等式と不等式の証明
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学Ⅱ (1) いろいろな式 イ (イ)「実数の性質や等式の性質,不等式の性質などを基に,等式や不等式が成り立つことを論理的に考察し,証明すること。」。
0. どういうまとまりか
式の証明は「どちらか一方をもう一方に変形する」か「差をとって 0 や正になることを示す」かのどちらかです。
不等式では、実数の平方は 0 以上という性質が土台になり、そこから平方の差で比べる方法、絶対値の不等式、
相加・相乗平均の関係が出てきます。等号がいつ成り立つかまで書いて、はじめて証明が終わります。
| 示したいこと | 基本の方針 | 使う性質 |
|---|---|---|
| 恒等式の係数を決める | 係数比較法・数値代入法 | 同じ次数の項の係数が等しい |
| 等式 | を変形して にする/ を示す | 条件式があれば文字を消去する |
| 不等式 | を示す | 実数の平方 |
| 根号・絶対値を含む不等式 | 両辺が 0 以上なら 2 乗の差で比べる | のとき |
| 和と積の不等式 | 相加・相乗平均の関係 | のとき |
分かれ目は次の 3 つ。
- 2 乗して比べてよいのは、両辺が 0 以上のときだけ
- 相加・相乗平均の関係は 、 のときにしか使えない。最小値に使うときは、等号が成り立つ値が実際にあるかを確かめる
- 数値代入法で求めた係数は必要条件。本当に恒等式になっているかを確かめる(または次数 + 1 個以上の値で成り立たせる)
1. 恒等式
根拠: 学習指導要領 数学Ⅱ-(1)-イ-(イ)
文字にどんな値を代入しても成り立つ等式を恒等式といいます。恒等式では両辺の同じ次数の項の係数が等しいので、係数を決めることができます。
恒等式とは? また、 が についての恒等式になる条件は?
文字にどんな値を代入しても成り立つ等式。条件は 、、(同じ次数の項の係数がすべて等しい)
方程式は特定の値でだけ成り立つ等式で、恒等式とは違う。
が についての恒等式となる 、、 は?(係数比較法)
、、
左辺を展開すると 。係数を比べて 、、 を解く。
数値代入法で恒等式の係数を求めたとき、最後に何を確かめるか?
求めた係数で、本当にすべての について成り立つ(恒等式になる)こと
いくつかの値で成り立つことは恒等式であるための必要条件にすぎない。 次式どうしなら、異なる 個の値で成り立てば恒等式になる。
2. 等式の証明
根拠: 学習指導要領 数学Ⅱ-(1)-イ-(イ)
等式の証明は、一方の辺を変形してもう一方にするか、両辺をそれぞれ変形して同じ式にするか、差が 0 になることを示します。
条件つきの等式「 のとき 」は、どう証明するか?
条件式から として 1 文字を消去し、両辺がともに になることを示す
条件式があるときは、条件を使って文字を減らしてから、両辺を比べる。
比例式 を条件とする等式の証明で、最初に何をおくか?
とおき、、 として 、 を消去する
両辺をそれぞれ 、、 で表し、同じ式になることを示す。
3. 不等式の証明
根拠: 学習指導要領 数学Ⅱ-(1)-イ-(イ)
不等式 は、差 が 0 以上になることを示します。差を平方の形に変形できれば、実数の平方が 0 以上であることが使えます。
不等式 を証明するときの基本の方針は?
差 を変形して、 を示す
を因数分解する、平方完成して平方の和にする、などの変形をする。
実数の平方について成り立つ性質と、その等号成立条件は?
実数 について (等号は のとき)。(等号は のとき)
差を平方の和の形に変形できれば、この性質で不等式が示せる。例えば 。
、 のとき のような、根号を含む不等式はどう証明するか?
両辺が正であることを確かめてから、2 乗の差をとる
。 のとき なので、2 乗どうしを比べてよい。
4. 絶対値の不等式
根拠: 学習指導要領 数学Ⅱ-(1)-イ-(イ)
絶対値を含む不等式は、両辺が 0 以上なので 2 乗して比べられます。そのとき絶対値の基本の性質を使います。
絶対値の基本の性質は?(証明で使うもの)
、、、、
を使うと、絶対値の不等式を 2 乗して比べるときに絶対値が外せる。
不等式 はどう証明するか? また、等号が成り立つのはいつか?
両辺とも 0 以上なので 2 乗の差をとる。。等号は のとき
を使う。等号は 、つまり と が同符号か一方が 0 のとき。
5. 相加・相乗平均の関係
根拠: 学習指導要領 数学Ⅱ-(1)-イ-(イ)
2 つの正の数の和と積を結ぶ不等式です。一方が決まっているとき、もう一方の最大・最小が分かります。
相加・相乗平均の関係とは? 等号が成り立つのはいつか?
、 のとき ()。等号は のとき
から示せる。 を相加平均、 を相乗平均という。
のとき、 の最小値は? 相加・相乗平均の関係を使うときの注意は?
最小値は 2( のとき)。等号が成り立つ が実際にあることを確かめる
。等号は 、つまり のとき。2 回使う問題では、2 つの等号が同時に成り立たないことがある。
練習問題
根拠: 学習指導要領 数学Ⅱ-(1)-イ-(イ)
問 1 が についての恒等式となるように、定数 、、 の値を求めよ。
、、
方針 恒等式では、両辺の同じ次数の項の係数が等しい。右辺を展開して について整理し、左辺の係数と比べる(係数比較法)。
- を使って右辺を展開する。
- について整理すると、
- 左辺 と係数を比べる。 の係数から 、 の係数から 、定数項から
- を に代入すると なので、
- 、 を に代入すると なので、
別解(数値代入法): を代入すると右辺は だけが残り、左辺は なので 。 を代入して 、 を代入して 。 を入れると 、 となり、足して から 、。数値代入法で出した値は必要条件なので、この値で恒等式になること(右辺を展開すると左辺に一致すること)を確かめる。
問 2 のとき、 を証明せよ。
とおくと、両辺とも になる
方針 比例式が条件のときは、その比の値を とおくのが定石。、 として と を消し、左辺と右辺を別々に計算して、同じ式になることを示す。
- とおく。分母を払うと 、
- 左辺に代入する。
- 分子を でくくると 。 で約分して、左辺は
- 右辺に代入する。。 で約分して、右辺は
- 左辺も右辺も になるので、等式が成り立つ。
問 3 不等式 を証明せよ。また、等号が成り立つのはどのようなときか。
差が 。等号は のとき
方針 不等式 は、差 が 0 以上であることを示す。差を「平方の和」に変形できれば、実数の平方は 0 以上なので示せる。 と が出てくるので、平方完成をねらう。
- 左辺から右辺を引いて展開する。
- 定数の 2 を 1 と 1 に分け、 の項と の項をそれぞれまとめる。
- それぞれを平方の形にする。
- 実数の平方は 0 以上なので 、。よって となり、 が成り立つ。
- 等号が成り立つのは、2 つの平方がどちらも 0 のとき。 かつ から、 のとき。
問 4 、 のとき、不等式 を証明せよ。また、等号が成り立つのはどのようなときか。
両辺は正なので 2 乗の差が 。等号は のとき
方針 根号を含む不等式は、そのまま差をとっても変形しにくい。両辺が正なら「2 乗の大小」と「元の大小」が一致するので、2 乗どうしの差が 0 以上になることを示す。
- 、 なので、左辺 も右辺 も正である。
- 左辺の 2 乗は
- 右辺の 2 乗は
- 2 乗どうしの差をとる。
- 、、 なので、
- よって 。両辺は正なので、
- 等号が成り立つのは 、つまり のとき。
ここで間違えやすい 「両辺が正である」と断らずに 2 乗すること。負の数が混ざると、2 乗の大小と元の大小は一致しない( だが )。
問 5 のとき、 の最小値を求めよ。
最小値 6( のとき)
方針 と は、掛けると が消えて定数 9 になる。「正の 2 数の和で、積が一定」なので、相加・相乗平均の関係 が使える。
- なので でもある。2 数とも正だから、相加・相乗平均の関係が使える。
- に 、 に を入れて、
- 根号の中は なので、右辺は 。よって
- 等号が成り立つのは のとき。両辺に を掛けて 。 なので
- のとき実際に となるので、最小値は 6
ここで間違えやすい を示しただけでは「6 以上」としか言えない。等号が成り立つ が実際にあることを確かめて、はじめて 6 が最小値になる。
問 6 、 のとき、不等式 を証明せよ。また、等号が成り立つのはどのようなときか。
展開して に相加・相乗平均の関係を使う。等号は のとき
方針 そのままでは和と積の形が見えないので、まず左辺を展開する。すると と という「掛けると定数になる正の 2 数」が現れるので、そこに相加・相乗平均の関係を使う。
- 左辺を展開する。
- 各項を計算すると 。まとめて、左辺は
- 、 なので 、。相加・相乗平均の関係から、
- 根号の中は なので、右辺は 。よって
- 両辺に 5 を足して、。左辺はもとの式に等しいので、不等式が成り立つ。
- 等号が成り立つのは のとき。両辺に を掛けて 。 なので、 のとき。
ここで間違えやすい 展開せずに と を掛けると、 しか出ない。1 つ目の等号は ()、2 つ目の等号は ()のときで、2 つが同時に成り立たないため、8 は最小値にならない。