化政文化と庶民の生活
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「日本史探究」C (3) ア (イ) の、学問・思想の展開、庶民の生活と文化などを基に、幕藩体制の変容、近世の庶民の生活と文化の特色、近代化の基盤の形成を理解する事項に当たります。
18 世紀後半から 19 世紀前半、江戸を中心に、庶民が担い手にも受け手にもなった文化を扱います。
0. 何を押さえるか
文化・文政期(11 代家斉のころ、19 世紀前半)を中心とする化政文化は、江戸の町人が主な担い手で、出版や旅を通じて地方の庶民にまで広がりました。
身分の秩序の中にありながら、庶民が遊びや旅を楽しみ、社会や政治を笑いで皮肉る余裕を持ったことは、幕藩体制の変容を映しています。
| 分野 | 18 世紀後半(宝暦・天明期) | 19 世紀前半(化政期) |
|---|---|---|
| 浮世絵 | 鈴木春信が錦絵を始める、喜多川歌麿・東洲斎写楽 | 葛飾北斎「富嶽三十六景」、歌川広重「東海道五十三次」 |
| 小説 | 洒落本(山東京伝)、黄表紙(恋川春町)、読本(上田秋成) | 滑稽本(十返舎一九・式亭三馬)、人情本(為永春水)、読本(曲亭馬琴)、合巻 |
| 詩歌 | 俳諧(与謝蕪村)、川柳・狂歌 | 俳諧(小林一茶) |
| 芸能 | 歌舞伎の人気が高まる | 鶴屋南北の歌舞伎、寄席(落語・講談) |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 錦絵(多色刷りの版画)を始めたのは鈴木春信。浮世絵の祖とされる菱川師宣(元禄)とは別
- 滑稽本は笑いの会話文、読本は文章で読ませる伝奇小説。『東海道中膝栗毛』は滑稽本、『南総里見八犬伝』は読本
- 洒落本・黄表紙は寛政の改革、人情本・合巻は天保の改革で取り締まられた
1. 浮世絵と絵画
根拠: 学習指導要領 日本史探究-C-(3)-ア-(イ)
多色刷りの版画ができたことで、浮世絵は安く買える美しい絵として庶民に広まりました。
風景画は旅の流行とも結びつき、のちにヨーロッパの画家にも影響を与えます。
18 世紀半ばに鈴木春信が始めた、多色刷りの浮世絵版画を何という?
錦絵
色ごとに版木を分けて重ね刷りする技術で、華やかな絵を大量に刷れるようになった。
美人画の大首絵で知られる浮世絵師と、役者絵で知られる浮世絵師は?
美人画=喜多川歌麿、役者絵=東洲斎写楽
大首絵は人物の上半身を大きくえがく構図。
化政期に、風景を題材にした浮世絵を大成した 2 人とその代表作は?
葛飾北斎「富嶽三十六景」、歌川広重「東海道五十三次」
モネやゴッホなど、ヨーロッパの印象派・後期印象派の画家にも影響を与えた。
西洋画の遠近法を取り入れ、日本で初めて銅版画をつくった画家は?
司馬江漢
同じころ円山応挙は写生を重んじた画風を開き、池大雅・与謝蕪村は文人画を大成した。
2. 小説と詩歌
根拠: 学習指導要領 日本史探究-C-(3)-ア-(イ)
貸本屋が広まり、字の読める庶民が増えたことで、さまざまな種類の小説が大量に出版されました。
弥次郎兵衛と喜多八の東海道の旅をおもしろおかしく書いた滑稽本と、その作者は?
『東海道中膝栗毛』、十返舎一九
式亭三馬は銭湯を舞台にした『浮世風呂』で、庶民の会話をいきいきと写した。
勧善懲悪を軸にした長編の読本『南総里見八犬伝』の作者は?
曲亭馬琴(滝沢馬琴)
18 世紀後半には上田秋成が怪異小説の読本『雨月物語』を書いている。
信濃の農民の出身で、日々の暮らしや小さな生き物を素朴な句に詠んだ化政期の俳人は?
小林一茶
18 世紀後半の与謝蕪村は、絵画的な句で知られる。
世の中や政治を皮肉り笑う短詩で、五・七・五の形のものと、和歌の形のものをそれぞれ何という?
五・七・五=川柳、和歌の形=狂歌
川柳は柄井川柳が選んだ句から名がつき、狂歌では大田南畝(蜀山人)が知られる。
3. 旅と信仰
根拠: 学習指導要領 日本史探究-C-(3)-ア-(イ)
街道と宿場が整い、庶民も寺社参詣を名目に旅に出るようになりました。
村では、旅の費用を出し合う仲間がつくられました。
江戸時代、ほぼ 60 年ごとに大流行した、伊勢神宮への熱狂的な集団参詣を何という?
御蔭参り
1830 年の流行では数百万人が参ったとされる。奉公人や子どもまでが、主人や親の許しを得ずに参加することもあった。
伊勢講のように、村の人々が費用を積み立て、代表を選んで寺社に参詣させた仲間を何という?
講
旅は参詣のついでに名所をめぐる楽しみでもあり、名所図会などの案内書も出版された。
4. 都市の娯楽と庶民の生活
根拠: 学習指導要領 日本史探究-C-(3)-ア-(イ)
都市では寺社の境内や盛り場が娯楽の場になり、庶民の生活に年中行事や遊びが根づきました。
地方の暮らしを記録する人も現れます。
寺社がふだん見せない秘仏などを一般の人に見せる行事で、寺社の修理費を集める手段にもなったものは?
開帳
富くじを売る富突や、縁日の見世物も、寺社の境内に人を集めた。
化政期の江戸で、落語や講談などを聞かせる常設の場として増えた娯楽施設は?
寄席
歌舞伎では鶴屋南北が『東海道四谷怪談』など、庶民の生活をなまなましくえがく作品を書いた。
越後の雪国の暮らしや習俗を記録した『北越雪譜』の著者は?
鈴木牧之
地方の文化人が中央の文化に加わるとともに、地域の生活を書き留めるようになった。東北などを旅した菅江真澄の記録も知られる。