複素数の極形式
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学C (2) 平面上の曲線と複素数平面 ア (エ)「複素数平面と複素数の極形式,複素数の実数倍,和,差,積及び商の図形的な意味を理解すること。」。
0. どういうまとまりか
複素数平面の点は、横と縦の座標 のほかに、「原点からの距離 」と「実軸の正の部分からの角 」でも決まります。この と で複素数を書いたものが極形式です。
和と差は の形のほうが読みやすく、積と商は極形式のほうが読みやすくなります。掛け算は「距離を掛けて、角を足す」、割り算は「距離を割って、角を引く」だけになるからです。
| 絶対値 | 偏角 | 図形的な意味 | |
|---|---|---|---|
| 積 | (積) | (和) | 点 を原点のまわりに 回転し、原点からの距離を 倍 |
| 商 | (商) | (差) | 点 を原点のまわりに 回転し、原点からの距離を 倍 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 極形式は で、かっこの中が の形。 や は極形式ではないので、角を取り直す
- 積は絶対値を掛けて偏角を足す。偏角を掛けない
- を掛けると の回転。回転は「掛け算」、平行移動は「足し算」
1. 極形式と偏角
根拠: 学習指導要領 数学C-(2)-ア-(エ)
0 でない複素数 を表す点を P とします。、実軸の正の部分から OP まで測った角を とすると、、 です。
複素数の極形式とは?
0 でない複素数 を、()の形で表したもの。 は の絶対値、 は の偏角
。 は 、 から決める。
複素数 の偏角 とは? 1 つに決まるか?
実軸の正の部分から、原点と点 を結ぶ線分まで測った角。 の整数倍の違いを除いて決まる
偏角の 1 つを とすると ( は整数)。ふつうは か の範囲で 1 つ選ぶ。 の偏角は定めない。
を極形式で表すと?
絶対値は 。、 から 。
を極形式で表すと?
絶対値は 。点 は第 2 象限にあるので、偏角は 。 だけで決めると象限を取り違える。
は極形式か?
極形式ではない。極形式に直すと
かっこの中が「 + 」で、同じ角になっていなければ極形式ではない。、 を使って直す。
のとき、共役複素数 の絶対値と偏角は?
絶対値は のまま、偏角は
。実軸について折り返すので、角の向きだけが逆になる。
2. 積と商の極形式
根拠: 学習指導要領 数学C-(2)-ア-(エ)
、 とします。積を展開して三角関数の加法定理を使うと、角が足し算にまとまります。
複素数の積 の絶対値と偏角は?
絶対値は積、偏角は和。、
。偏角の等式は、 の整数倍の違いを除いて成り立つ。
積の偏角が和になることは、どう導くか?
を展開し、実部と虚部に加法定理を使う
実部は 、虚部は 。
複素数の商 の絶対値と偏角は?
絶対値は商、偏角は差。、
。特に は絶対値が 、偏角が 。偏角の等式は、積と同じく の整数倍の違いを除いて成り立つ。
3. 積の図形的な意味
根拠: 学習指導要領 数学C-(2)-ア-(エ)
絶対値が掛け算、偏角が足し算になるので、複素数を掛けることは「回転と拡大・縮小」を表します。
のとき、点 は点 をどう移した点か?
点 を原点のまわりに だけ回転し、原点からの距離を 倍した点
、。 なら回転だけになる。
、、 は、点 をそれぞれどう移した点か?
は原点のまわりに 回転、 は 回転、 は 回転した点
で、絶対値 1・偏角 。 なら 。
点 を原点のまわりに だけ回転した点を表す複素数は?
絶対値 1・偏角 の複素数 を掛ける。回転の角が なら を掛ける。
練習問題
問 1 次の複素数を極形式で表せ。偏角 は とする。(1) (2) (3)
(1) (2) (3)
方針 極形式 に直すには、2 つのものを順に求める。まず絶対値 (原点からの距離)、次に偏角 (実軸の正の部分から測った角)。 の偏角は 、 の両方を満たす角として決める。軸の上にある点は、図をかけば距離と角がすぐ読める。
- (1) 絶対値を出す。実部は 、虚部は なので、
- 偏角を出す。、
- が正で が負なので、 は第 4 象限の角。 では 、すなわち
- よって
- (2) は実部が 0、虚部が で、虚軸の負の部分にある。原点からの距離は 2 なので、
- 実軸の正の部分から虚軸の負の部分までは、反時計回りに 4 分の 3 回転。 なので、
- (3) は実軸の負の部分にある。原点からの距離は 3 なので、
- 実軸の正の部分から負の部分までは半回転。 なので、
ここで間違えやすい 絶対値は距離なので必ず正。(3) で絶対値を としない(マイナスは偏角 が引き受ける)。(1) は だけ見ると と区別がつかないので、 の符号も必ず見る。範囲が なので、 ではなく と答える。
問 2 、 のとき、 と を極形式で表せ。
、
方針 極形式で表した複素数の積は「絶対値は掛け算、偏角は足し算」、商は「絶対値は割り算、偏角は引き算」になる。だから、 の形のまま掛けたり割ったりせず、先に 、 をそれぞれ極形式に直す。
- の絶対値を出す。
- の偏角を出す。、 なので、。よって
- の絶対値を出す。
- の偏角を出す。、 なので、。よって
- 積の絶対値は、絶対値の積。
- 積の偏角は、偏角の和。通分して
- 商の絶対値は、絶対値の商。
- 商の偏角は、偏角の差。
ここで間違えやすい 偏角まで掛けたり割ったりしない。掛け算・割り算になるのは絶対値だけで、偏角は足し算・引き算になる。商の偏角は「分子の偏角 分母の偏角」の順に引く。
問 3 問 2 の を の形でも計算し、 の値を求めよ。
方針 同じ複素数 を 2 通りに表す。問 2 では極形式で と出た。こんどは の形で計算する。同じ数なので実部どうしが等しく、そこから が求まる。
- の分母を実数にするため、分母の共役複素数 を分母・分子に掛ける。
- 分母は、。 なので、分母は
- 分子を展開する。
- なので は になる。実部と虚部に分けると、分子は
- よって
- 一方、問 2 の極形式をかっこを外して書くと、実部は 、虚部は
- 実部どうしを比べて、
- 両辺を で割ると、
- 分母・分子に を掛けて有理化する。分子は 、分母は なので、
同じ数を 2 通りに表して比べると、三角関数の値が求まる。虚部どうしを比べれば、同じやり方で も出る。
問 4 とする。次の点を表す複素数を求めよ。(1) 点 を原点のまわりに だけ回転し、原点からの距離を 倍した点 (2) 点 を原点のまわりに だけ回転した点
(1) (2)
方針 複素数を掛けると、点は原点のまわりに回転し、原点からの距離が何倍かになる。「角 だけ回転して 倍」は、絶対値 ・偏角 の複素数 を掛けること。掛ける数を の形に直してから、ふつうに掛け算する。
- (1) 掛ける数は、絶対値 ・偏角 の複素数
- 、 なので、これは 、すなわち
- に掛けて展開する。
- なので は 。実部は 、虚部は で、
- (2) 回転だけなので、掛ける数は絶対値 1・偏角 の複素数 。値を入れると
- に掛けて展開する。
- なので は 。実部は 、虚部は で、
ここで間違えやすい (1) で 倍を忘れて だけを掛けると、回転しかしない。確かめとして、、(1) の答えの絶対値は で、2 乗がちょうど 2 倍(距離が 倍)になっている。
問 5 を極形式で表せ。偏角 は とする。
方針 極形式 の は絶対値なので、正でなければならない。前の数が のこの式は、形は似ていても極形式ではない。マイナスの符号を (絶対値 1・偏角 )という複素数とみて、積の偏角は和になることを使い、偏角のほうに移す。
- を と分け、 を極形式で書く。
- すると、もとの式は
- 積の絶対値は絶対値の積なので、
- 積の偏角は偏角の和なので、。これは に入っている。
- よって
- 確かめ。もとの式を の形に直すと 、すなわち 。実部も虚部も負で第 3 象限にあり、偏角 と合う。
ここで間違えやすい 絶対値 ・偏角 と読まない。 を掛けるのは原点のまわりの 回転(原点について対称な点に移すこと)なので、偏角に が足される。