ド・モアブルの定理
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学C (2) 平面上の曲線と複素数平面 ア (オ)「ド・モアブルの定理について理解すること。」。
0. どういうまとまりか
絶対値が 1 の複素数 を掛けると、点は原点のまわりに だけ回転します。同じ数を 回掛ければ 回転するので、 乗は角を 倍するだけです。これがド・モアブルの定理です。
この定理を逆向きに使うと、「 乗して になる数」( の 乗根)が求まります。答えは 個あり、円周を 等分する点に並びます。
| 使い方 | やること |
|---|---|
| 乗を計算する | 極形式に直し、絶対値を 乗、偏角を 倍する |
| を解く | と を極形式で表し、絶対値と偏角を比べる |
分かれ目は次の 3 つ。
- 乗では、絶対値は 乗、偏角は 倍。偏角を 乗しない
- で偏角を比べるときは、 を足す。足さないと解が 1 個しか出ない
- 解は の 個。 からは同じ点をくり返す
1. ド・モアブルの定理
根拠: 学習指導要領 数学C-(2)-ア-(オ)
積の偏角は和になるので、、3 乗なら と続きます。
ド・モアブルの定理とは?
が整数のとき、
は正の整数だけでなく、0 や負の整数でも成り立つ。
ド・モアブルの定理は、なぜ成り立つか?
を 1 回掛けるたびに、偏角が ずつ増え、絶対値は 1 のままだから
負の整数のときは、 を使えば同じように示せる。
のとき、( は整数)は?
絶対値は 乗、偏角は 倍。 の形のまま 回展開するより、ずっと速い。
を計算すると?
16
。絶対値は 、偏角は の 8 倍で 。。
を計算すると?
64
。絶対値は 、偏角は の 6 倍で 。
を計算すると?
絶対値は 、偏角は の 倍で 。。指数が負でも定理はそのまま使える。
2. 1 の 乗根
根拠: 学習指導要領 数学C-(2)-ア-(オ)
を正の整数とするとき、 を満たす複素数 を 1 の 乗根といいます。実数の範囲では 1 か しかありませんが、複素数の範囲では 個あります。
1 の 乗根を、極形式で表すと? 何個あるか?
()の 個
絶対値はすべて 1 で、偏角は ずつ増える。 のときが 。
1 の 乗根を表す点は、複素数平面でどう並ぶか?()
単位円(原点を中心とする半径 1 の円)の円周上にあり、点 1 を頂点の 1 つとする正 角形の頂点になる
絶対値が 1 なので単位円周上にあり、偏角が等しい間隔なので円周を 等分する。
1 の 3 乗根と 1 の 4 乗根は?
1 の 3 乗根は 、、。1 の 4 乗根は 、、、
3 乗根は偏角 0、、 で正三角形の頂点。4 乗根は偏角 0、、、 で正方形の頂点。
3. 方程式
根拠: 学習指導要領 数学C-(2)-ア-(オ)
1 以外の複素数の 乗根も、同じ方法で求まります。両辺を極形式で表して、絶対値どうし・偏角どうしを比べます。
方程式 は、どう解くか?
とおき、ド・モアブルの定理で左辺を として、 の極形式と絶対値・偏角を比べる
絶対値から ( なので は 1 つ)。偏角から ( は整数)。
で偏角を比べるとき、なぜ を足すのか?
偏角は の整数倍だけちがっても同じ点を表すから。足さないと 個ある解のうち 1 個しか出ない
から 。 で異なる 個の点になり、 で最初の点に戻る。
のとき、 の解( の 乗根)を表す点は、複素数平面でどう並ぶか?()
原点を中心とする半径 の円周上にあり、正 角形の頂点になる
絶対値がすべて等しく、偏角が ずつずれるから。1 の 乗根とちがい、点 1 が頂点になるとは限らない。
練習問題
問 1 次の式を計算せよ。(1) (2) (3)
(1) (2) (3)
方針 の形のまま 6 回、10 回と掛けるのは大変で間違えやすい。極形式に直せば、ド・モアブルの定理で「絶対値は 乗、偏角は 倍」とするだけで済む。どの小問も、極形式に直す(絶対値を出す・偏角を出す)、 乗する、 の形に戻す、の順に進める。
- (1) の絶対値を出す。
- 偏角を出す。、 なので、
- 6 乗する。絶対値は 、偏角は なので、
- 、 なので、値は
- (2) の絶対値を出す。
- 偏角を出す。、 なので、第 4 象限の角で
- 10 乗する。絶対値は 、偏角は
- なので、 と同じ向き。、 から、値は 、すなわち
- (3) の絶対値を出す。
- 偏角を出す。、 なので、
- ド・モアブルの定理は が負の整数でも成り立つ。 乗すると、絶対値は 、偏角は
- 、 なので、値は
ここで間違えやすい 乗するのは絶対値で、偏角は 倍する(偏角を 乗しない)。(2) の絶対値は を 10 乗するので、 ではなく 。偏角が を超えたり負になったりしたら、 の整数倍を足し引きして、見慣れた角に直してから値を読む。
問 2 方程式 を解け。
、、
方針 を極形式でおき、両辺を極形式で表して、絶対値どうし・偏角どうしを比べる。ド・モアブルの定理で左辺の 3 乗がすぐ書けるからである。偏角は の整数倍だけちがっても同じ点を表すので、比べるときに を足す。これで 3 個の解がすべて出る。
- ()とおく。ド・モアブルの定理から、左辺は
- 右辺 を極形式に直す。虚軸の正の部分にあり、原点からの距離は 8 なので、絶対値は 8、偏角は 。
- 絶対値を比べる。 で、 は正の実数なので、
- 偏角を比べる。 の整数倍のずれを入れて、( は整数)
- 両辺を 3 で割って、
- に入るものを、 を動かして拾う。 のとき
- のとき、
- のとき、
- にすると で、 と同じ点に戻る。だから解は の 3 個。
- に入れる。 のとき 、すなわち
- のとき 、すなわち
- のとき 、 なので 、すなわち
3 点は原点を中心とする半径 2 の円周上にあり、偏角が ずつずれているので、正三角形の頂点になる。
ここで間違えやすい を足さずに とすると、解が の 1 個しか出ない。三次方程式の解は 3 個ある。また、 も 3 で割るので、解の偏角は ずつではなく ずつずれる。
問 3 方程式 を解け。
、、、
方針 の形なので、両辺を極形式で表して、絶対値どうし・偏角どうしを比べる。右辺の は負の実数で、絶対値は 4、偏角は 。偏角を比べるときに を足して、4 個の解をすべて拾う。
- 右辺 を極形式に直す。実軸の負の部分にあり、原点からの距離は 4 なので、絶対値は 4、偏角は 。
- ()とおく。ド・モアブルの定理から、左辺は
- 絶対値を比べる。 で、 なので 。よって
- 偏角を比べる。 の整数倍のずれを入れて、( は整数)
- 両辺を 4 で割って、
- に入るものを、 を動かして拾う。 のとき 、 のとき
- のとき 、 のとき 。 にすると で最初の点に戻る。
- に入れる。 のとき 、すなわち
- 残りの 3 つは、 と の符号だけが変わる。 のとき 、 のとき 、 のとき
- 確かめ。 で、これは 。もう 1 回 2 乗すると で、 になる。
絶対値 でこの偏角の点は、複素数平面で順に 、、、。正方形の頂点になっている。
実数の範囲には解が無いが、複素数の範囲では 4 個ある。
ここで間違えやすい 右辺の絶対値を としない。絶対値は 4 で、マイナスは偏角 が引き受ける。偏角を 0 としてしまうと を解くことになる。また、 から や としない()。
問 4 1 の 6 乗根をすべて求めよ。
、、、、、
方針 1 の 6 乗根とは、方程式 の解のこと。 の形なので、両辺を極形式で表して絶対値と偏角を比べる。右辺の 1 は絶対値 1・偏角 0。偏角に を足して を動かせば、6 個がすべて出る。
- ()とおく。ド・モアブルの定理から、
- 右辺の 1 を極形式に直す。(絶対値 1・偏角 0)
- 絶対値を比べる。 で、 なので
- 偏角を比べる。 の整数倍のずれを入れて、( は整数)
- 両辺を 6 で割って、。 に入るのは の 6 個で、偏角は 0、、、、、
- よって解は ()。値を入れていく。 のとき 、 のとき で
- のとき 、 のとき
- のとき 、 のとき
単位円周上で、点 1 を頂点の 1 つとする正六角形の頂点になる。1 の 3 乗根()もこの中に入っている。
ここで間違えやすい 実数の範囲で考えて だけで終わらせない。複素数の範囲では 乗根は 個ある。 にすると偏角が になり、 の点 1 に戻るので、7 個目は無い。
問 5 のとき、 の値を求めよ。
0
方針 などの値は簡単には出ないので、5 つの項を 1 つずつ計算して足すことはしない。 の偏角が の 5 分の 1 であることから ( は 1 の 5 乗根)となる。求める式は、 を因数分解したときに出てくる式そのものである。
- ド・モアブルの定理で 5 乗する。偏角は になるので、
- 、 なので、。移項して、
- 左辺を因数分解する。 なので、
- の偏角 は 0 でないので、。つまり
- 積が 0 で前のかっこが 0 でないので、後ろのかっこが 0。
ここで間違えやすい 3. の因数分解は、右辺を展開すると途中の項がすべて打ち消し合って だけが残ることで確かめられる。 の確認を省かない。 なら前のかっこが 0 になり、後ろのかっこが 0 とは言えなくなる(実際、 のところを 1 にすると、和は で 0 にならない)。
図で見ると、1、、、 は正五角形の頂点で、その重心が原点にあることを表している。
問 6 を計算せよ。
方針 かっこの中を の形に直してから 12 乗するのは大変である。分子と分母をそれぞれ極形式に直せば、割り算は「絶対値は割り算、偏角は引き算」、12 乗は「絶対値は 12 乗、偏角は 12 倍」で済む。先に割り算、あとで 12 乗の順に進める。
- 分子 を極形式に直す。絶対値は 。、 なので、偏角は
- 分母 を極形式に直す。絶対値は 。、 なので、偏角は
- 商の絶対値は、絶対値の商。
- 商の偏角は、偏角の差。
- よってかっこの中は
- ド・モアブルの定理で 12 乗する。絶対値は 、偏角は
- で、、 なので、値は
ここで間違えやすい の三角関数の値を求める必要はない。12 倍すると になり、値の分かる角になる。絶対値は を 12 乗するので、 ではなく 。