ベクトルと図形
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学C (1) ベクトル ア (ア)「平面上のベクトルの意味,相等,和,差,実数倍,位置ベクトル,ベクトルの成分表示について理解すること。」。
0. どういうまとまりか
図形の性質を、ベクトルの式に翻訳して計算で確かめます。翻訳の型は決まっています。
点は位置ベクトルで表し、「一直線上にある」は実数倍、「交点」は 2 通りに表して係数比較、「垂直」は内積が 0、と読みかえます。
| 図形の言葉 | ベクトルの式 |
|---|---|
| 3 点 、、 が一直線上にある | となる実数 がある |
| 点 が直線 上にある | 、 |
| 線分 の長さ |
分かれ目は次の 3 つ。
- 交点は「2 通りに表して係数を比べる」。比べる前に、2 つのベクトルが 1 次独立( でなく平行でない)と断る
- の点 の範囲は、 の条件と 、 の符号の条件で決まる。 だけなら直線 、これに 、 が付けば線分 、、、 なら三角形 の周と内部
- 垂直や長さが出てきたら内積。それ以外(平行・一直線・比)は内積を使わずに済む
1. 3 点が一直線上にある条件
根拠: 学習指導要領 数学C-(1)-ア-(ア)
を始点にした 2 つのベクトル と が平行なら、 を共有しているので 3 点は同じ直線の上に並びます。
異なる 2 点 、 に対して、点 が直線 上にある条件を、ベクトルで書くと?
となる実数 があること
始点を同じ点 にそろえるのがこつ。 が の実数倍なら、、、 は一直線上に並ぶ。
3 点 、、 が一直線上にあることを示して が得られたとき、 から何が分かるか?
線分の長さの比
例えば なら で、 は線分 を に内分する。一直線の証明と比が同時に出る。
3 点 、、 は一直線上にあるか?
ある。
、。 は の 3 倍になっている。
2. 交点の位置ベクトル
根拠: 学習指導要領 数学C-(1)-ア-(ア)
2 本の線分の交点は、「一方の線分上にある」と「もう一方の線分上にある」の 2 つの条件を同時に満たす点です。それぞれを式にして、等しいとおきます。
三角形 の中で、線分 と線分 の交点 の位置ベクトルを求める手順は?
、 とおいて を 、 で 2 通りに表し、係数を比べて 、 を求める
内分点の式で 、 と書き、どちらも 、 の式に直す。
を 、 で 2 通りに表して係数を比べるとき、必ず断っておくことは?
、 で、 と が平行でない(1 次独立である)こと
1 次独立なら の表し方はただ 1 通りなので、係数が比べられる。三角形 の 2 辺 、 はこの条件を満たす。
3. 点の存在範囲
根拠: 学習指導要領 数学C-(1)-ア-(ア)
で のとき、 を代入すると となり、 は直線 上を動きます。
係数の条件を変えると、 の動く範囲が変わります。、、 は一直線上にないとします。
で、 のとき、点 の存在範囲は?
直線
と書き直せる。逆に、直線 上の点は必ず係数の和が 1 の形で表せる。
で、、、 のとき、点 の存在範囲は?
線分
は線分 を に内分する点( で 、 で )。係数が負になると、線分の外へ出る。
で、、、 のとき、点 の存在範囲は?
三角形 の周と内部
()とおくと、 は 、 を 倍に縮めた線分の上を動く。 を 0 から 1 まで動かすと、三角形 全体をおおう。
で、 のように係数の和が 1 でないとき、点 の存在範囲はどう調べるか?
係数の和が 1 になるように式を作り直す。 として
、 となる点 、 をとると、 は直線 上にある。係数を割ったぶん、ベクトルのほうに掛ける。
で、、 のとき、点 の存在範囲は?
、 を 2 辺とする平行四辺形の周と内部
と が別々に動く。 となる点 をとった平行四辺形 になる。
4. 内積と図形
根拠: 学習指導要領 数学C-(1)-ア-(イ)
垂直と長さは、内積で式になります。図形の証明では、基準の点から出る 2 つのベクトルで全部の辺を表し、内積を計算します。
2 直線 、 が垂直であることを、ベクトルで示すには?
を示す
、 を基準になる 2 つのベクトルで表し、内積を展開して 0 になることを計算する。なす角が であることと同じ。
線分の長さの条件( など)を、ベクトルの計算に持ち込むには?
2 乗して内積に直す。
なら 。内積を展開して出てきた を 0 にできる。
ひし形 の対角線 と が垂直であることを、、 で示すと?
ひし形は 4 辺が等しいので 。内積の展開は、和と差の積の展開と同じ形になる。
練習問題
問 1 平行四辺形 で、辺 を に内分する点を 、対角線 を に内分する点を とする。3 点 、、 は一直線上にあることを示せ。
となるので、一直線上にある
方針 3 点 、、 が一直線上にあることは、始点を にそろえた 2 つのベクトルについて となる実数 があることを示せばよい。平行四辺形なので、 から出る 2 辺 、 を基準にして と を表し、一方がもう一方の実数倍になっていることを見つける。
- 、 とおく。平行四辺形の向かい合う辺なので、
- は辺 を に内分するので、 は の 。よって
- を経由して、
- は対角線 を に内分するので、 を基準にした内分点の式から
- と同じ形が出るように、 でくくる。
- かっこの中は なので、。実数倍になっているから、3 点 、、 は一直線上にある。
は の なので、 であることも分かる。
ここで間違えやすい 2 つのベクトルの始点は同じ点 にそろえる。始点が違うと、平行であっても一直線上とは限らない。
問 2 三角形 で、辺 を に内分する点を 、辺 の中点を とし、線分 と線分 の交点を とする。、 として、 を 、 で表せ。
方針 交点 は「線分 上にある」と「線分 上にある」を同時に満たす点。それぞれの線分を分ける比はまだ分からないので文字( と )でおき、内分点の式で を 2 通りに表す。同じベクトルを 、 で 2 通りに表したのだから、係数が等しいはずで、そこから 、 が決まる。
- 、 の位置を表す。 は辺 を に内分するので 、 は辺 の中点なので
- が線分 上にあることを式にする。 とおくと、内分点の式から
- が線分 上にあることを式にする。 とおくと、
- 、 は でなく平行でもない(1 次独立)から、2 通りの表し方の係数は等しい。 の係数から (第 1 式)、 の係数から (第 2 式)
- 第 2 式の両辺を 2 倍して、
- これを第 1 式に代入する。左辺は なので、
- 両辺を 3 倍して 。移項して から
- 手順 5 の式に戻す。 なので、
- を手順 2 の式に入れる。 の係数は 、 の係数は 。よって
確かめ: を手順 3 の式に入れても、 の係数は 、 の係数は で、同じ式になる。
ここで間違えやすい 内分点の式はたすきがけ。 のとき、 が掛かるのは遠いほうの で、 には が掛かる。
問 3 問 2 の三角形で、直線 と辺 の交点を とする。 を 、 で表し、 を求めよ。
、
方針 は「直線 上にある」と「直線 上にある」を同時に満たす点。1 つ目は (実数倍)と書け、2 つ目は「 を 、 で表したとき係数の和が 1」と書ける。1 つ目で文字を だけにしてから、2 つ目で を決める。
- 問 2 から 。 は直線 上にあるので、実数 を使って
- は直線 上にあるので、 と の係数の和が 1。
- 左辺を通分すると なので、。両辺に を掛けて
- を手順 1 の式に戻す。 の係数は 、 の係数は 。よって
- 内分点の式の形に直す。 は、線分 を に内分する点の式になっている。よって
ここで間違えやすい 比はたすきがけで読む。 の係数のほうが大きいのは、 が に近いということ。 に掛かっている 2 は 側の比なので、 になる。 ではない。
問 4 三角形 に対して とする。次の条件を満たす点 の存在範囲を求めよ。(1)、、 (2)、、
(1)辺 の中点を として、線分 (2)、 となる点 、 をとって、三角形 の周と内部
方針 「係数の和が 1 で、係数が 0 以上なら線分」「係数の和が 1 以下で、係数が 0 以上なら三角形の周と内部」という結果は、係数の和が 1(または 1 以下)の形のときにだけ使える。そこで、条件の式がその形になるように係数を作り直す。係数を何倍かしたら、そのぶんベクトルのほうを割って、 全体は変えないようにする。
- (1)条件 は、 と の和が 1 という形。そこで の係数が になるように書き直す。 なので、
- とおき、 となる点 (辺 の中点)をとると、
- 条件を で書き直す。 は になり、 から 。 はそのまま。
- 係数の和が 1 で、どちらも 0 以上なので、 の存在範囲は線分
- (2)条件 の両辺を 2 で割って、和が 1 以下の形にする。
- 係数が 、 になるように書き直す。
- 、 とおき、、 となる点 、 をとると、 で、、、
- 係数の和が 1 以下で、どちらも 0 以上なので、 の存在範囲は三角形 の周と内部
確かめ: (1)で 、 とすると は 、、 とすると で は 。線分の両端になっている。
ここで間違えやすい 係数を 2 倍したらベクトルは 倍、係数を 倍したらベクトルは 2 倍。逆にすると、(1)で を の 2 倍の点にとってしまう。
問 5 三角形 の頂点 から辺 に下ろした垂線と、頂点 から辺 に下ろした垂線の交点を とする。 であることを示せ。
を基準の点にとると、 が計算で出る
方針 垂直は「内積が 0」と読みかえる。分かっている垂直が 2 つ、示したい垂直が 1 つで、どれにも点 が出てくる。そこで を基準の点にとり、3 つの頂点を 、、 で表す。こうすると、条件も結論も 3 つのベクトルの内積の式になり、条件の 2 式から結論の式が計算で出る。
- 、、 とおく。辺のベクトルは終点引く始点で、、、
- 1 つ目の条件 を内積で書く。 なので、
- 展開すると 。移項して
- 2 つ目の条件 を内積で書く。 なので、
- 展開すると 。移項して
- 手順 3 と手順 5 をつなぐと、。特に
- 示したい内積を計算する。
- 手順 6 からこの値は 0。よって で、
から辺 に下ろした垂線も を通ることになるので、3 本の垂線は 1 点(垂心)で交わる。
問 6 三角形 で、、、 とする。 から辺 に下ろした垂線と の交点を とするとき、 を 、 で表せ。
方針 を決める条件は「直線 上にある」と「」の 2 つ。1 つ目から とおけて、分からないものが だけになる。2 つ目は垂直なので内積が 0。内積を展開すると 、、 が出てきて、どれも値が与えられているから、 の 1 次方程式になる。
- は直線 上にあるので、係数の和が 1 の形で とおく。
- で、 だから内積が 0。
- の部分を展開する。 なので、この部分は
- の部分を展開する。 なので、この部分は
- 合わせると、
- 値を入れる。、、 なので、 は 、 は
- 手順 5 の式は になる。かっこを外して
- まとめて 。両辺を 7 で割って
- 手順 1 の式に戻す。 の係数は なので、
なので、 は辺 を に内分する。
確かめ: は、手順 5 の左辺に を入れて 。確かに垂直になっている。
ここで間違えやすい は ではなく 。値を入れるときは 3 でなく 9、2 でなく 4 を使う。