力のつり合い
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理基礎 (1) ア (イ) ㋑「物体に働く力のつり合いを理解すること。」。内容の取扱いは、平面内で働く力のつり合いを中心に扱うこととしています。
0. どういうまとまりか
1 つの物体がいくつかの力を受けていて、それらの合力が 0 のとき、力はつり合っているといいます。静止している物体が受ける力は、必ずつり合っています。
これを式にすると、まだ分かっていない力(垂直抗力・張力・静止摩擦力)の大きさが求められます。
やることはいつも同じです。物体を 1 つ決め、受ける力を全部挙げ、軸を 2 本とって分解し、軸ごとに「正の向きの力の和 = 負の向きの力の和」と書きます。
| 力の数 | つり合いの条件 |
|---|---|
| 2 力 | 同じ作用線上にあり、向きが逆で、大きさが等しい |
| 3 力 | どの 2 力の合力も、残りの 1 力と向きが逆で大きさが等しい |
| いくつでも | 成分の和が 0、かつ 成分の和が 0 |
分かれ目は次の 3 つ。
- つり合いは「1 つの物体が受ける力」どうしの関係。別の物体が受ける力を式に混ぜない
- つり合いの 2 力と、作用・反作用の 2 力は別のもの。同じ物体が受けるか、別々の物体が受けるかで見分ける
- 軸は自由に選んでよい。斜面では、斜面に平行な方向と垂直な方向にとると、分解する力が重力だけで済む
1. つり合いの条件
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋑
つり合いの条件は「合力が 0」の 1 つだけです。力の数や向きによって、その言い表し方が変わります。
力がつり合っているとは、どういうことか?
1 つの物体が受けている力の合力が 0 であること
このとき、静止している物体は静止したままでいる。力を受けていないのではなく、受けている力が打ち消し合っている。
2 力がつり合う条件を 3 つ挙げると?
① 同じ作用線上にある ② 向きが逆 ③ 大きさが等しい
大きさが等しく逆向きでも、作用線がずれていると物体は回り出す。
3 力がつり合う条件は?
3 力のうちどの 2 力の合力も、残りの 1 力と同じ作用線上にあり、向きが逆で、大きさが等しい
2 力を合成して 1 つにまとめれば、2 力のつり合いに帰着する。
平面内でいくつかの力がつり合う条件を、成分で書くと?
成分の和が 0、かつ 成分の和が 0
式は 2 本できる。実際には、軸ごとに「正の向きの力の大きさの和 = 負の向きの力の大きさの和」と書くと符号で間違えにくい。
3 つの力がつり合っているとき、3 つの力の矢印を、向きを保ったまま順につなぐとどうなるか?
出発点に戻る(閉じた三角形になる)
矢印をつないで出発点に戻ることが、合力が 0 であることを表している。三角形の辺の比から、力の大きさの比が分かる。
2. つり合いの式の立て方
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋑
式を立てる前の準備で、ほとんどが決まります。力を数え落とさないことと、軸をうまく選ぶことです。
つり合いの式を立てる手順は?
① 注目する物体を 1 つ決める ② その物体が受ける力を全部挙げる ③ 垂直な 2 本の軸を決める ④ 軸から傾いた力を分解する ⑤ 軸ごとにつり合いの式を書く
分からない力の大きさは、 や などの文字でおいて式に入れる。式は軸ごとに 1 本ずつ、合わせて 2 本できる。
つり合いの式を立てるとき、軸はどう選ぶとよいか?
なるべく多くの力が軸の方向を向くように選ぶ。水平面なら水平と鉛直、斜面なら斜面に平行な方向と垂直な方向
軸の方向を向いた力は分解しなくて済む。斜面で水平・鉛直に軸をとると、垂直抗力や摩擦力まで分解することになる。
向きを仮定して文字でおいた力が、つり合いの式を解いたら負の値になった。何を意味するか?
実際の向きが、仮定した向きと逆である
大きさはその値の絶対値。静止摩擦力のように、向きが見た目で決めにくい力で起こる。
3. よく出る場面
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋑
斜面の上の物体と、糸でつるした物体が、つり合いの式を立てる代表的な場面です。どちらも、受ける力は 3 つです。
水平から角 傾いたなめらかな斜面の上で、質量 の物体を、斜面に平行な糸で引いて静止させている。張力 と垂直抗力 は?
、
受ける力は重力・垂直抗力・張力の 3 つ。重力を分解すると、斜面に平行な方向は張力と が、垂直な方向は垂直抗力と がつり合う。
水平から角 傾いた粗い斜面の上で、質量 の物体が静止している。静止摩擦力の大きさと向き、垂直抗力の大きさは?
静止摩擦力は で、斜面に沿って上向き。垂直抗力は
静止摩擦力は、重力の斜面に平行な成分とつり合う。 ではない( になるのは滑り出す直前だけ)。
質量 のおもりを、2 本の軽い糸で左右対称につるして静止させた。糸が鉛直となす角がどちらも のとき、張力の大きさ を求める式は?
鉛直方向のつり合い から、
張力の水平成分は左右で打ち消し合う。糸が水平に近い( が大きい)ほど が小さくなり、張力は大きくなる。
4. つり合いと作用・反作用の見分け方
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋑
「向きが逆で大きさが等しい 2 力」には、つり合いの 2 力のほかに、作用・反作用の 2 力があります。似ていますが別のものです。
作用・反作用の法則そのものは、次のフォルダ「03 運動の法則」で扱います。ここでは見分け方だけを押さえます。
つり合いの 2 力と、作用・反作用の 2 力は、どこで見分けるか?
力を受ける物体で見分ける。つり合いの 2 力は、同じ 1 つの物体が受ける。作用・反作用の 2 力は、別々の物体が 1 つずつ受ける
作用・反作用は「A が B から受ける力」と「B が A から受ける力」の組。受ける物体が違うので、合成することも、打ち消し合うこともない。
水平な机の上に本が静止している。「本が受ける重力」とつり合っている力は何か? 「本が受ける垂直抗力」と作用・反作用の関係にある力は何か?
重力とつり合うのは、本が机から受ける垂直抗力。垂直抗力と作用・反作用の関係にあるのは、机が本から受ける(本が机を押す)力
重力と垂直抗力は、どちらも本が受ける力なので、つり合いの 2 力である。作用・反作用の 2 力ではない。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(イ)-㋑
重力加速度の大きさは とし、数値にするときは 、 を使います。糸はすべて軽いものとします。
問 1 天井から糸でつるした質量 のおもりを、水平な向きに力を加えて引いたところ、糸が鉛直から 傾いた状態で静止した。糸の張力の大きさと、水平に引く力の大きさを求めよ。
張力 、水平に引く力
方針 おもりが受ける力は、重力・張力・水平に引く力の 3 つ。水平と鉛直に軸をとると、傾いているのは張力だけなので、張力を分解して軸ごとにつり合いの式を書く。
- 張力の大きさを 、水平に引く力の大きさを とする。重力の大きさは
- 張力は鉛直から 傾いているので、鉛直成分は 、水平成分は 。どちらも
- 鉛直方向のつり合いは、上向きの張力の鉛直成分と下向きの重力で、
- 両辺に を掛けると 。 を使うと 。有効数字 2 桁で
- 水平方向のつり合いは、引く力と張力の水平成分で、
- 手順 3 から は なので、 は
ここで間違えやすい 角が「鉛直から」測られていること。鉛直成分が 、水平成分が になる( では値が同じなので、この問題では結果は変わらない)。
問 2 質量 のおもりを、2 本の糸で天井から左右対称につるして静止させた。2 本の糸は、どちらも鉛直と の角をなしている。糸 1 本の張力の大きさを求めよ。
方針 おもりが受ける力は、重力と 2 本の糸の張力の 3 つ。左右対称なので 2 本の張力は同じ大きさで、水平成分は打ち消し合う。鉛直方向のつり合いだけで張力が決まる。
- 張力の大きさを とする。重力の大きさは
- 糸は鉛直と をなすので、張力 1 本の鉛直成分は 。 は なので、
- 鉛直方向のつり合いは、上向きの鉛直成分 2 本ぶんと下向きの重力で、
- 左辺をまとめると なので、張力は 。有効数字 2 桁で
ここで間違えやすい 2 本で支えているから 1 本あたりは重さの半分、としてしまうこと。半分になるのは糸が鉛直のときだけで、糸が傾くほど張力は大きくなる。この問題では、1 本の張力がおもりの重さと同じになる。
問 3 質量 のおもりを、糸 A と糸 B の 2 本で天井からつるして静止させた。糸 A は鉛直と 、糸 B は反対側に鉛直と の角をなしている。糸 A、糸 B の張力の大きさをそれぞれ求めよ。
糸 A は 、糸 B は
方針 おもりが受ける力は、重力と 2 本の張力の 3 つ。水平と鉛直に軸をとり、2 本の張力をそれぞれ分解する。水平方向と鉛直方向のつり合いの式が 1 本ずつでき、未知の張力 2 つが決まる。
- 糸 A、糸 B の張力の大きさを 、 とする。重力の大きさは
- 角は鉛直から測っているので、鉛直成分が 、水平成分が 。糸 A は鉛直成分 、水平成分
- 同じように、糸 B は鉛直成分 、水平成分
- 水平方向のつり合いは、2 本の水平成分が逆向きで等しいことから、。よって
- 鉛直方向のつり合いは、上向きの鉛直成分の和と下向きの重力で、
- 手順 4 の を代入する。 は なので、
- 左辺をまとめると なので、 は
- に入れる。 を使うと 。有効数字 2 桁で
ここで間違えやすい 傾きの大きい糸のほうが張力も大きい、と決めつけること。鉛直に近い糸 A のほうが、おもりの重さを多く支えている。
問 4 水平から 傾いたなめらかな斜面の上に質量 の物体を置き、斜面に平行な糸で斜面の上のほうへ引いて静止させた。糸の張力の大きさと、垂直抗力の大きさを求めよ。
張力 、垂直抗力
方針 物体が受ける力は、重力・垂直抗力・張力の 3 つ(なめらかな面なので摩擦力は無い)。斜面に平行な方向と垂直な方向に軸をとると、傾いているのは重力だけになるので、重力を分解する。
- 重力の大きさは
- 重力の斜面に平行な成分は で、(斜面に沿って下向き)
- 重力の斜面に垂直な成分は で、(斜面を押す向き)
- 斜面に平行な方向のつり合いから、張力は平行な成分と等しく 。有効数字 2 桁で
- 斜面に垂直な方向のつり合いから、垂直抗力は垂直な成分と等しい。 を使うと 。有効数字 2 桁で
ここで間違えやすい 垂直抗力を の としてしまうこと。斜面の上では、垂直抗力は重力の一部(斜面に垂直な成分)としかつり合わない。
問 5 粗い水平面の上に置いた質量 の物体に糸をつけ、水平から 上向きに の力で引いたが、物体は静止したままだった。垂直抗力の大きさと、静止摩擦力の大きさを求めよ。
垂直抗力 、静止摩擦力
方針 物体が受ける力は、重力・垂直抗力・静止摩擦力・糸が引く力の 4 つ。水平と鉛直に軸をとり、傾いている「糸が引く力」を分解する。垂直抗力は鉛直方向の、静止摩擦力は水平方向のつり合いから決まる。
- 重力の大きさは
- 糸が引く力の鉛直成分は で、(上向き)
- 糸が引く力の水平成分は で、
- 鉛直方向のつり合いは、上向きの垂直抗力と糸の力の鉛直成分、下向きの重力で、。よって垂直抗力は
- 水平方向のつり合いから、静止摩擦力は糸の力の水平成分と等しい。 を使うと 。有効数字 2 桁で
ここで間違えやすい 垂直抗力を の としてしまうこと。斜め上に引くと、糸が物体を持ち上げるぶんだけ垂直抗力は小さくなる。静止摩擦力も ではなく、つり合いから決まる。