位置エネルギー
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理基礎 (1) ア (ウ) ㋐「運動エネルギーと位置エネルギーについて,仕事と関連付けて理解すること。」。
0. どういうまとまりか
高いところにある物体は、落ちるときに重力から仕事をされ、そのぶんほかの物体に仕事をすることができます。
伸ばしたり縮めたりしたばねにつながれた物体も、ばねが元に戻るときに弾性力から仕事をされます。
このように、物体が「その位置にあること」でもっているエネルギーを位置エネルギーといいます。
物理基礎で扱うのは、重力による位置エネルギーと弾性力による位置エネルギーの 2 つです。
| 重力による位置エネルギー | 弾性力による位置エネルギー | |
|---|---|---|
| 式 | ||
| 何で決まるか | 基準面からの高さ | ばねの自然の長さからの伸び(縮み) |
| 0 になるところ | 基準面(自分で決める) | 自然の長さのとき |
| 負になるか | 基準面より下では負 | ならない(伸びでも縮みでも正) |
| もとになる仕事 | 基準面まで下がる間に重力がする仕事 | 自然の長さに戻る間に弾性力がする仕事 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 重力による位置エネルギーは、基準面をどこにとるかで値が変わる。ただし 2 点の間の差は変わらない
- 弾性力による位置エネルギーの は、自然の長さからの伸び(縮み)。ばね全体の長さではない
- 位置エネルギーを考えられるのは、仕事が道すじによらない力(保存力)だけ。動摩擦力には位置エネルギーが無い
1. 重力による位置エネルギー
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(ウ)-㋐
高さ にある物体が基準面まで下がる間に、重力は の仕事をします。この「することのできる仕事」が、重力による位置エネルギーです。
質量 の物体が、基準面から高さ のところにあるときの、重力による位置エネルギー は?
は重力加速度の大きさ。物体が基準面まで下がる間に、重力がする仕事 に等しい。
重力による位置エネルギーを測る「基準面」は、どこにとるか?
どこにとってもよい(自分で決めて、問題の途中で変えない)
地面や床、物体のいちばん低い位置にとると計算が楽になることが多い。基準面では位置エネルギーが 0。
物体が基準面より だけ低いところにあるとき、重力による位置エネルギーは?
(負になる)
基準面まで上がる間に、重力は負の仕事 をする。位置エネルギーが負でも、おかしなことではない。
基準面のとり方を変えると、重力による位置エネルギーで変わるものと変わらないものは?
それぞれの点での値は変わるが、2 点の間の位置エネルギーの差は変わらない
差は高さの差だけで決まる。運動を決めるのは差なので、基準面はどこにとっても同じ結果になる。
物体を、力を加えてゆっくりと高さ だけ持ち上げた。加えた力がした仕事と、重力による位置エネルギーの変化の関係は?
加えた力がした仕事 のぶんだけ、重力による位置エネルギーが増える
ゆっくり持ち上げるので、加える力は重力とつり合う大きさ 。された仕事が位置エネルギーとして蓄えられる。
2. 弾性力による位置エネルギー
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(ウ)-㋐
伸びた(縮んだ)ばねは、自然の長さに戻るときに物体に仕事をします。ばねの弾性力は伸びに比例して変わるので、仕事は「力 × 距離」の単純な掛け算にはなりません。
ばね定数 のばねが、自然の長さから だけ伸びている(または縮んでいる)とき、ばねにつながれた物体がもつ弾性力による位置エネルギー は?
弾性エネルギーともいう。ばね定数の単位は 、 を で入れると単位は になる。
弾性力による位置エネルギーが でなく になるのはなぜか?
弾性力の大きさが 0 から まで伸びに比例して変わるので、仕事は三角形の面積 になるから
縦軸に力、横軸に伸びをとったグラフは原点を通る直線になる。その下の面積が仕事で、平均の力 に距離 をかけたものと同じ。
弾性力による位置エネルギーの式の は、何を表すか?
ばねの自然の長さからの伸び(または縮み)
ばね全体の長さではない。自然の長さが のばねが になっていれば、 は 。
ばねの伸びが 2 倍になると、弾性力による位置エネルギーは何倍になるか? 同じ長さだけ縮めた場合は、伸ばした場合と比べてどうか?
伸びが 2 倍なら 4 倍。同じ長さだけ縮めた場合は、伸ばした場合と同じ値
の 2 乗に比例するので、伸びでも縮みでも正の値になる。
3. 保存力と位置エネルギー
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(ウ)-㋐
重力や弾性力がする仕事は、物体が通った道すじによらず、はじめと終わりの位置だけで決まります。位置エネルギーを考えられるのは、このような力だけです。
保存力とは? 物理基礎で扱う例を 2 つ挙げよ。
力のする仕事が、途中の道すじによらず、はじめと終わりの位置だけで決まる力。重力と弾性力
位置だけで仕事が決まるので、「その位置にあることでもつエネルギー」として位置エネルギーを決められる。
動摩擦力や空気抵抗に、位置エネルギーを考えられないのはなぜか?
する仕事が道すじによって変わる(保存力ではない)から
同じ 2 点の間でも、遠回りするほど動摩擦力がする負の仕事は大きくなる。位置だけでは仕事が決まらない。
保存力がした仕事と、位置エネルギーの変化の関係は?
保存力がした仕事のぶんだけ、位置エネルギーが減る(保存力がした仕事 = 前の位置エネルギー − 後の位置エネルギー)
物体が 下がると重力は の仕事をし、位置エネルギーは 減る。上がるときは重力の仕事が負で、位置エネルギーは増える。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物基-(1)-ア-(ウ)-㋐
問 1 地面からの高さが の屋上がある。質量 の物体が、屋上からさらに 高いところにある。重力加速度の大きさを として、この物体の重力による位置エネルギーを、(1) 屋上を基準面にした場合、(2) 地面を基準面にした場合について求めよ。
(1) (2)
方針 の は基準面からの高さ。基準面を変えると が変わるので、それぞれの基準面から物体までの高さを先に出す。
- (1) 屋上からの高さは なので、
- (2) 地面からの高さは
ここで間違えやすい 基準面が変わると値が変わること自体は誤りではない。2 つの値の差 は、屋上と地面の高さの差 のぶん()になっている。
問 2 ばね定数 のばねを、自然の長さから 伸ばした。弾性力による位置エネルギーを求めよ。また、伸びを にすると何倍になるか。
。伸びが のときは 4 倍()
方針 に入れる。伸びの 2 乗に比例するので、伸びが 2 倍になれば 4 倍になるはずである。
- 伸び のとき、
- 伸び のとき、
- 比べると で、4 倍
問 3 軽いばねの上端を天井に固定し、下端に質量 のおもりをつるしたところ、ばねが自然の長さから 伸びて静止した。重力加速度の大きさを として、ばね定数と、このときの弾性力による位置エネルギーを求めよ。
ばね定数は 、弾性力による位置エネルギーは
方針 静止しているので、おもりにはたらく重力と弾性力がつり合っている。つり合いからばね定数を出し、 に入れる。
- おもりにはたらく重力の大きさは
- 弾性力の大きさは で、これが重力とつり合うので、
- 弾性力による位置エネルギーは
ここで間違えやすい 重力と弾性力のつり合い()と、位置エネルギー()を混ぜない。 としてしまうと になり、2 倍ずれる。
問 4 質量 の物体が、床からの高さ の位置から高さ の位置まで下がった。重力加速度の大きさを として、この間に重力がした仕事と、重力による位置エネルギーの変化を求めよ。
重力がした仕事は 、位置エネルギーの変化は ( 減った)
方針 重力の仕事は、下がった高さで決まる。位置エネルギーの変化は「後 − 前」で求め、重力がした仕事のぶんだけ減っていることを確かめる。
- 下がった高さは
- 重力は下向きで、物体も下向きに動くので、重力の仕事は正。
- 床を基準面とすると、前の位置エネルギーは 、後は
- 変化は「後 − 前」で 。重力がした仕事 のぶんだけ減っている
問 5 ばね定数 のばねが、自然の長さから 伸びている。この状態から、さらに引いて伸びを にするために、引く力がしなければならない仕事を求めよ。ばねはゆっくり伸ばすものとする。
方針 ゆっくり伸ばすとき、引く力がした仕事はそのまま弾性力による位置エネルギーの増加になる。前と後の位置エネルギーをそれぞれ出して、差をとる。
- 前(伸び )の位置エネルギーは
- 後(伸び )の位置エネルギーは
- 増加は 。これが引く力のした仕事
ここで間違えやすい 伸ばした長さ を式に入れて としない。 はいつも自然の長さから測る。