので、電圧を 10 倍にすると損失は 倍になる。
送電線での電力の損失を、送電電圧 と送電線の抵抗 から と計算してはいけないのはなぜか?
送電電圧 は送電線の両端にかかっている電圧ではないから。損失は、送電線を流れる電流 を先に求めて で計算する
送電電圧の大部分は、送電線の先にある変電所や家庭の側にかかる。送電線自身にかかる電圧は だけ。
3. 交流から直流への変換
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(ウ)-㋑
家庭に届くのは交流ですが、パソコンやスマートフォンなどの電子機器は直流で動きます。
整流とは? 何を使って行うか?
交流を直流に変換すること。一方向にだけ電流を流す性質をもつダイオード(半導体でできた素子)を使う
AC アダプターや充電器は、変圧器などで電圧を下げ、整流して直流にしている。逆に、太陽電池や蓄電池の直流を交流に変換して使うこともある。
4. 電磁波
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(ウ)-㋑
電気と磁気の振動が波として空間を伝わるのが電磁波です。光も電磁波の一種で、波長の違いによって呼び名と性質が変わります。
| 種類(波長の長い順) | 主な利用 |
|---|---|
| 電波 | ラジオ・テレビの放送、携帯電話、無線 LAN、電子レンジ(マイクロ波)、GPS |
| 赤外線 | リモコン、赤外線カメラ(サーモグラフィー)、暖房器具 |
| 可視光線 | 目に見える光。照明、光通信 |
| 紫外線 | 殺菌、蛍光灯の発光 |
| X 線 | X 線撮影(レントゲン)、空港の手荷物検査 |
| γ 線 | がんの放射線治療、医療器具の滅菌 |
電磁波とは? 真空中の速さは?
電界と磁界の振動が、波として空間を伝わるもの。真空中でも伝わり、速さは約 (光の速さ)
音波と違って、伝えるための物質(媒質)が要らない。速さ 、周波数 、波長 の間には、波の基本式と同じ が成り立つ。
電磁波を、波長の長いものから順に 6 種類挙げよ。
電波、赤外線、可視光線、紫外線、X 線、γ 線
真空中の速さはどれも同じなので、波長が短いものほど周波数は大きい。目に見えるのは可視光線だけで、赤い光の外側が赤外線、紫の光の外側が紫外線。
赤外線と紫外線は、それぞれどんな性質があり、何に利用されるか?
赤外線は物体を温めるはたらきが強く、リモコン・赤外線カメラ・暖房器具に利用される。紫外線は化学変化を起こすはたらきが強く、殺菌などに利用される
赤外線は可視光線より波長が長く、紫外線は可視光線より波長が短い。日焼けを起こすのは紫外線。
X 線と γ 線は、それぞれどんな性質があり、何に利用されるか?
どちらも波長が非常に短く、物質を透過しやすい。X 線は X 線撮影(レントゲン)や手荷物検査に、γ 線はがんの放射線治療や医療器具の滅菌に利用される
γ 線は原子核から出る電磁波で、放射線の一種。透過しやすい分、人体への影響もあるので、使う量を管理して利用する。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物基-(2)-ア-(ウ)-㋑
問 1 一次コイルの巻数が 500 回、二次コイルの巻数が 50 回の変圧器がある。一次コイルに の交流電圧をかけた。(1) 二次コイルに生じる電圧を求めよ。(2) 二次コイルに の電流が流れているとき、一次コイルを流れる電流を求めよ。変圧器でのエネルギーの損失はないものとする。
(1) (2)
方針 電圧は巻数の比 から求める。電流は、損失がなければ一次側と二次側の電力が等しいこと()から求める。
- (1) から、
- 巻数の比は なので、二次コイルの電圧は
- (2) 二次側の電力は、
- 一次側の電力も なので、
- 両辺を 100 で割ると、
ここで間違えやすい 電流も巻数の比のとおりに 倍になる、としてしまうこと。電圧が 倍になった二次側のほうが、電流は 10 倍大きい。
問 2 発電所から の電力を、抵抗が合わせて の送電線で送る。送電電圧が (1) のときと、(2) のときについて、送電線で失われる電力をそれぞれ求めよ。
(1) (2)
方針 送る電力は なので、まず送電線を流れる電流 を求める。送電線での損失は、その電流を使って で計算する。
- (1) 送電線を流れる電流は、
- 損失は なので、 で
- (2) 送電線を流れる電流は、
- 損失は、
- 確かめ: 電圧を 10 倍にしたので電流は 倍、損失は 倍になるはず。 で合っている
ここで間違えやすい 損失を で計算すること。(1) で とすると になり、送っている電力より大きくなってしまう。
問 3 周波数 の交流について、(1) 周期を求めよ。(2) 電流の向きは 1 秒間に何回入れかわるか。
(1) (2) 100 回
方針 周期は周波数の逆数()。交流は 1 周期の間に、向きが「行き」と「帰り」の 2 回入れかわることを使う。
- (1) を について解くと、
- (2) 1 秒間に 50 回の周期が繰り返される
- 1 周期の間に向きは 2 回入れかわるので、 回
ここで間違えやすい (2) を 50 回と答えてしまうこと。 は「1 秒間に 50 往復」という意味で、向きが変わる回数はその 2 倍。
問 4 周波数 の電波の、真空中での波長を求めよ。電磁波の速さを とする。
方針 電磁波にも波の基本式 が成り立つ。これを波長 について解いて数を入れる。10 の累乗は、数の部分と分けて計算する。
- の両辺を で割ると、
- 数の部分は 、10 の累乗の部分は