ベクトルの内積
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学C (1) ベクトル ア (イ)「ベクトルの内積及びその基本的な性質について理解すること。」。
0. どういうまとまりか
2 つのベクトルから 1 つの実数を作る計算が内積です。内積には、2 つのベクトルのなす角の情報が入っています。
そのため、内積を使うと「角の大きさ」「垂直かどうか」「長さ」「面積」を、図をかかずに計算で出せます。
、、なす角を とします。
| 内積の表し方 | 式 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 大きさとなす角で | 大きさと角が分かっている | |
| 成分で | 成分が分かっている |
分かれ目は次の 3 つ。
- 内積はベクトルではなく実数。 の「」は省かず、 や とは書かない
- 垂直なら内積は 0。 でない 2 つのベクトルについて、垂直と は同じこと
- 大きさは 2 乗して内積に直す。 は として展開する
1. 内積の定義
根拠: 学習指導要領 数学C-(1)-ア-(イ)
2 つのベクトルの始点をそろえたときにできる角が、なす角です。内積は、2 つの大きさとなす角の余弦を掛けたものと定めます。
でない 2 つのベクトル 、 のなす角とは? その範囲は?
始点をそろえて 、 としたときの の大きさ 。
始点がそろっていないベクトルは、平行移動して始点をそろえてから角を測る。同じ向きなら 、反対の向きなら 。
でない 、 のなす角を とするとき、内積 の定義は?
内積はベクトルではなく実数。 または のときは と定める。
、 で、なす角が のとき、内積 の値は?
3
なので、。
でない 、 のなす角 が鋭角・直角・鈍角のとき、内積 の符号はそれぞれどうなるか?
鋭角なら正、直角なら 0、鈍角なら負
大きさは正なので、内積の符号は の符号で決まる。
2. 成分による内積となす角
根拠: 学習指導要領 数学C-(1)-ア-(イ)
三角形 に余弦定理を使うと、内積が成分だけで計算できることが分かります。成分から内積が出れば、定義の式を逆に使ってなす角が求められます。
、 のとき、内積 を成分で表すと?
成分どうしの積と 成分どうしの積の和。結果は 1 つの数で、成分の組にはならない。
でない 、 のなす角 を求める式は?
内積の定義の式を について解いたもの。 の範囲で はただ 1 つに決まる。
、 のなす角 は?
内積は 。大きさは 、。。
でない 2 つのベクトル 、 が垂直()になる条件は?
。成分で書くと
なす角が で だから。平行条件 と取り違えない。
()に垂直な単位ベクトルは、どう求めるか?
が に垂直なので、これを大きさ で割る。反対向きと合わせて 2 つ
だから垂直。求めるベクトルを とおいて、垂直の条件 と大きさの条件 を連立してもよい。
3. 内積の性質
根拠: 学習指導要領 数学C-(1)-ア-(イ)
内積は、数の掛け算と同じように展開できます。違うのは、同じベクトルどうしの内積が大きさの 2 乗になることです。
内積について成り立つ計算法則(交換・分配・実数倍)は?
、、
成分で書けばどれも確かめられる。この法則があるので、内積の式は文字式の積と同じように展開できる。
同じベクトルどうしの内積 は、何に等しいか?
なす角が で だから。逆に で、大きさを内積から出せる。
を、内積を使って展開すると?
を展開する。 の展開と同じ形だが、 にあたるのは 、 にあたるのは内積 。差なら 。
、 のとき、三角形 の面積 を内積で表すと?
に を入れて、 を内積に置きかえたもの。成分 、 で書くと 。
【発展】内積の絶対値は、大きさの積をこえない
だから、 が成り立つ。等号は と が平行(またはどちらかが )のとき。
成分で書くと で、コーシー・シュワルツの不等式とよばれる。
練習問題
問 1 、 の内積となす角 を求めよ。
、
方針 成分が分かっているので、内積は成分の式 で出す。なす角は、内積の定義 を について解いた式に、内積と 2 つの大きさを入れて求める。だから、内積・大きさ・ の順に計算する。
- 内積を成分で計算する。 成分どうしの積は 、 成分どうしの積は 。足して
- の大きさを求める。 なので、
- の大きさも同じように、
- の式に入れる。
- の範囲で となるのは、
問 2 、 が垂直になるような の値を求めよ。
方針 でない 2 つのベクトルが垂直になる条件は、内積が 0 になること。成分が分かっているので、内積を成分の式で書けば の方程式になる。
- 内積を成分で書く。
- 垂直なので内積は 0。
- 移項して 。両辺を 2 で割って
- 確かめ。 のとき で、内積は 。
ここで間違えやすい 垂直条件は「同じ成分どうしを掛けて足す」。平行条件 と取り違えると、 から という別の答えになる。
問 3 、 で、 と のなす角が のとき、 を求めよ。
方針 成分が分からないので、 を直接は計算できない。大きさは 2 乗すると内積になる()ので、2 乗して展開し、分かっている 、 と内積 の式に直す。そのために、先に内積を定義から出しておく。
- 内積を定義から求める。 なので、
- 求める大きさを 2 乗して、内積の形に書く。
- 文字式の と同じように展開する。
- 値を入れる。、 は 、 は
- 足して、。つまり
- 大きさは 0 以上なので、
ここで間違えやすい 手順 3 の係数。真ん中の項は なので 、最後の項は なので になる。2 のままにしない。
問 4 、、 のとき、内積 と、 と のなす角 を求めよ。
、
方針 与えられているのは大きさだけで、内積が直接は分からない。大きさの条件は、2 乗して展開すると内積 が現れる。 を 2 乗して、 についての方程式にする。内積が出れば、なす角は の式で求められる。
- を展開する。
- 分かっている値を入れる。左辺は 、右辺の は 、 は なので、
- 右辺の数をまとめる。
- 移項する。 から 。両辺を 2 で割って
- なす角の式に入れる。
- の範囲で となるのは、
大きさの条件は、2 乗して内積の条件に直すのが定石。
ここで間違えやすい 内積が負なので、なす角は鈍角になる。 を と答えない。
問 5 に垂直な単位ベクトルを求めよ。
と
方針 条件は「 に垂直」と「大きさが 1」の 2 つ。まず垂直なベクトルを 1 つ作り、それを自分の大きさで割って大きさを 1 にする。 に垂直なベクトルは、成分を入れかえて片方の符号を変えた ですぐに作れる。
- の成分を入れかえ、片方の符号を変えて を作る。
- 垂直であることを内積で確かめる。 なので、 は に垂直。
- このベクトルの大きさを求める。
- 大きさ 5 で割ると単位ベクトルになる。
- 反対向きのベクトルも に垂直で大きさ 1 なので、逆ベクトル も答え。
別解: 求めるベクトルを とおき、垂直の条件 と大きさの条件 を連立する。 を代入すると 、すなわち から となり、同じ 2 つが出る。
問 6 3 点 、、 を頂点とする三角形の面積を求めよ。
9
方針 三角形の面積は、1 つの頂点から出る 2 つのベクトルの大きさと内積で決まる()。底辺や高さを求めなくてよいので、座標が分かっているときに向いている。頂点 を始点にして 、 の成分を出し、この式に入れる。
- 終点引く始点で成分を出す。、
- 大きさの 2 乗を計算する。、
- 内積を計算する。
- 根号の中を計算する。、 なので、
- 面積の式に入れる。 なので、
別解: 成分の式 を使うと、 で、同じ値になる。成分が分かっているときは、こちらのほうが計算が少ない。