空間のベクトルの内積
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学C (1) ベクトル ア (ウ)「座標及びベクトルの考えが平面から空間に拡張できることを理解すること。」。
0. どういうまとまりか
空間のベクトルでも、2 つのベクトルは始点をそろえれば 1 つの平面の上にのります。だから、なす角も内積の定義も平面のときのままです。
空間座標の上で成分を使うと、内積の式に が 1 つ増えるだけです。
| 平面 | 空間 | |
|---|---|---|
| 定義 | 同じ | |
| 成分で | ||
| 垂直条件 | 同じ | |
| 三角形の面積 | 同じ | |
| 成分での面積 | 使える | 使えない |
分かれ目は次の 3 つ。
- 内積はベクトルではなく数。成分で計算しても答えは 1 つの数になる
- 2 つのベクトルの両方に垂直なベクトルは、内積 0 の式を 2 本立てて求める。文字 3 つに式 2 本なので、向き(比)だけが決まる
- 空間の三角形の面積は、内積を使う式で求める。成分 2 つの式 は平面専用
1. 内積の定義と成分
根拠: 学習指導要領 数学C-(1)-ア-(ウ)
基本ベクトルどうしは互いに垂直で大きさが 1 なので、同じものどうしの内積は 1、違うものどうしの内積は 0 です。
成分表示を基本ベクトルで書いて分配法則で展開すると、同じ番号の成分の積だけが残ります。
空間のベクトル 、 のなす角を とするとき、内積 の定義は?
()
平面と同じ。始点をそろえた 2 つのベクトルは 1 つの平面の上にあるので、なす角もその平面の上で測る。
、 のとき、内積 を成分で表すと?
平面の式 に が増えただけ。同じ番号の成分どうしを掛けて足す。
内積を成分で表すと、同じ番号の成分の積だけが残るのはなぜか?
基本ベクトルどうしの内積が、同じものなら 1、違うものなら 0 だから
、 など。 を展開すると、違う番号の組は消える。
空間のベクトルの内積で成り立つ性質は?(平面と比べて)
平面と同じ。、、、
文字式の展開と同じように計算できる。
空間のベクトルで、 を展開すると?
を展開する。大きさを扱うときは 2 乗して内積に直すのが定石で、これも平面と同じ。
2. なす角と垂直
根拠: 学習指導要領 数学C-(1)-ア-(ウ)
空間では、2 つのベクトルのなす角を図から読むのは難しくなります。成分から内積と大きさを出せば、 が計算で求まります。
でない空間のベクトル 、 のなす角 の余弦は?
内積の定義を について解いたもの。
、 のなす角 は?
、、 なので 。
でない空間のベクトル 、 が垂直である条件は?
、成分では
なす角が で だから。平面の条件に が増えただけ。
1 辺の長さが 2 の正四面体 で、内積 の値は?
2
面はどれも正三角形なので、 と のなす角は 。。同じ理由で も 2 になる。
3. 両方に垂直なベクトルと三角形の面積
根拠: 学習指導要領 数学C-(1)-ア-(ウ)
平面では、あるベクトルに垂直な向きは 1 つに決まりました。空間では、1 つのベクトルに垂直な向きは無数にあります。
平行でない 2 つのベクトルの両方に垂直、とすると向きが 1 つに決まります。平面に垂直な向きを求めるときに使います。
平行でない 2 つのベクトル 、 の両方に垂直なベクトルは、どう求めるか?
求めるベクトルを とおき、 との内積 、 との内積 の 2 式を立てて、1 つの文字でほかを表す
文字 3 つに式 2 本なので、決まるのは成分の比(向き)まで。大きさの条件があれば、それで値が決まる(向きが逆の 2 つが出る)。
、 の両方に垂直なベクトルを 1 つ求めると?
(この 0 でない実数倍なら何でもよい)
とおくと 、。足すと で 、第 1 式に入れて 。 とすると 。
、 のとき、空間の三角形 の面積 は?
に を入れたもの。平面と同じ式で、成分が 3 つでも大きさと内積を計算すれば使える。
平面の三角形の面積の式 は、空間の三角形に使えるか?
使えない
成分が 2 つのベクトルのための式。空間では を使う。
練習問題
問 1 、 の内積を求めよ。
方針 成分が分かっているので、なす角を使う定義ではなく、成分の式 を使う。同じ番号の成分どうしを掛けて、3 つを足す。
- 同じ番号の成分どうしを掛ける。 成分は 、 成分は 、 成分は
- 3 つを足す。
ここで間違えやすい 内積はベクトルではなく 1 つの数。 のように成分の組のまま答えない。
問 2 、 のなす角 を求めよ。
方針 空間では角を図から読めないので、内積の定義 を について解いた式を使う。成分から内積と 2 つの大きさを出せば、 が計算で決まる。
- 内積を成分で計算する。
- の大きさは、
- の大きさは、
- に入れる。分母は なので、
- なす角は の範囲で考える。この範囲で となるのは
ここで間違えやすい 内積が負なら、なす角は より大きい(鈍角)。 を と答えない。
問 3 と が垂直になるように、 の値を定めよ。
方針 でない 2 つのベクトルが垂直である条件は、内積が 0 になること。内積を成分で計算すると の式になるので、それを 0 とおいて解く。
- 内積を成分で計算する。
- 同類項をまとめると、
- 垂直なので内積は 0。
- を移項して 。両辺を 5 で割って、
- 確かめ。 のとき 、 で、内積は
問 4 、 の両方に垂直で、大きさが 3 のベクトルを求めよ。
と
方針 求めるベクトルの成分を文字 3 つでおく。「両方に垂直」から内積 0 の式が 2 本できるが、文字 3 つに式 2 本なので、決まるのは向き(成分の比)まで。そこで 、 を で表しておき、最後に「大きさが 3」の条件で の値を決める。
- 求めるベクトルを とおく。
- と垂直なので、内積が 0。 …①
- と垂直なので、内積が 0。 …②
- ①と②を辺ごとに足すと が消える。 なので、
- ①に を入れると、。すなわち なので、
- 大きさが 3 なので、成分の 2 乗の和が 。 に 、 を入れると、
- 左辺をまとめると 。両辺に を掛けて なので、
- のとき 、 で 。 のとき 、 で
- 確かめ。 と の内積は 、 との内積は
ここで間違えやすい 答えは 2 つある。両方に垂直な向きは 1 つの直線に沿っていて、その直線の上で大きさ 3 のベクトルは、向きが逆の 2 つがある。 だけで止めない。
問 5 3 点 、、 を頂点とする三角形 の面積を求めよ。
方針 空間の三角形では、底辺と高さを図から読めない。1 つの頂点 から出る 2 辺のベクトル 、 を作り、大きさと内積だけで面積が出る式 を使う。
- を始点とする 2 つのベクトルを作る。
- 同じように、
- 大きさの 2 乗を出す。、
- 内積を出す。
- 面積の式に入れる。根号の中は なので、
- なので、
ここで間違えやすい 式に入れるのは大きさの 2 乗( と )で、大きさそのもの( と )ではない。また、平面用の式 は成分が 3 つあるときは使えない。
問 6 1 辺の長さが 1 の立方体 について、次の問いに答えよ。
(1) と のなす角を求めよ。
(2) と が垂直であることを示せ。
(1) と のなす角を求めよ。
(2) と が垂直であることを示せ。
(1) (2) 内積が 0 になる
方針 立方体は 1 つの頂点から出る 3 辺が互いに垂直なので、その 3 辺を座標軸にとれば、頂点の座標がすぐ書ける。座標が決まれば、なす角も垂直も、成分で内積を計算するだけになる。
- を原点とし、、、 となるように空間座標をとる。
- 残りの頂点は、 が の真上で 、 が の真上で 、 が の真上で
- (1) は原点なので、、
- 内積は、
- 大きさは、、
- なす角を とすると、分母は なので 。 より、
- (2) 。 は の座標から の座標を引いて、
- 内積は、
- どちらも でなく、内積が 0 なので、 と は垂直である。
(1) は図形でも確かめられる。、、 はどれも正方形の面の対角線で長さが なので、三角形 は正三角形。だから角は になる。
ここで間違えやすい (2) の と は交わらない(ねじれの位置にある)が、ベクトルは始点を自由に動かせるので、なす角や垂直を考えてよい。垂直を言うときは、どちらも でないことも添える。