片側からの極限と無限大
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学Ⅲ (1) 極限 ア (オ)「関数の値の極限について理解すること。」。このノートは、右と左で近づき方を分けた極限と、値や変数が限りなく大きくなるときの極限を扱います。
0. どういうまとまりか
が に近づく道は、右から( より大きい側から)と左から(小さい側から)の 2 つあります。
両方から近づけた結果が一致したときだけ、 の極限があるといいます。
また、 が一定の値に近づかず限りなく大きくなることや、 そのものを限りなく大きくすることも、同じ の記号で書きます。
| 書き方 | 意味 |
|---|---|
| が より大きい値をとりながら に近づく(右側から) | |
| が より小さい値をとりながら に近づく(左側から) | |
| の値が限りなく大きくなる(正の無限大に発散) | |
| が負で、絶対値が限りなく大きくなる(負の無限大に発散) | |
| が限りなく大きくなる | |
| が負で、絶対値が限りなく大きくなる |
分かれ目は次の 3 つ。
- 右側極限と左側極限が食い違えば、 の極限は無い。絶対値や分母が 0 になる点では、まず左右に分けて調べる
- は数ではない。 と書いても「極限値がある」とはいわない
- では 。 になるので、 とおいて に直すのが安全
1. 右側極限と左側極限
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(1)-ア-(オ)
絶対値を含む関数や、場合分けで定められた関数は、 の右と左で式が違います。片側ずつ調べます。
と は、それぞれ何を表すか?
は が より大きい値をとりながら に近づくこと、 は より小さい値をとりながら近づくこと
そのときの極限を右側極限、左側極限という。 のときは 、 と書く。
となるのは、右側極限と左側極限がどうなっているときか?
右側極限と左側極限がともに存在して、どちらも に等しいとき。
一致しなければ、 のときの極限は存在しない。
は存在するか?
存在しない。右側極限は 1、左側極限は で一致しない
では 、 では 。
2. 無限大に発散する
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(1)-ア-(オ)
分母だけが 0 に近づくと、分数の絶対値は限りなく大きくなります。符号は左右で変わることがあります。
とは、どういう意味か?
が に限りなく近づくとき、 の値が限りなく大きくなること。「 は正の無限大に発散する」という
は数ではないので、このとき極限値は存在しない(「極限は 」とはいう)。負で絶対値が限りなく大きくなるときは 。
と は?
、
左右で食い違うので、 のときの の極限は存在しない。
は?
は が正でも負でも正なので、右からも左からも正の無限大に発散する。左右が一致するので の極限として書ける。
3. と
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(1)-ア-(オ)
数列の極限 と同じ変形が使えます。基本は と です。
で、分母も分子も限りなく大きくなる分数式( の不定形)は、どう変形するか?
分母の最高次の項で、分母と分子を割る
、 などが 0 に近づく形になり、極限が読み取れる。
で、 のような の不定形は、どう変形するか?
分母を 1 とみて分子を有理化し、 の形に直してから、分母と分子を で割る
は 0 ではない。差のままでは極限が決まらない。
根号を含む式の の極限は、どう扱うか?
とおいて、 の極限に直す
では なので、 のまま根号の中へ入れたり外へ出したりすると符号を誤りやすい。
4. 指数関数と対数関数の極限
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(1)-ア-(オ)
グラフを思い浮かべれば読み取れます。底が 1 より大きいか小さいかで、増加と減少が入れかわります。
指数関数 の 、 のときの極限は?(、)
のとき 、。 のとき 、
なら増加、 なら減少するグラフで、どちらも 軸が漸近線。
対数関数 の 、 のときの極限は?(、)
のとき 、。 のとき 、
真数は正なので、0 に近づけるのは右側()からだけ。 軸が漸近線。
5. はさみうちの原理
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(1)-ア-(オ)
極限を直接求めにくい関数は、極限が分かる 2 つの関数ではさみます。数列のときと同じ考え方です。
関数のはさみうちの原理とは?
が に近いとき常に で、 ならば、
両側の関数が同じ値 に収束することが条件。、 のときも同じように成り立つ。
が に近いとき常に で、 のとき、 は?
小さいほうが限りなく大きくなれば、大きいほうも限りなく大きくなる。片側からおさえるだけでよい。
練習問題
問 1 関数 について、 と を求めよ。また、 は存在するか。
、。 は存在しない
方針 絶対値の中身 の符号が の右と左で変わるので、絶対値を外した式が左右で違う。片側ずつ絶対値を外して約分する。
- 分子を因数分解する。
- のとき なので、
- よって
- のとき なので、
- よって
- 右側極限 4 と左側極限 が一致しないので、 は存在しない
問 2 極限 を求めよ。
2
方針 分母も分子も限りなく大きくなる の不定形。分母の最高次の項 で分母と分子を割ると、 や が 0 に近づく形になる。
- 分母と分子を で割る。
- のとき、、、 はどれも 0 に近づく
- よって極限は
問 3 極限 を求めよ。
2
方針 も も限りなく大きくなる の不定形。分母を 1 とみて分子を有理化すると、根号の中の が消えて の形になる。あとは で割る。
- 分母と分子に をかける。分子は
- 式は になる
- 分母と分子を で割る。 なので で、
- 式は になる
- のとき は 0 に近づくので、分母は に近づく
- よって極限は
ここで間違えやすい 「 だから 0」としない。 を入れると は約 1.98 で、0 ではなく 2 に近い。
問 4 極限 を求めよ。
方針 では で、 になるため符号を誤りやすい。 とおいて の極限に直せば、問 3 と同じ有理化で解ける。
- とおくと、 のとき
- 根号の中は
- 式は になる( の不定形)
- 分母と分子に をかける。分子は
- 式は になる
- 分母と分子を で割る。 なので で、式は
- のとき は 0 に近づくので、分母は に近づく
- よって極限は
ここで間違えやすい のまま で割って としない。 では なので、正しくは 。符号を落とすと分母が 0 に近づいてしまい、答えが出ない。
問 5 関数 について、 と を求めよ。
、
方針 の極限は底と 1 の大小で決まる。分母と分子を か で割って、0 に近づく形の指数関数だけを残す。 では が、 では が 0 に近づく。
- のとき。分母と分子を で割る。
- 底 は 1 より小さいので、 のとき は 0 に近づく
- よって
- のとき。分母と分子を で割る。
- 底 は 1 より大きいので、 のとき は 0 に近づく
- よって
ここで間違えやすい でも で割ると、 が限りなく大きくなって不定形のまま残る。割るのは「0 に近づく形が残るほう」。
問 6 極限 を求めよ。
0
方針 のとき の絶対値は限りなく大きくなり、 は と 1 の間を振動して極限をもたない。ただし値は 以上 1 以下におさまるので、はさみうちの原理が使える。
- すべての で なので、
- 両辺に をかけて、
- 絶対値を外すと、
- のとき、 も も 0 に近づく
- はさみうちの原理から、
ここで間違えやすい 「 と の積」に分けない。積の極限値の性質は両方の極限値が存在するときにしか使えず、 の極限は存在しない。