定積分と不等式
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学Ⅲ (3) 積分法 ア (ア)「不定積分及び定積分の基本的な性質についての理解を深め,それらを用いて不定積分や定積分を求めること。」。このノートは、関数の大小が定積分の大小に移るという性質と、それを使って定積分や和の値を不等式ではさむことを扱います。
0. どういうまとまりか
区間 で なら、 のグラフは のグラフより上にあるので、定積分も のほうが大きくなります。
この性質を使うと、不定積分が求められない関数でも、定積分の値を上下からはさむことができます。
また、 のような減少関数では、幅 1 の長方形の面積と曲線の下の面積を比べることで、和 を定積分ではさめます。
| 使う性質 | 式(、関数は連続) |
|---|---|
| 関数の大小と定積分の大小 | なら |
| 定数ではさむ | なら |
| 減少関数と長方形 | |
| 絶対値 |
分かれ目は次の 3 つ。
- が前提。上端のほうが小さい定積分では、不等号の向きが逆になる
- 等号が成り立つのは、区間でいつも のときだけ。1 点でも となるところがあれば(連続関数なら)定積分は等号なしの不等式になる
- 和をはさむときは、足し合わせる の範囲。上からはさむ式と下からはさむ式で、足す範囲が 1 つずれる
1. 関数の大小と定積分の大小
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(3)-ア-(ア)
、 は区間 で連続な関数とし、 とします。
区間 で常に のとき、 と の大小は?()
の定積分が 0 以上になることから出る。関数の不等式を、そのまま から まで積分してよい。
区間 で のとき、 の等号が成り立つのはどんなときか?(、 は連続、)
区間で常に のときだけ
区間のどこか 1 点でも なら、 と等号が外れる。端の 1 点だけで等しくても、定積分は等しくならない。
区間 で のとき、 の符号は?()
等号は、常に のときだけ。 で、0 でないところが少しでもあれば、定積分は正。
から が言えるための、上端と下端の条件は?
(下端のほうが小さい)
のときは、上端と下端を入れかえると符号が変わるので、不等号の向きが逆になる。
2. 定積分の値をはさむ
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(3)-ア-(ア)
のように、不定積分が高校で学ぶ関数では表せないものがあります。そのときは、積分できる関数で被積分関数をはさみます。
区間 で (、 は定数)のとき、 はどうはさめるか?()
定数 を から まで積分すると 。高さ と高さ の長方形の面積ではさんでいる。
定積分 の値を、積分を計算せずに不等式で評価するには、どうするか?(手順)
区間 で となる、積分できる関数 、 を見つけ、各辺を から まで積分する
等号が区間で常には成り立たないことを言えば、 と等号を外せる。
3. 和と定積分を比べる
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(3)-ア-(ア)
は で減少します。区間 (幅 1)の上で、曲線の下の面積は、高さ の長方形より小さく、高さ の長方形より大きくなります。
この不等式を について足し合わせると、和と定積分が比べられます。
自然数 について、 を と ではさむと?
で 。等号は端の 1 点だけなので、積分すると等号が外れる。区間の幅が 1 なので、両端はそのまま長方形の面積。
を から まで足し合わせると、どんな不等式になるか?
左辺の和は、区間がつながって になる。これを計算すると 。
を使って、 を上からおさえると?()
から まで足すと、 で、右辺は 。最初の 1 だけは別にして、あとで両辺に足す。
のとき、 は収束するか、発散するか?
正の無限大に発散する
で、 が正の無限大に発散するから。項 は 0 に収束するのに、和は発散する例。
で減少する連続関数 と自然数 について、 を と ではさむと?
区間 で 。幅が 1 なので、両端は長方形の面積。増加する関数なら不等号の向きが逆になる。
4. 絶対値と定積分
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(3)-ア-(ア)
が正にも負にもなるとき、定積分では正の部分と負の部分が打ち消し合います。絶対値をつけてから積分すれば打ち消しが起きないので、そのほうが大きくなります。
と の大小は?()
絶対値は、積分の中に入れると大きくなる(または変わらない)。 は 0 だが、 は 2。
は、どんな不等式を積分すると出るか?
各辺を から まで積分すると、。これは絶対値の不等式と同じこと。
練習問題
問 1 のとき が成り立つことを示し、これを用いて を示せ。
各辺を 2 乗して大小を比べ、各辺を 0 から 1 まで積分する(左端は 1、右端は になる)
方針 前半は、3 つの辺がどれも正なので、2 乗して比べればよい。後半は、関数の大小が定積分の大小に移ることを使う。等号が成り立つのは のときだけなので、積分すると等号が外れる。
- 3 つの辺を 2 乗すると、、、
- 右端を展開する。
- で 、 なので、
- 3 つの辺はもとの式でどれも正だから、2 乗の大小がそのまま成り立ち、。等号はどちらも のときだけ
- 各辺を 0 から 1 まで積分する。等号は常には成り立たないので、
- 左端は 1
- 右端は で、
- よって
問 2 のとき が成り立つことを用いて、 を示せ。
各辺を 0 から 1 まで積分すると、左から順に 、、1 になる
方針 真ん中の を 0 から 1 まで積分すると になる。両側の関数も積分できるので、各辺を積分すれば示したい不等式が出る。等号が常には成り立たないことを言って、等号を外す。
- 与えられた不等式を確かめる。 では なので、。逆数をとると大小が入れかわり、
- 左の等号は 、 のときだけ、右の等号は のときだけで、常には成り立たない
- 各辺を 0 から 1 まで積分する。
- 左端は で、
- 真ん中は とおく。、 で、 が 0 から 1 まで動くとき は 0 から まで動く
- よって真ん中は で、
- 右端は 1
- よって
問 3 すべての実数 について (等号は のときだけ)が成り立つ。これを用いて、 を示せ。
を作り、各辺を 0 から 1 まで積分する
方針 は不定積分が求められないので、積分できる関数ではさむ。与えられた不等式の に を入れると下からの評価が、 を入れて逆数をとると上からの評価が出る。
- とすると、
- とすると、。両辺とも正なので逆数をとると大小が入れかわり、
- 合わせて 。等号はどちらも のときだけ
- 各辺を 0 から 1 まで積分する。等号は常には成り立たないので、
- 左端は で、
- 右端は とおくと になり、
- よって
問 4 ( は自然数)とする。 を求めよ。
0
方針 を の式で表すのは難しいので、はさみうちの原理を使う。 では が 1 以上 以下なので、 を の定数倍ではさめる。 なら積分できる。
- のとき、 は増加関数なので
- 各辺に (0 以上)をかける。
- 各辺を 0 から 1 まで積分する。
- で、
- よって
- のとき、 も も 0 に収束する。はさみうちの原理により、
問 5 自然数 について が成り立つことを示し、これを用いて の整数部分を求めよ。
18
方針 は減少関数なので、幅 1 の区間で長方形の面積と比べられる。右側の不等式を から 100 まで足すと を下からおさえる式が、左側の不等式を から 99 まで足すと を上からおさえる式が出る。
- のとき、 なので、逆数をとって
- 等号は端の 1 点だけなので、各辺を から まで積分すると、(区間の幅が 1 なので、両端は定数のまま)
- 下からおさえる。右側の不等式を から 100 まで足すと、
- の不定積分は なので、 で、
- なので、。よって
- 上からおさえる。左側の不等式を から 99 まで足すと、
- 左辺は 。右辺は で、 が 10 なので
- よって 、すなわち
- なので、整数部分は 18
ここで間違えやすい 上からおさえるとき、左側の不等式を から足そうとしてしまう。 は で定義されないので、 から始めて、最初の項 1 は別に足す。
問 6 を 2 以上の自然数とするとき、 を示せ。
絶対値を積分の中に入れ、 を使って (値は )でおさえる
方針 は不定積分が求められない。絶対値を積分の中に入れる不等式を使えば、 で分子を 1 におきかえられ、積分できる が残る。
- 絶対値を中に入れる。
- で なので、
- 各辺を 1 から まで積分する。
- の不定積分は なので、
- 上端は 、下端は 。ひいて
- なので 。よって