条件付き確率と乗法定理
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学A (2) 場合の数と確率 ア (オ)「条件付き確率の意味を理解し,簡単な場合について条件付き確率を求めること」。
0. どういうまとまりか
「 が起こったと分かっているとき、 が起こる確率」は、全事象のかわりに を全体とみて求めます。これが条件付き確率です。
式を変形すると、積事象の確率を「先に起こること」と「そのあとに起こること」の積で出す確率の乗法定理になります。
| 求めるもの | 式 | 全体(分母)にするもの |
|---|---|---|
| 確率 | 全事象 | |
| 条件付き確率 | 事象 | |
| 積事象の確率 | (乗法定理) |
分かれ目は次の 3 つ。
- 条件付き確率は、分母を全事象から「条件の事象」に取りかえる
- と は別物。「何が起こったと分かっているか」が条件(添字)の側
- 「結果から原因を求める」問題も、分母は分かっている結果の起こる確率全体。表や樹形図で場合を分けてから割る
1. 条件付き確率
根拠: 学習指導要領 数学A-(2)-ア-(オ)
事象 が起こったときに事象 が起こる確率を、 が起こったときの が起こる条件付き確率といい、 で表します。
条件付き確率 とは何か? また、どう求めるか?
事象 が起こったときに、事象 が起こる確率。
根元事象が同様に確からしいときは、 と数えてもよい。
条件付き確率 を求めるとき、全事象 のかわりに何を全体とみるか?
事象
が起こったと分かった時点で、 の外の結果はもう起こり得ない。 の中で、 でもあるもの()の割合を求める。
と の違いは?
は を全体としたときの の割合。 は全事象を全体としたときの の割合
分子の事象は同じ で、分母が か全事象かだけが違う。
男子 22 人・女子 18 人のクラスで、眼鏡をかけているのは男子 8 人・女子 6 人。 と はどう違うか?
(女子の中で眼鏡の割合)、(眼鏡の人の中で女子の割合)
分子はどちらも「女子で眼鏡」の 6 人。分母が条件の側(女子 18 人か、眼鏡 14 人か)になる。
2. 確率の乗法定理
根拠: 学習指導要領 数学A-(2)-ア-(オ)
条件付き確率の式の分母を払うと、積事象の確率を求める式になります。これを確率の乗法定理といいます。
確率の乗法定理とは?
「 が起こる確率」×「 が起こったときに が起こる確率」。条件付き確率の式 の分母を払った形。
取り出した玉を戻さずに 2 回続けて取り出す確率を、乗法定理でどう求めるか?
1 回目の確率 × 1 回目の結果のもとでの 2 回目の条件付き確率
赤 3 個・白 2 個から続けて 2 個取り出して 2 個とも赤なら、。2 回目は袋が 4 個・赤 2 個に変わっている。
独立な試行の確率の積 と、乗法定理 の関係は?
の結果が の起こり方に影響しないとき になり、乗法定理が独立な試行の積の形になる
戻す取り出しでは 、戻さない取り出しでは を条件ごとに求める。
3. くじ引きの公平性
根拠: 学習指導要領 数学A-(2)-ア-(オ)
当たりくじを含むくじを、引いたくじを戻さずに順に引くとき、先に引くほうが有利に見えます。乗法定理で確かめると、そうはなりません。
当たり 3 本を含む 10 本のくじを、A、B の順に 1 本ずつ引く(引いたくじは戻さない)。B が当たる確率は?
(A が当たる確率と同じ)
A が当たって B も当たる: 。A が外れて B が当たる: 。この 2 つは排反で、和は 。
戻さないくじ引きで、引く順番によって当たる確率は変わるか?
変わらない(何番目に引いても、当たる確率は はじめの当たりの割合に等しい)
前の人の結果が分からない限り、どの順番も同じ。前の人の結果が分かったあとの確率(条件付き確率)は変わる。
4. 原因の確率
根拠: 学習指導要領 数学A-(2)-ア-(オ)
「検査で陽性と出た人が、実際に病気である確率」のように、起こった結果から、その原因が何だったかの確率を求めることがあります。これも条件付き確率で、表や樹形図で場合を分けると整理できます。
「検査で陽性だった人が病気である確率」を条件付き確率で書くと? また、分母は何か?
。分母は「病気で陽性」と「病気でないのに陽性」を合わせた、陽性になる確率全体
は、病気の人と病気でない人に分け、それぞれ乗法定理で出して足す。
病気の人の 90% が陽性になる検査で、陽性の人が病気である確率が 90% にならないのはなぜか?
90% は で、求めたいのは だから。病気でない人が多いと、その中の誤った陽性が陽性全体の多くを占める
条件と結果を入れかえた条件付き確率は、一般に等しくならない。
練習問題
問 1 大小 2 個のさいころを投げる。目の和が 10 以上であったとき、2 個の目が同じである条件付き確率を求めよ。
方針 「和が 10 以上であったとき」という条件が付いているので、全体を 36 通りではなく「和が 10 以上の出方」だけに絞り直す。その中で、2 個の目が同じものの割合を求める。
- 和が 10 以上になる出方を、和ごとに書き出す。和 10 は (4, 6)、(5, 5)、(6, 4)、和 11 は (5, 6)、(6, 5)、和 12 は (6, 6)。合わせて 通り。
- このうち 2 個の目が同じなのは (5, 5)、(6, 6) の 2 通り。
- 条件付き確率は
確かめ(確率の式で): を「和が 10 以上」、 を「目が同じ」とすると、、。 に入れると で、一致する。
ここで間違えやすい 分母を 36 にしない。 は「和が 10 以上で、かつ目が同じ」確率で、条件付き確率ではない。
問 2 当たり 3 本を含む 10 本のくじを、A、B の順に 1 本ずつ引く。引いたくじは戻さない。A が外れて B が当たる確率を求めよ。
方針 求めるのは「A が外れ、かつ B が当たる」確率。くじを戻さないので、B が引くときの本数は A の結果で変わる(独立ではない)。そこで乗法定理を使い、「A が外れる確率」に「A が外れたときに B が当たる条件付き確率」を掛ける。
- 外れは 本なので、A が外れる確率は
- A が外れたあと、残りは 9 本で、当たりは 3 本のまま。B が当たる条件付き確率は
- 乗法定理で、
ここで間違えやすい B の分母を 10 のままにしない。戻さないので、くじは 1 本減っている。
問 3 箱 A には赤玉 2 個と白玉 3 個、箱 B には赤玉 4 個と白玉 1 個が入っている。硬貨を投げて表なら箱 A、裏なら箱 B を選び、選んだ箱から玉を 1 個取り出す。取り出した玉が赤玉であったとき、それが箱 A から取り出されたものである確率を求めよ。
方針 「赤玉であった」という結果が分かったうえで、原因(どちらの箱だったか)の確率を求める条件付き確率。「赤玉が出る確率」を分母に、「箱 A を選び、かつ赤玉が出る確率」を分子にする。分母は、箱 A 経由と箱 B 経由の 2 つの場合(排反)を、それぞれ乗法定理で求めて足す。
- 箱 A を選ぶ確率は 、箱 A から赤玉が出る確率は 5 個中 2 個で 。箱 A を選んで赤玉が出る確率は
- 箱 B を選ぶ確率は 、箱 B から赤玉が出る確率は 5 個中 4 個で 。箱 B を選んで赤玉が出る確率は
- この 2 つは排反なので、赤玉が出る確率は
- 求める確率は、「箱 A を選んで赤玉」を「赤玉が出る」で割って
ここで間違えやすい 箱 A の中の赤玉の割合 や、箱 A を選ぶ確率 を答えにしない。赤玉は箱 B のほうが出やすいので、赤玉が出たと分かれば、箱 A だった見込みは より小さくなる。
問 4 ある病気にかかっている人は全体の 1% である。この病気の検査は、かかっている人では 90% の確率で陽性となり、かかっていない人でも 5% の確率で陽性となる。検査で陽性となった人が、実際にこの病気にかかっている確率を求めよ。
方針 「陽性であった」と分かったうえで「かかっている」確率を求める条件付き確率。分母の「陽性になる確率」は、「かかっていて陽性」と「かかっていないのに陽性」の 2 つの場合(排反)の和。それぞれを乗法定理で求め、そのうち「かかっていて陽性」が占める割合を出す。
- かかっている確率は 、かかっていない確率は
- かかっていて陽性になる確率は
- かかっていないのに陽性になる確率は
- この 2 つは排反なので、陽性になる確率は
- 求める確率は、「かかっていて陽性」を「陽性」で割って (約 15%)
| 陽性 | 陰性 | 計 | |
|---|---|---|---|
| かかっている | 18 | 2 | 20 |
| かかっていない | 99 | 1881 | 1980 |
| 計 | 117 | 1883 | 2000 |
2000 人いるとして表にすると、陽性 117 人のうち、かかっているのは 18 人だけと分かる。
ここで間違えやすい 検査の正しさの 90% を答えにしない。90% は「かかっている人が陽性になる」確率で、求めるのは「陽性の人がかかっている」確率(条件と結果が逆)。かかっていない人が圧倒的に多いので、その 5% だけでも、かかっている人の陽性より多くなる。
問 5 赤玉 4 個と白玉 2 個が入った袋から、玉を 1 個ずつ 2 回取り出す。取り出した玉は戻さない。1 回目が白玉で 2 回目が赤玉である確率と、2 回目が赤玉である確率を求めよ。
1 回目が白で 2 回目が赤: 。2 回目が赤:
方針 玉を戻さないので、2 回目の確率は 1 回目の結果で変わる。「1 回目が白で 2 回目が赤」は乗法定理で求める。「2 回目が赤」は、1 回目が白の場合と赤の場合に分け(排反)、それぞれを乗法定理で求めて足す。
- 1 回目が白の確率は、6 個中 2 個で 。そのあと残り 5 個のうち赤は 4 個なので、2 回目が赤の条件付き確率は
- 1 回目が白で 2 回目が赤の確率は
- 1 回目が赤の確率は、6 個中 4 個で 。そのあと残り 5 個のうち赤は 3 個なので、2 回目も赤の条件付き確率は
- 1 回目が赤で 2 回目も赤の確率は
- 2 回目が赤の確率は、この 2 つの和。 と通分して、
2 回目が赤の確率は、1 回目に赤を引く確率 と同じになる。