平均値の定理
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学Ⅲ (2) 微分法 ア (エ)「導関数を用いて,いろいろな曲線の接線の方程式を求めたり,いろいろな関数の値の増減,極大・極小,グラフの凹凸などを調べグラフの概形をかいたりすること。」。このノートは、導関数の符号から関数の増減が読める根拠になる平均値の定理と、その不等式への使い方を扱います。
0. どういうまとまりか
区間の両端を結ぶ直線の傾き(平均変化率)と同じ傾きの接線が、区間の途中のどこかで必ず引ける、というのが平均値の定理です。
「どこか」の場所 は分からなくても、 という範囲だけで の大きさが評価でき、それが不等式の証明や、導関数の符号と増減の関係の根拠になります。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 前提 | が閉区間 で連続、開区間 で微分可能 |
| 結論 | 、 を満たす実数 が存在する |
| 図形的な意味 | 両端の点を結ぶ直線と平行な接線が、区間の途中で引ける |
| 使いどころ | や の形を含む不等式・極限 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 前提は 2 つとも要る。閉区間で連続、開区間で微分可能。途中に微分可能でない点が 1 つあるだけで成り立たなくなることがある
- 定理が言うのは が「存在する」ことだけ。 の値も個数も言っていない(2 つ以上あることもある)
- 不等式に使うときは、 を求めようとしない。 から をはさむ
1. 平均値の定理
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(2)-ア-(エ)
の場合は「、 を満たす が存在する」という形になり、これをロルの定理といいます。平均値の定理は、それを両端の高さが違う場合に広げたものです。
平均値の定理の結論は?( は閉区間 で連続、開区間 で微分可能とする)
、 を満たす実数 が存在する
左辺は区間 での平均変化率、右辺は での微分係数。 は区間の端を含まない。
平均値の定理が成り立つための、関数 についての前提 2 つは?
閉区間 で連続であること、開区間 で微分可能であること
微分可能なら連続なので、 を含む区間で微分可能な関数なら 2 つとも満たす。端点 、 での微分可能性は要らない。
平均値の定理の図形的な意味は?
曲線 上の 2 点 、 を結ぶ直線 AB と平行な接線が、A と B の間の曲線上のどこかで引ける
直線 AB の傾きが 、接線の傾きが 。
平均値の定理を、 とおいて の式に書き直すと?
、 を満たす実数 が存在する
は と の間にあるので、()と表せる。この形は のときも成り立つ。
2. 条件を満たす c を求める
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(2)-ア-(エ)
具体的な関数と区間が与えられれば、 は方程式を解いて求められます。求めた が区間の内部にあることまで確かめます。
関数 と区間 について、平均値の定理の式を満たす の値は、どう求めるか?
平均変化率 を計算し、方程式 を解いて、 を満たす解だけを選ぶ
区間の外に出た解や、端点 、 と一致する解は捨てる。
平均値の定理の式を満たす は、1 つの区間にただ 1 つか?
1 つとは限らない。定理が保証するのは少なくとも 1 つ存在することだけ
、区間 では平均変化率が 0 で、 を満たす は と の 2 つある。
は区間 で連続だが、平均値の定理の式を満たす が存在しない。前提のどこが欠けているか?
で微分可能でないので、「開区間 で微分可能」が満たされない
平均変化率は 0 だが、 は で 、 で 1 で、0 になる点が無い。
3. 不等式の証明への利用
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(2)-ア-(エ)
の場所が分からなくても、 という範囲があれば を上下からはさめます。これが不等式になります。
不等式の証明で、平均値の定理を使うとよいのは、式にどんな形があるときか?
の形、または同じ関数の 2 つの値の差 があるとき
、、 のように、同じ関数に と を入れた差が目印。
平均値の定理で不等式を証明するとき、 の大きさはどうやって評価するか?
と の増減から、 を と ではさむ(または のように、 がどこにあっても成り立つ不等式を使う)
が減少するなら 、増加するなら 。 の値そのものは求めない。
4. 導関数の符号と増減の根拠
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(2)-ア-(エ)
「 なら増加する」は図から明らかに見えますが、証明は平均値の定理によります。区間内の 2 点 について と書けるからです。
「ある区間で常に ならば、 はその区間で増加する」は、平均値の定理からどう示されるか?
区間内の任意の 2 数 について、、 となる があり、、 だから
なら同じ式から となり、減少する。
ある区間で常に ならば、 はその区間でどんな関数か?
定数関数(その区間で一定の値をとる)
区間内の任意の 2 数 について となるので、。
ある区間で常に ならば、 と の関係は?
( は定数)
なので、差 がその区間で定数になる。不定積分に積分定数が付く理由でもある。
練習問題
問 1 関数 と区間 について、平均値の定理の式 、 を満たす の値を求めよ。
方針 左辺の平均変化率は数として計算できる。右辺は に を入れた式なので、 についての方程式になる。解いたあと、 を満たすことを確かめる。
- は で連続、 で微分可能なので、定理が使える
- 微分する。
- 平均変化率を求める。、 なので、
- 方程式は
- 逆数をとって なので、
- 両辺を 2 乗して、
- なので、区間の内部にある
問 2 関数 と区間 について、平均値の定理の式を満たす の値を求めよ。
方針 平均変化率を計算し、 と等しいとおいて を求める。 が にあることも確かめる。
- は で連続、 で微分可能なので、定理が使える
- 微分する。
- 、 なので、平均変化率は
- 方程式は
- よって
- は 2.718… なので は 1.718… で、 を満たす
問 3 のとき、不等式 が成り立つことを証明せよ。
に区間 で平均値の定理を使い、 を ではさむ
方針 中央の式は、 の区間 での平均変化率の形をしている。平均値の定理でこれを に置きかえ、 から の範囲を出す。
- とおく。 なので、 は で連続、 で微分可能
- 平均値の定理から、、 を満たす実数 が存在する
- で、正の数は大きいほど逆数が小さいので、
- 手順 3 の等式で を置きかえると、
ここで間違えやすい 手順 4 で逆数をとると不等号の向きが逆になる。 から としない。
問 4 すべての実数 、 について、不等式 が成り立つことを証明せよ。
に平均値の定理を使い、 を用いる( のときは両辺が 0)
方針 左辺は同じ関数 の 2 つの値の差なので、平均値の定理で と書ける。 がどこにあっても なので、それで評価する。定理は の形で使うので、 の場合を先に分けておく。
- のとき、左辺も右辺も 0 なので、不等式は等号で成り立つ
- のとき。 と を入れかえても両辺の値は変わらないので、 としてよい
- はすべての実数で微分可能なので、 で連続、 で微分可能。
- 平均値の定理から、、 を満たす実数 が存在する
- 分母をはらって、
- 両辺の絶対値をとると、
- なので、
- 、 なので、示すべき不等式が得られる
ここで間違えやすい の場合を落とさない。平均値の定理は の区間に対する定理なので、 のときは使えない。
問 5 極限 を求めよ。ただし、 のとき であることは用いてよい。
1
方針 分子は に と を入れた値の差、分母はその と の差なので、関数 の平均変化率の形になっている。平均値の定理で に置きかえ、 をはさみうちの原理で 0 に近づける。
- とおく。 はすべての実数で微分可能で、
- のとき なので、区間 で平均値の定理が使える
- 、 を満たす実数 が存在する
- のとき、 かつ
- なので、はさみうちの原理から
- は連続なので、 のとき
- よって、求める極限は 1