排反と余事象
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学A (2) 場合の数と確率 ア (ウ)「確率の意味や基本的な法則についての理解を深め,それらを用いて事象の確率や期待値を求めること」のうち、確率の基本的な法則(加法定理と余事象の確率)。
0. どういうまとまりか
複雑な事象の確率は、そのまま数えずに、簡単な事象に分けて足すか、起こらない側を求めて 1 から引くと楽になります。
そのための道具が、積事象・和事象、排反、余事象です。
| 事象 | 記号 | 意味 | 確率 |
|---|---|---|---|
| 積事象 | と がともに起こる | ||
| 和事象 | または が起こる | ||
| 排反な 2 つの事象の和事象 | () | 同時には起こらない 、 のどちらか | |
| 余事象 | が起こらない |
分かれ目は次の 3 つ。
- 足してよいのは排反なときだけ。重なりがあるなら、重なりの確率を 1 回引く
- 「少なくとも 1 つ」「〜でない」は余事象で、起こらない側を求めて 1 から引く
- 事象を分けるときは、分けた事象どうしが排反になるように分ける(数え落としも二重数えも起きない)
1. 積事象と和事象
根拠: 学習指導要領 数学A-(2)-ア-(ウ)
事象は全事象の部分集合なので、集合の共通部分と和集合がそのまま事象の「かつ」と「または」になります。
積事象 と和事象 は、それぞれどんな事象か?
積事象 : と がともに起こる事象。和事象 : または が起こる事象
「または」は、 と の両方が起こる場合も含む。
2. 排反事象と加法定理
根拠: 学習指導要領 数学A-(2)-ア-(ウ)
2 つの事象が同時には起こらないとき、それらは互いに排反であるといいます。排反なら、和事象の確率は足すだけで求まります。
2 つの事象 、 が互いに排反であるとは、どういうことか?
と が決して同時には起こらないこと。つまり
さいころ 1 個で「1 の目が出る」と「偶数の目が出る」は排反。「偶数の目が出る」と「3 の倍数の目が出る」は 6 の目で同時に起こるので排反でない。
事象 、 が互いに排反であるとき、 は?(確率の加法定理)
3 つ以上でも、どの 2 つも排反なら、確率をそのまま足せる。
袋から玉を取り出して「2 個が同じ色」の確率を求めるとき、「2 個とも赤」「2 個とも白」の確率を足してよいのはなぜか?
「2 個とも赤」と「2 個とも白」は同時には起こらない、つまり互いに排反だから
排反な事象に分けてから足す、が確率の加法定理の使い方の基本形。
3. 一般の和事象の確率
根拠: 学習指導要領 数学A-(2)-ア-(ウ)
排反でないときに とすると、 の部分を 2 回数えてしまいます。集合の要素の個数の式 を で割ると、確率の式になります。
事象 、 が排反とは限らないとき、 は?
を 2 回足しているので 1 回引く。排反なら で、加法定理の形に戻る。
1 から 20 までの数から 1 つ選ぶとき「3 の倍数または 4 の倍数」の確率で、 だけでは何が足りないか?
両方に入る 12 の倍数の確率を引いていない
12 の倍数(12)は 3 の倍数にも 4 の倍数にも数えられているので、 として 1 回引く。
4. 余事象の確率
根拠: 学習指導要領 数学A-(2)-ア-(ウ)
事象 に対して「 が起こらない」という事象を の余事象といい、 で表します。 と は互いに排反で、合わせると全事象になります。
事象 の余事象 とは何か? また、その確率は?
が起こらないという事象。
と は排反で なので、。
「少なくとも 1 個は〜」という事象の確率を求めるときの定石は?
余事象「1 個も〜でない」の確率を求め、1 から引く
「少なくとも 1 個」を直接求めると 1 個・2 個・3 個…と場合が増えるが、余事象は 1 つの場合で済む。
「さいころ 2 個を投げて、少なくとも 1 個は 6 の目」の余事象は何か?
「2 個とも 6 以外の目」
「2 個とも 6 の目」ではない。「少なくとも 1 個は〜」の否定は「1 個も〜でない(すべて〜でない)」。確率は 。
「目の積が偶数」の確率を余事象で求めるとき、余事象は何か?
「目の積が奇数」、つまり「すべての目が奇数」
積が奇数になるのは、掛ける数がすべて奇数のときだけ。1 つでも偶数があれば積は偶数なので、「少なくとも 1 つが偶数」と同じ事象になる。
練習問題
問 1 1 から 20 までの整数を 1 つずつ書いた 20 枚のカードから 1 枚を引く。引いた数が 3 の倍数または 4 の倍数である確率を求めよ。
方針 全事象は、20 枚のどれを引くかの 20 通り。「3 の倍数」と「4 の倍数」は、12 のように両方にあてはまる数があるので排反ではない。そのまま足すと重なりを 2 回数えてしまうので、和事象の確率 を使う。
- を「3 の倍数を引く」、 を「4 の倍数を引く」とする。
- 3 の倍数は 3, 6, 9, 12, 15, 18 の 6 枚なので、
- 4 の倍数は 4, 8, 12, 16, 20 の 5 枚なので、
- 両方にあてはまるのは 12 の倍数で、12 の 1 枚だけなので、
問 2 赤玉 3 個、白玉 2 個、青玉 1 個が入った袋から、2 個を同時に取り出す。2 個が同じ色である確率を求めよ。
方針 全事象は、6 個を区別して 2 個を選ぶ組合せ。「同じ色」を色ごとの事象に分けると、それらは同時には起こらない(排反)ので、それぞれの確率を足せばよい。
- 全事象は 通り。
- 「2 個とも赤」は、赤 3 個から 2 個を選んで 通り。確率は
- 「2 個とも白」は、白 2 個から 2 個を選んで 通り。確率は
- 青は 1 個しかないので、「2 個とも青」は起こらない。
- 「2 個とも赤」と「2 個とも白」は排反なので、確率を足して
問 3 さいころを 3 回投げるとき、少なくとも 1 回は 6 の目が出る確率を求めよ。
方針 「少なくとも 1 回」は、6 の目が 1 回だけ・2 回だけ・3 回ともの場合に分かれて数えにくい。余事象「1 回も出ない(3 回とも 6 以外の目)」は 1 つの場合で済むので、その確率を 1 から引く。全事象は 3 回の目の出方すべて。
- 全事象は、各回 6 通りずつなので 通り。
- 余事象「3 回とも 6 以外の目」は、各回 5 通りずつなので 通り。
- 余事象の確率は
- 求める確率は
ここで間違えやすい としない。「1 回目に 6 が出る」「2 回目に 6 が出る」「3 回目に 6 が出る」は同時に起こりうる(排反ではない)ので、そのまま足せない。
問 4 大小 2 個のさいころを投げるとき、出る目の積が偶数になる確率を求めよ。
方針 積が偶数になるのは「少なくとも 1 個が偶数の目」のときで、場合が多い。余事象「積が奇数」は「2 個とも奇数の目」の 1 つの場合だけなので、そちらを数えて 1 から引く。全事象は大小 2 個を区別した 36 通り。
- 全事象は 通り。
- 積が奇数になるのは、2 個とも奇数の目(1、3、5)のときだけ。大が 3 通り、小が 3 通りで 通り。
- 余事象の確率は
- 求める確率は
確かめ(直接数える):大だけ偶数、小だけ偶数、両方偶数がそれぞれ 通りで、合わせて 通り。 で一致する。
問 5 赤玉 5 個と白玉 4 個が入った袋から、3 個を同時に取り出す。少なくとも 1 個が白玉である確率を求めよ。
方針 全事象は、9 個を区別して 3 個を選ぶ組合せ。「少なくとも 1 個が白」は白が 1 個・2 個・3 個の 3 つの場合に分かれるが、余事象「白が 1 個もない(3 個とも赤)」は 1 つの場合で済むので、余事象を使う。
- 全事象は 通り。
- 余事象「3 個とも赤」は、赤 5 個から 3 個を選んで 通り。
- 余事象の確率は
- 求める確率は
確かめ(直接数える):白 1 個と赤 2 個は 通り、白 2 個と赤 1 個は 通り、白 3 個は 4 通り。合わせて 通りで、一致する。