三角関数の極限
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学Ⅲ (1) 極限 ア (オ)「関数の値の極限について理解すること。」。このノートは、 を土台にして、三角関数を含む不定形の極限を求める方法を扱います。
0. どういうまとまりか
のとき も も 0 に近づくので、 は の不定形です。因数分解も有理化もできませんが、この極限は 1 になります。
三角関数を含む極限は、ほぼすべてこの 1 本の式に持ち込んで求めます。あとで学ぶ の導関数も、この極限から導きます。
| 極限 | 値 | 作り方 |
|---|---|---|
| 1 | 面積の比較とはさみうちの原理 | |
| 1 | ||
| 分母と分子に をかける | ||
| 0 | とはさみうちの原理 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 角は弧度法で測る。度数法のままでは極限が 1 にならない
- の中身と分母を同じ式にそろえる。 は 1 に近づかない( が 1 に近づく)
- 1 になるのは のとき。 では は 0 に近づく。近づく先が 0 でないときは置き換えで 0 に直す
1. の極限
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(1)-ア-(オ)
導き方は面積の比較です。半径 1 の円で、中心角 ()の扇形 OAB をとり、点 A での接線と直線 OB の交点を T とします。
三角形 OAB は扇形 OAB に含まれ、扇形 OAB は三角形 OAT に含まれるので、面積は 、つまり です。
各辺を (正)で割って逆数をとると 。 のとき は 1 に近づくので、はさみうちの原理から も 1 に近づきます。
のときは とおくと で、同じ値に近づきます。扇形の面積 は弧度法の式なので、ここで弧度法が効いています。
の値は?
1
の不定形だが、極限値は 1。逆数の も 1。
が成り立つのは、角 を何で測ったときか?
弧度法(ラジアン)
度数法で測ると、 度は ラジアンなので、極限は になる。
を導くとき、 で使う不等式は?
半径 1 の円で、三角形・扇形・接線で作る三角形の面積を比べて出す。 で割って逆数をとると となり、はさみうちの原理が使える。
2. そこから出る極限
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(1)-ア-(オ)
は に直し、 は をかけて に直します。どちらも を作るための変形です。
の値は?
1
で、 のとき も も 1 に近づく。
の値は?
と変形できる。 のとき は 2 に近づく。
を含む極限で、 の形を作るには何をかけるか?
分母と分子に をかける
となり、 が出てくる。
の値は?
0
で、 のとき に近づく。分母が のときの と取り違えない。
3. 形をそろえる・置き換える
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(1)-ア-(オ)
公式は「0 に近づくものの を、それと同じもので割ると 1 に近づく」と読みます。中身が でなくても使えます。
の値は?(、 は 0 でない定数)
。 のとき なので、 は 1 に近づく。
を のような式に使うとき、何をそろえるか?
の中身と分母を同じ式にそろえる。その式が 0 に近づくとき、 の形は 1 に近づく
は と直す。そろえるためにかけた数は、外で打ち消す。
のように、 が 0 でない値 に近づく三角関数の極限は、どう扱うか?
とおいて、 の極限に直す
を代入し、加法定理などで 、 の式に直す。 なら 、。
4. のときと、近似・図形
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(1)-ア-(オ)
同じ でも、 の近づく先が変わると極限も変わります。また が 1 に近づくことは、小さい角で と がほぼ等しいことを意味します。
の値は?
0
のとき で、両側が 0 に近づくので、はさみうちの原理から 0。 のときの 1 と取り違えない。
(弧度法)が 0 に近いとき、 は何とほぼ等しいか?
が 1 に近づくことの言いかえ。たとえば は約 0.0998 で、0.1 とほぼ等しい。
図形の量の比の極限も、長さや面積を の三角関数で表せば同じ形になります。半径 、中心角 (弧度法)の扇形では、弧の長さは 、面積は です。
練習問題
問 1 極限値 を求めよ。
方針 を使うには、 の中身 と分母が同じ式でなければならない。分母に を作り、余った数を外に出す。
- 分母を にそろえる。
- のとき なので、 は 1 に近づく
- よって極限値は
ここで間違えやすい のまま「 の形だから 1」や「」としない。 の中身が なら、分母も のときだけ 1 に近づく。
問 2 極限値 を求めよ。
方針 分子の には を、分母の には を組み合わせれば、どちらも 1 に近づく形になる。 と を作り、余った の比を外に出す。
- 形を作る。
- のとき なので、 は 1 に近づく
- のとき なので、 は 1 に近づき、その逆数 も 1 に近づく
- よって極限値は
問 3 極限値 を求めよ。
2
方針 の形には をかけて を作る。出てきた に合わせて、分母に を作る。
- 分母と分子に をかける。分子は
- 式は になる
- なので、
- 式は になる
- のとき、 は 1 に、 は 2 に近づく
- よって極限値は
2 倍角の公式 を使って、 としても同じ値が出る。
問 4 極限値 を求めよ。
方針 を代入すると の不定形。 の公式は 0 に近づく変数にしか使えないので、 とおいて の極限に直す。
- とおくと、 のとき 。また
- 分子は、加法定理から
- 分母は
- 式は になる
- のとき は 1 に近づくので、極限値は
ここで間違えやすい を として符号を落とすと、答えが になる。 が より少し大きいとき、分子は負・分母は正なので、値は負になるはず、と符号を確かめる。
問 5 極限値 を求めよ。
1
方針 のとき は 0 に近づく。 とおけば、0 に近づく変数 についての の形になる。
- とおくと、 のとき 。また
- 式は になる
- のとき は 1 に近づくので、極限値は 1
ここで間違えやすい 「 は 0 に近づくから答えは 0」としない。 が限りなく大きくなるので の不定形である。同じ でも は 0 に近づくので、式の形を見分ける。
問 6 半径 1 の円 O の周上に 2 点 A、B を、()となるようにとる。弧 AB(短いほう)の長さを 、弦 AB の長さを とし、A から線分 OB に下ろした垂線を AH とする。次の極限値を求めよ。(1) (2)
(1) 1 (2)
方針 それぞれの長さを で表せば、三角関数の極限の問題になる。弧の長さは半径と中心角の積、弦の長さは二等辺三角形 OAB を半分に割って求め、BH は で求める。
- 弧の長さは、半径 1、中心角 なので
- O から弦 AB に垂線を下ろすと、二等辺三角形 OAB は 2 つの合同な直角三角形に分かれる。それぞれの O での角は 、斜辺は 1 なので、弦の半分の長さは
- よって
- (1)
- のとき なので、この式は 1 に近づく。(1) の極限値は 1
- 直角三角形 OAH で、斜辺 、O での角が なので、
- なので、
- (2)
- 分母と分子に をかけて、
- のとき、 は 1 に、 は 2 に近づくので、(2) の極限値は
(1) は、中心角が小さいほど弦と弧の長さの比が 1 に近づく、つまり弦が弧とほぼ同じ長さになることを表している。