散布図と相関係数
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学Ⅰ (4) データの分析 ア (ア)「分散,標準偏差,散布図及び相関係数の意味やその用い方を理解すること」。
0. どういうまとまりか
ここまでは 1 つの変量の散らばりを見てきました。ここでは、身長と体重のように2 つの変量の関係を見ます。
図で見るのが散布図、1 つの数で表すのが相関係数です。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 散布図 | 2 つの変量の値の組を、座標平面上の点で表した図 |
| 正の相関 | 一方が大きいほど他方も大きい傾向。点が右上がりに並ぶ |
| 負の相関 | 一方が大きいほど他方は小さい傾向。点が右下がりに並ぶ |
| 共分散 | 偏差の積の平均値。符号で相関の向きが分かる |
| 相関係数 | 。 で、直線的な関係の強さを表す |
分かれ目は次の 3 つ。
- 共分散は単位やデータの大きさで値が変わる。強さを比べるときは相関係数を使う
- は「直線的な関係がない」だけ。曲線的な関係はあり得る
- 相関があっても、一方が他方の原因とは限らない
1. 散布図と相関
根拠: 学習指導要領 数学Ⅰ-(4)-ア-(ア)
2 つの変量 の値の組 を座標平面上の点で表した図を散布図といいます。
点が右上がりの直線に沿って並ぶほど正の相関が強く、右下がりの直線に沿って並ぶほど負の相関が強いといいます。
散布図とは何か?
2 つの変量の値の組を、座標平面上の点で表した図
を横軸、 を縦軸にとり、1 組のデータを 1 つの点で表す。
正の相関と負の相関の違いは?
正の相関:一方が大きいほど他方も大きい(右上がり)
負の相関:一方が大きいほど他方は小さい(右下がり)
どちらの傾向も見られないときは「相関がない」という。
散布図で「相関が強い」とは、点がどうなっていることか?
点が 1 本の直線の近くに集まっていること
直線の傾きの大きさではない。傾きが緩やかでも、点が直線の近くに集まっていれば相関は強い。
2. 共分散と相関係数
根拠: 学習指導要領 数学Ⅰ-(4)-ア-(ア)
の偏差と の偏差の積の平均値を共分散といいます。
点 を中心に平面を 4 つに分けると、右上と左下の点は偏差の積が正、左上と右下の点は負になります。
共分散は単位のとり方で値が変わるので、それぞれの標準偏差で割って単位をなくしたものを相関係数といいます。
共分散 の定義は?
の偏差と の偏差の積の平均値
共分散が正になるのは、散布図の点がどこに多いときか?
点 から見て右上と左下に多いとき
そこでは の偏差と の偏差が同じ符号で、積が正になる。右上がりの傾向=正の相関。
相関係数 を求める式は?
は共分散、・ は ・ の標準偏差(分散ではない)。
相関係数 のとる値の範囲は?
に近いほど強い正の相関、 に近いほど強い負の相関、 に近いほど直線的な相関が弱い。
相関係数が (または )になるのは、散布図がどうなるときか?
すべての点が、右上がり(または右下がり)の 1 本の直線上にあるとき
強さを比べるとき、共分散ではなく相関係数を使うのはなぜか?
共分散は単位のとり方で値が変わるが、相関係数は単位によらない(単位のない数)
cm を mm にすると共分散は 10 倍になるが、相関係数は変わらない。
相関係数が に近いとき、2 つの変量には関係がないと言えるか?
言えない。直線的な関係が弱いだけ
のような曲線に沿って並ぶデータでも、相関係数が 0 になることがある。散布図も見る。
3. 相関と因果
根拠: 学習指導要領 数学Ⅰ-(4)-ア-(ア)
相関係数は「一緒に増える・減る」傾向を表すだけで、どちらが原因かは表しません。
2 つの変量の両方に影響する別の変量があると、直接の関係がないのに相関が現れます。これを見かけの相関(疑似相関)といいます。
相関があれば、一方が他方の原因(因果関係)だと言えるか?
言えない
相関は傾向を表すだけ。原因と結果の関係かどうかは、データの外の事情も調べて判断する。
見かけの相関とは何か?
2 つの変量の両方に影響する別の変量があるために現れる、直接の関係によらない相関
小学生の足の大きさと漢字の書き取りの点数の相関は、学年(年齢)という別の変量で説明できる。
練習問題
問 1 5 組のデータ が である。共分散と相関係数を求めよ。
共分散 1.6、相関係数 0.8
方針 相関係数は なので、要るのは共分散と、・ の標準偏差の 3 つ。どれも偏差から作るので、まず平均値を出し、偏差・偏差の積・偏差の 2 乗を 1 つの表にまとめる。
- 平均値を出す。 は 、 は
- 各組について、偏差(値 − 平均値)と、その積・2 乗を表にする(下の表)。
- 共分散は偏差の積の平均値。積の合計は なので、
- の分散は なので、標準偏差は
- の分散は なので、標準偏差は
- 共分散を標準偏差の積で割って、
| の偏差 | の偏差 | 偏差の積 | の偏差の 2 乗 | の偏差の 2 乗 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | |||||
| 2 | 4 | |||||
| 3 | 3 | |||||
| 4 | 6 | |||||
| 5 | 5 | |||||
| 合計 |
ここで間違えやすい 分母は標準偏差の積で、分散の積ではない。 としない。
問 2 変量 の標準偏差が 、、共分散が のとき、相関係数を求めよ。どんな相関があるか。
。弱い負の相関
方針 標準偏差と共分散がそのまま与えられているので、定義の式 に入れる。相関の向きは の符号で、強さは が や にどれだけ近いかで読む。
- 分母は標準偏差の積で、
- 共分散をこれで割って、
- 符号が負なので、負の相関。 は より に近いので、弱い。
問 3 5 組のデータ が である。相関係数を求めよ。
方針 相関係数 に要るのは、共分散と ・ の標準偏差。 の値が大きくても手順は同じで、平均値、偏差、偏差の積と 2 乗の順に表にまとめる。
- 平均値を出す。 は 、 は
- 各組について、偏差と、その積・2 乗を表にする(下の表)。
- 偏差の積の合計は なので、共分散は
- の分散は なので、標準偏差は
- の分散は なので、標準偏差は
- 標準偏差の積は、根号の中をまとめて
- 共分散をこれで割って、
| の偏差 | の偏差 | 偏差の積 | の偏差の 2 乗 | の偏差の 2 乗 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 10 | 3 | |||||
| 20 | 4 | |||||
| 30 | 5 | |||||
| 40 | 2 | |||||
| 50 | 1 | |||||
| 合計 |
問 4 5 組のデータ が である。相関係数を求め、2 つの変量の関係について言えることを答えよ。
。ただし という決まった関係がある
方針 相関係数の分子は共分散なので、まず共分散を求める。共分散が 0 なら、分母を計算しなくても と分かる。そのうえで、データそのものを見て、 と の間の決まりを探す。
- 平均値を出す。 は 、 は
- の偏差は 、 の偏差(値 − 2)は
- 偏差の積の合計は
- 共分散は 。分子が 0 なので、
- 一方、5 組とも は の 2 乗になっている(、、、、)。つまり
相関係数が 0 でも「関係がない」とは言えない例。相関係数が測るのは、直線的な関係の強さだけ。
が負の側では右下がり、正の側では右上がりに並ぶので、偏差の積が打ち消し合って 0 になった。散布図を描けば放物線の形が見える。
問 5 都道府県ごとのデータで、コンビニエンスストアの店舗数と交通事故の件数の間に強い正の相関があった。「コンビニを減らせば交通事故が減る」と言えるか。
言えない
方針 相関があることと、一方が他方の原因であることは別。まず「両方に影響する別の変量がないか」を探す。
- 店舗数も事故の件数も、人口が多い都道府県ほど多くなる。
- つまり、人口という別の変量が両方を大きくしていて、店舗数と事故の件数は一緒に増えて見えるだけ(見かけの相関)と考えられる。
- 店舗数が事故の原因だとは言えないので、コンビニを減らせば事故が減るとは言えない。