力の合成と分解
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理基礎 (1) ア (イ) ㋑「物体に働く力のつり合いを理解すること。」。内容の取扱いは、平面内で働く力のつり合いを中心に扱うこととしています。
0. どういうまとまりか
1 つの物体がいくつもの力を受けているとき、それらと同じ働きをする 1 つの力にまとめることを力の合成、まとめた力を合力といいます。
逆に、1 つの力を、同じ働きをする 2 つの力に分けることを力の分解、分けた力を分力といいます。
力は向きをもつ量(ベクトル)なので、大きさをそのまま足したり引いたりはできません。
そこで、直角に交わる 2 つの方向( 軸と 軸)に分解して、方向ごとに足し算をします。これが、平面内のつり合いを式にするための道具です。
| すること | やり方 |
|---|---|
| 合成(向きの違う 2 力) | 2 力を 2 辺とする平行四辺形の対角線が合力(平行四辺形の法則) |
| 分解 | 分ける 2 方向を先に決め、もとの力が対角線になる平行四辺形(直角なら長方形)をかく |
| 成分 | 軸の正の向きから角 の向きの力 は、、 |
| 成分から合力 | 成分ごとに足す。大きさは |
| 斜面上の重力(傾き ) | 斜面に平行な成分 、斜面に垂直な成分 |
使う三角比は次の 3 つの角だけです。
数値にするときは 、 を使います。
分かれ目は次の 3 つ。
- 力の大きさは、そのままでは足せない。足してよいのは、同じ向き(一直線上)の力か、同じ軸の成分どうしだけ
- と のどちらを掛けるかは、角をどこから測ったかで決まる。角をはさむ側の軸の成分が
- 斜面上の重力は、斜面に平行な成分が 。水平面のときと ・ が入れ替わって見える
1. 力の合成
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋑
2 つの力を 1 つにまとめるとき、向きが同じか違うかで足し方が変わります。
力の合成とは? 合力とは?
1 つの物体が受ける複数の力を、それらと同じ働きをする 1 つの力にまとめること。まとめた力が合力
合成できるのは、同じ 1 つの物体が受けている力どうしだけ。別々の物体が受ける力は合成しない。
一直線上にある 2 力の合力は、どう求めるか? 同じ向きのときと逆向きのときで答えよ。
同じ向きなら、大きさは 2 力の和で、向きは 2 力と同じ。逆向きなら、大きさは 2 力の差で、向きは大きいほうの力と同じ
一方の向きを正と決めて、逆向きの力に負の符号を付けて足す、と考えれば 1 つの計算になる。
平行四辺形の法則とは?
向きの違う 2 力の合力は、2 力の矢印を隣り合う 2 辺とする平行四辺形の対角線で表される
2 力の作用点をそろえてかき、その作用点から出る対角線が合力。対角線の長さが大きさ、向きが合力の向き。
互いに垂直な 2 力 、 の合力の大きさは?
平行四辺形が長方形になるので、対角線の長さは三平方の定理で求められる。 ではない。
大きさ 、 の 2 力()の合力の大きさは、2 力のなす角によって、どの範囲の値をとるか?
以上、 以下
同じ向きのとき最大で和、逆向きのとき最小で差。例えば と の合力は、 から の間になる。
2. 力の分解と成分
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋑
分解は合成の逆です。直角に交わる 2 方向に分けておくと、力を数(成分)として足し引きできるようになります。
力の分解とは? 分力とは?
1 つの力を、それと同じ働きをする 2 つの力に分けること。分けた力が分力
分ける 2 つの方向を先に決めれば、分け方は 1 通りに決まる。ふつうは互いに垂直な 2 方向に分ける。
軸の正の向きから角 だけ 軸の正の側へ傾いた向きの力(大きさ )の、 成分と 成分は?
、
力の矢印を斜辺とする直角三角形を考える。角 をはさむ辺( 軸に沿う辺)が 、向かい合う辺が 。
角が 軸から測って与えられたとき、成分の と はどうなるか?
入れ替わる。 軸から角 の向きの力は、、
「 成分は 」と丸暗記しない。角をはさむ側の軸の成分が 、と覚える。
力の成分は、いつ負の値になるか?
分力の向きが、軸の負の向きを向いているとき
成分は、分力の大きさに向きを表す符号を付けたもの。例えば左向きを向く分力は、右向きを正とした 成分では負になる。
、 の値は? ではどうなるか?
、。 では入れ替わって 、
3 辺の比が の直角三角形から出る。 なので、 は約 。
、 の値は?
どちらも ()
3 辺の比が の直角二等辺三角形から出る。 なので、約 。
いくつかの力の合力を、成分を使って求める手順は?
① 各力を 成分と 成分に分ける ② 成分どうし、 成分どうしを足す ③ 合力の大きさは
力が 3 つ以上あっても同じ手順で求められる。平行四辺形を何度もかくより確実。
3. 斜面上の重力の分解
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋑
斜面の上の物体を考えるときは、水平と鉛直ではなく、斜面に平行な方向と垂直な方向に軸をとります。重力だけが軸から傾くので、重力を分解します。
水平から角 傾いた斜面の上に、質量 の物体がある。重力を斜面に平行な方向と垂直な方向に分解すると、それぞれの大きさは?
斜面に平行な成分は (斜面に沿って下向き)。斜面に垂直な成分は (斜面を押す向き)
重力の向き(鉛直)と斜面に垂直な方向とのなす角が、斜面の傾きの角 と等しくなる。そのため、垂直な成分が になる。
斜面上の重力の分解で、 と のどちらが斜面に平行な成分か迷ったときの確かめ方は?
(水平な面)にしてみる。滑らせる成分は 0 になるはずなので、 で 0 になる のほうが斜面に平行な成分
のとき、斜面に垂直な成分は で、重力がそのまま面を押す。つじつまが合う。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋑
数値にするときは 、 を使い、重力加速度の大きさは とします。
問 1 1 つの物体が、東向きに 、北向きに の 2 つの力を受けている。合力の大きさを求めよ。
方針 東向きと北向きは互いに垂直なので、平行四辺形は長方形になる。合力はその対角線で、大きさは三平方の定理で求められる。
- 2 力は垂直なので、合力の大きさは
- 数値を入れると
- 向きは、東から北のほうへ傾いた向き(長方形の対角線の向き)になる。
ここで間違えやすい 大きさをそのまま足して としてしまうこと。足してよいのは同じ向きの力だけである。
問 2 大きさ の力が、 軸の正の向きから だけ 軸の正の側へ傾いた向きに働いている。この力の 成分と 成分を求めよ。
成分 、 成分
方針 角が 軸から測られているので、 成分が 、 成分が になる。、 に を入れる。
- 成分は 。 は なので、
- を使うと 。有効数字 2 桁で
- 成分は 。 は なので、
ここで間違えやすい の と を逆にすること。 は 軸に近い向きなので、 成分のほうが大きくなるはず、と確かめる。
問 3 水平から 傾いた斜面の上に、質量 の物体がある。物体が受ける重力を、斜面に平行な方向と垂直な方向に分解し、それぞれの成分の大きさを求めよ。
斜面に平行な成分 、斜面に垂直な成分
方針 まず重力の大きさ を出す。斜面の傾きが のとき、斜面に平行な成分は 、垂直な成分は 。
- 重力の大きさは
- 斜面に平行な成分は 。 は なので、
- 斜面に垂直な成分は 。 は なので、
- を使うと 。有効数字 2 桁で
ここで間違えやすい 斜面に平行な成分を にしてしまうこと。傾きを にすると滑らせる成分は 0 になるので、平行な成分は である。
問 4 1 つの物体が 2 つの力を受けている。力 A は大きさ で 軸の正の向き、力 B は大きさ で 軸の正の向きから だけ 軸の正の側へ傾いた向きである。合力の 成分、 成分、大きさを求めよ。
成分 、 成分 、大きさ
方針 向きの違う力は大きさを足せないので、成分に分けてから成分ごとに足す。合力の大きさは、成分から三平方の定理で出す。
- 力 A は 軸の向きなので、 成分は 、 成分は
- 力 B の 成分は で、
- 力 B の 成分は で、。 を使うと
- 合力の 成分は
- 合力の 成分は 。有効数字 2 桁で
- 合力の大きさは
- を使うと 。有効数字 2 桁で
ここで間違えやすい 同じ大きさの 2 力だからと、合力を としてしまうこと。 になるのは 2 力が同じ向きのときだけである。
問 5 ある力が、 軸の正の向きから だけ 軸の正の側へ傾いた向きに働いていて、その 成分は である。この力の大きさと 成分を求めよ。
大きさ 、 成分
方針 を逆に使い、成分から力の大きさを求める。 では と が等しいので、 成分と 成分は同じ大きさになる。
- で、 は なので、
- 両辺に を掛けると
- を使うと 。有効数字 2 桁で
- 成分は 。 も なので、 成分と同じ
ここで間違えやすい 力の大きさを、成分より小さい値にしてしまうこと( を で割る)。もとの力は直角三角形の斜辺なので、必ず成分より大きい。