複素数と図形
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学C (2) 平面上の曲線と複素数平面 ア (エ)「複素数平面と複素数の極形式,複素数の実数倍,和,差,積及び商の図形的な意味を理解すること。」。
0. どういうまとまりか
複素数平面では、点を 1 つの複素数で表せます。和・差・実数倍は平行移動と拡大・縮小、積・商は回転と拡大・縮小でした。この 2 つを組み合わせると、平面図形の性質を複素数の式で書けます。
分点や距離は「差と絶対値」で、角や回転は「商と偏角」で扱います。
| 図形の言葉 | 複素数の式 |
|---|---|
| 点 を中心とする半径 の円 | |
| 2 点 、 を結ぶ線分の垂直二等分線 | |
| 点 を点 のまわりに 回転した点 | |
| 角 | |
| 3 点 、、 が一直線上 | が実数 |
| 2 直線 AB、AC が垂直 | が純虚数 |
分かれ目は次の 3 つ。
- は点 と点 の距離。 は点 との距離で、点 1 との距離ではない
- 原点以外の点のまわりの回転は、「中心を原点に移す、回す、戻す」の 3 段。回す前に を引き、回したあとに を足す
- 角を調べるときは、頂点の複素数を引いてから割る。 ではなく
1. 分点と重心
根拠: 学習指導要領 数学C-(2)-ア-(エ)
複素数の和と実数倍は、実部・虚部ごとの計算でした。だから分点の公式は、座標平面の分点の公式やベクトルの分点の公式と同じ形になります。
複素数平面の 2 点 A、B について、線分 AB を に内分する点を表す複素数は? 中点は?
内分点は 。中点は
と は遠いほうの点に掛ける。、 を に内分する点は 。
線分 AB を に外分する点を表す複素数は?()
内分の公式で を に置きかえた形。 のとき外分点は無い。
3 点 A、B、C を頂点とする三角形 ABC の重心を表す複素数は?
3 つの頂点の平均。BC の中点 と A を結ぶ中線を に内分する点として導ける。
2. 方程式の表す図形
根拠: 学習指導要領 数学C-(2)-ア-(エ)
絶対値 は 2 点 、 の間の距離です。 についての絶対値の方程式は、「距離についての条件」と読めば、どんな図形かが分かります。
複素数平面で、方程式 ()を満たす点 の全体は、どんな図形か?
点 を中心とする半径 の円
点 からの距離が で一定の点の集まり。 は単位円、 は点 を中心とする半径 3 の円。
複素数平面で、方程式 ()を満たす点 の全体は、どんな図形か?
2 点 、 を結ぶ線分の垂直二等分線
2 点 、 から等しい距離にある点の集まり。 なら、原点と点 2 から等距離なので、点 1 を通り実軸に垂直な直線。
方程式 (、)を満たす点 の全体は、どんな図形か? どう求めるか?
円(アポロニウスの円)。両辺を 2 乗し、 で展開して の形に整理する
2 点からの距離の比が で一定の点の集まり。 とおいて 、 の方程式にしても求まる。 のときは垂直二等分線になる。
点 が単位円 の上を動くとき、点 はどんな図形を描くか? どう求めるか?
点 を中心とする半径 2 の円。 を の式で表して、 の条件に代入する
を に入れると 。2 倍で半径が 2 になり、 で中心が点 に平行移動する。
3. 点のまわりの回転
根拠: 学習指導要領 数学C-(2)-ア-(エ)
を掛ける回転は、原点のまわりの回転です。ほかの点のまわりに回すときは、その点を原点に移してから回し、もとに戻します。
点 を、点 のまわりに だけ回転した点 を表す複素数は?
と書くと覚えやすい。回転の前後で、点 からの距離は変わらない。
点 のまわりの回転の式は、どう考えて作るか?
点 が原点に移るように平行移動し( を引く)、原点のまわりに回転し( を掛ける)、もとに戻す( を足す)
に直接 を掛けると、原点のまわりの回転になってしまう。
4. 角と 3 点の位置関係
根拠: 学習指導要領 数学C-(2)-ア-(エ)
A、B、C を異なる 3 点とします。A を原点に移すと B は 、C は に移るので、その商を見れば「AB を AC に重ねるための回転と拡大」が分かります。
の偏角と絶対値は、図形的に何を表すか?
偏角は、半直線 AB から半直線 AC まで測った角 。絶対値は辺の比
商の偏角は偏角の差、商の絶対値は絶対値の商だから。角は向きをつけて測るので、負になることもある。
異なる 3 点 A、B、C が一直線上にある条件は?
が実数
偏角が 0 か になるとき。 となる実数 がある、と言っても同じ。
異なる 3 点 A、B、C について、2 直線 AB、AC が垂直である条件は?
が純虚数
偏角が か になるとき。純虚数は虚軸の上(原点を除く)にある。
の値から、三角形 ABC の形はどう分かるか? 値が のとき、 のときは?
絶対値で辺の比 、偏角で が分かる。 なら正三角形、 なら が直角の直角二等辺三角形
は絶対値 1・偏角 なので、 で 。 は絶対値 1・偏角 。
練習問題
問 1 3 点 A、B、C がある。次の点を表す複素数を求めよ。(1) 線分 AB を に内分する点 (2) 線分 AB を に外分する点 (3) 三角形 ABC の重心
(1) (2) (3)
方針 内分点・外分点・重心を表す複素数の式は、位置ベクトルの式と同じ形をしている。 なので、内分は 、外分は を に変えた 、重心は 3 つの平均 。あとは複素数の足し算と割り算をする。
- 、、 とする。どちらの小問にも出る を先に出すと、
- (1) 内分する点は 。分子は で、実部は 、虚部は なので、分子は
- 分母の 3 で割って、
- (2) 外分する点は 。分子は で、実部は 、虚部は なので、分子は
- 分母は なので、そのまま
- (3) 重心は 。分子の実部は 、虚部は なので、分子は
- 3 で割って、
ここで間違えやすい 比 の「2」を掛けるのは、遠い側の (たすき掛け)。(1) の答えは実数 3 で、内分する点がちょうど実軸の上にのっている。
問 2 方程式 を満たす点 の全体は、どんな図形か。
点 を中心とする半径 2 の円
方針 は点 3 との距離、 は原点との距離なので、この式は「2 点からの距離の比が一定」という条件である。図形を知るには、式を (点 を中心とする半径 の円)の形に直せばよい。絶対値のままでは変形できないので、両辺を 2 乗して で共役複素数の式に直し、展開して整理する。
- 両辺とも 0 以上なので、2 乗しても同じ条件。
- 共役複素数で書く。 の共役複素数は なので、
- 左辺を展開する。
- 左辺をすべて右辺に移項すると、
- 両辺を 3 で割って、
- 積の形にまとめる。 なので、左辺は と書ける。よって
- は の共役複素数なので、左辺は 。
- 絶対値は 0 以上なので、。これは点 との距離が 2 ということなので、点 を中心とする半径 2 の円。
ここで間違えやすい 右辺の 2 乗は (2 も 2 乗する)。6. では、 に 1 を足せば積の形になるので、 を と分ける。 の中心は ではなく ( と読む)。
確かめ: 円周上の点 では、 が 2、 も 2 で成り立つ。点 では、どちらも 6。
問 3 点 が単位円 の上を動くとき、点 はどんな図形を描くか。
点 2 を中心とする半径 の円
方針 条件が分かっているのは ()で、知りたいのは の動き方。そこで の式を について解き、 に代入して、 だけの条件に直す。
- を について解く。2 を移項して、
- 両辺を で割って、
- これを に代入する。
- 商の絶対値は絶対値の商なので、
- 分母を計算する。
- 両辺に を掛けて、
- これは点 2 との距離が ということなので、点 は点 2 を中心とする半径 の円を描く。
別の見方もできる。 を掛けるのは、原点のまわりに 回転して 倍する移動。単位円は半径 の円になり、 で中心が点 2 に移る。
問 4 、 とする。点 を点 のまわりに次の角だけ回転した点を表す複素数を求めよ。(1) (2)
(1) (2)
方針 複素数を掛けて回転できるのは、原点のまわりだけ。点 のまわりに回すときは、3 つの手順に分ける。 を引いて回転の中心を原点に移す、 を掛けて回転する、 を足してもとに戻す。式では になる。
- 回転の中心を原点に移す。 で、実部は 、虚部は なので、
- (1) の回転は、 すなわち を掛けること。
- なので、これは
- を足してもとに戻す。 は、実部が 、虚部が なので、
- (2) の回転は、 すなわち を掛けること。展開すると、
- なので は 。実部と虚部に分けると、
- を足してもとに戻す。実部は で 、虚部は で
- よって
ここで間違えやすい にそのまま を掛けると、原点のまわりの回転になってしまう( は で、別の点)。最後に を足して戻すのも忘れやすい。
確かめ: (1) の点と の差は で絶対値 。 も で、距離が変わっていない。
問 5 3 点 A、B、C を頂点とする三角形 ABC は、どんな三角形か。
が直角で、 の直角二等辺三角形
方針 三角形の形は、1 つの頂点から出る 2 辺の「長さの比」と「間の角」で決まる。複素数平面では、 を計算すると、その絶対値が辺の比 、偏角が になる。だから、この商を計算して極形式で読む。
- 、、 とする。A を原点に移した位置を出す。 で 、 で
- 商は 。分母を実数にするため、分母の共役複素数 を分母・分子に掛ける。
- 分子を展開する。。 なので は になり、分子は
- 分母は で、
- よって 、すなわち
- を極形式で読む。絶対値は 、偏角は
- 絶対値から 、すなわち 。偏角から
- 2 辺の比が で、その間の角が 。これは直角二等辺三角形の「等しい辺と斜辺」の関係なので、AC を斜辺とする直角二等辺三角形。直角は斜辺の向かいの で、
(B を頂点にして調べると で、直接 、 が出る。)
ここで間違えやすい から分かるのは頂点 A のところの角と、A から出る 2 辺の比。偏角 を見て「 が直角」としない。どの角が直角かは、辺の比と合わせて判断する。「直角三角形」「二等辺三角形」だけで止めず、どの角が直角で、どの辺が等しいかまで答える。
問 6 3 点 A、B、C がある( は実数)。(1) 3 点が一直線上にあるときの の値を求めよ。(2) 2 直線 AB、AC が垂直であるときの の値を求めよ。
(1) (2)
方針 3 点の位置関係は、 の偏角( にあたる)で決まる。一直線上にあるのは偏角が 0 か 、つまりこの商が実数のとき。AB と AC が垂直なのは偏角が 、つまり純虚数のとき。そこで、まず商を「実部 虚部 」の形に計算しておき、(1) では虚部、(2) では実部を 0 とおく。
- 、、 とする。 で 、 で
- 商は 。分母を実数にするため、 を分母・分子に掛ける。
- 分子を展開する。
- なので は 。実部は 、虚部は なので、分子は
- 分母は で、。よって
- (1) 一直線上にあるのは、これが実数になるとき、つまり虚部が 0 のとき。 から、
- (2) 垂直なのは、これが純虚数になるとき、つまり実部が 0 で虚部が 0 でないとき。 から、
- このとき虚部の分子は で 0 でないので、たしかに純虚数になっている。
ここで間違えやすい 純虚数は「実部が 0」だけでは足りず、「虚部が 0 でない」ことの確認が要る(0 は純虚数ではない)。また、(1) と (2) で 0 とおくものを取りちがえない。実数なら虚部が 0、純虚数なら実部が 0。