分散と標準偏差
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学Ⅰ (4) データの分析 ア (ア)「分散,標準偏差,散布図及び相関係数の意味やその用い方を理解すること」と、
(イ)「コンピュータなどの情報機器を用いるなどして,データを表やグラフに整理したり,分散や標準偏差などの基本的な統計量を求めたりすること」。
0. どういうまとまりか
中学では、データの中心を代表値で、散らばりを範囲や四分位範囲で表しました。まず復習です。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 平均値 | データの値の合計 ÷ データの個数。 と書く |
| 中央値 | 小さい順に並べたときの真ん中の値(偶数個なら真ん中 2 つの平均) |
| 最頻値 | 最も多く現れる値(度数分布表では度数が最大の階級の階級値) |
| 四分位数 | 小さい順に並べて 4 等分する位置の 3 つの値(第 1・第 2・第 3 四分位数) |
| 四分位範囲 | 第 3 四分位数 − 第 1 四分位数 |
| 箱ひげ図 | 最小値・第 1 四分位数・中央値・第 3 四分位数・最大値を 1 つの図にしたもの |
四分位範囲は真ん中の約半分しか見ません。数学Ⅰでは、すべての値が平均値からどれだけ離れているかを 1 つの数にまとめる
分散と標準偏差を学びます。
分かれ目は次の 3 つ。
- 偏差の合計は必ず 0。だから 2 乗してから平均する
- 分散は 2 通りで求まる。「偏差の 2 乗の平均」と「2 乗の平均 − 平均の 2 乗」
- 分散の単位は元の単位の 2 乗、標準偏差は元と同じ単位
1. 偏差と分散
根拠: 学習指導要領 数学Ⅰ-(4)-ア-(ア)
変量 の 個の値を 、平均値を とします。
各値から平均値を引いた を偏差といいます。偏差をそのまま平均すると 0 になってしまうので、
2 乗してから平均したものを散らばりの大きさとします。これが分散です。
たとえば 5, 7, 8, 9, 11 の平均値は 8、偏差は で、分散は です。
偏差とは何か?
各値から平均値を引いた値
平均値より大きい値の偏差は正、小さい値の偏差は負になる。
偏差の合計(すべての偏差を足したもの)は、いつもいくつになるか?
0
平均値より大きい側と小さい側で打ち消し合う。だから偏差をそのまま平均しても散らばりは測れない。
分散の定義は?
偏差の 2 乗の平均値
。2 乗すれば負の偏差も正になり、打ち消し合わない。
データの個数が のとき、偏差の 2 乗の合計を何で割ると分散になるか?(数学Ⅰの定義)
(データの個数)
で割るのは別の目的の量で、数学Ⅰの分散では使わない。
分散が 0 になるのは、どんなデータか?
すべての値が等しいデータ
偏差がすべて 0 のときだけ、偏差の 2 乗の合計が 0 になる。
2. 標準偏差と使い分け
根拠: 学習指導要領 数学Ⅰ-(4)-ア-(ア)
分散は偏差を 2 乗しているので、単位も 2 乗になります(cm のデータなら cm²)。
元のデータと同じ単位にそろえるため、分散の正の平方根をとったものを標準偏差といいます。
分散・標準偏差はすべての値を使うので、データ全体の散らばりを表せます。その代わり、飛び離れた値に強く引きずられます。
標準偏差の定義は?
分散の正の平方根
上の例(分散 4)なら標準偏差は 2。
分散と標準偏差の単位は、それぞれどうなるか?
分散は元の単位の 2 乗、標準偏差は元のデータと同じ単位
身長(cm)のデータなら、分散は cm²、標準偏差は cm。平均値と並べて比べられるのは標準偏差のほう。
散らばりの大きさを、平均値と組にして表すときは何を使い、中央値と組にして表すときは何を使うか?
平均値には標準偏差(分散)、中央値には四分位範囲
標準偏差は平均値からの離れ具合で測る。四分位範囲は四分位数で測り、外れ値の影響を受けにくい。
平均値が同じ 2 つのデータで、標準偏差が大きいほうはどんなデータか?
平均値のまわりに値が広く散らばっているデータ
標準偏差が小さいほど、値が平均値の近くに集まっている。
3. 統計量を求める
根拠: 学習指導要領 数学Ⅰ-(4)-ア-(イ)
平均値・分散・標準偏差のように、データの特徴を表す数を統計量といいます。
分散は、偏差を計算しなくても、2 乗の平均値から平均値の 2 乗を引いて求められます。
5, 7, 8, 9, 11 なら 2 乗の平均値は で、。定義で求めた値と一致します。
平均値が整数にならないときは、こちらのほうが計算が楽です。個数の多いデータは、コンピュータ(表計算ソフトなど)で求めます。
分散を「2 乗の平均値」と「平均値」から求める式は?
(2 乗の平均値 − 平均値の 2 乗)
順番を逆にしない。「平均値の 2 乗 − 2 乗の平均値」だと分散に − を付けた値(0 以下)になる。
度数分布表(値 の度数が 、度数の合計が )から平均値を求める式は?
値と度数の積を合計して、度数の合計で割る。分散も同じく、偏差の 2 乗に度数を掛けて合計し、 で割る。
統計量とは何か?(例を 3 つ)
データの特徴を表す数。平均値・分散・標準偏差など
中央値・四分位数・範囲・四分位範囲・相関係数も統計量。
練習問題
問 1 データ 5, 7, 8, 9, 11 の平均値、分散、標準偏差を、定義どおりに求めよ。
平均値 8、分散 4、標準偏差 2
方針 「定義どおり」なので、まず平均値を出し、各値の偏差(値 − 平均値)、偏差の 2 乗の順に表を作る。分散は偏差の 2 乗の平均値、標準偏差はその正の平方根。
- 合計を個数で割って平均値を出す。 なので、平均値は
- 各値から平均値 8 を引いて偏差を出し、それぞれ 2 乗する(下の表)。
- 偏差の 2 乗の合計は 。これを個数 5 で割って、分散は
- 標準偏差は分散の正の平方根なので、
| 値 | 5 | 7 | 8 | 9 | 11 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 偏差 | ||||||
| 偏差の 2 乗 |
問 2 データ 3, 4, 6, 7, 10 の分散を、「2 乗の平均値 − 平均値の 2 乗」で求めよ。また標準偏差を求めよ。
分散 6、標準偏差
方針 「2 乗の平均値 − 平均値の 2 乗」を使うので、偏差は出さない。要るのは、値の平均値と、値を 2 乗したものの平均値の 2 つ。
- 平均値を出す。 なので、
- 各値を 2 乗して合計する。
- 2 乗の平均値は
- 分散は「2 乗の平均値 − 平均値の 2 乗」なので、
- 標準偏差は分散の正の平方根なので、
確かめ(定義どおり):偏差は で、2 乗の合計は 、分散は 。一致する。
ここで間違えやすい 引くのは「平均値の 2 乗」の で、平均値の 6 そのものではない。
問 3 A 班の得点は 6, 8, 10, 12, 14、B 班の得点は 9, 10, 10, 10, 11 である。平均値と分散を比べ、どちらの班の得点が散らばっているか答えよ。
平均値はどちらも 10。分散は A 班 8、B 班 0.4 で、A 班のほうが散らばっている
方針 散らばりは分散で比べる。班ごとに、平均値、偏差、偏差の 2 乗の順に求め、分散が大きいほうが散らばっている。
- A 班の平均値を出す。 なので、
- B 班の平均値を出す。 なので、。平均値は同じになる。
- A 班の偏差(値 − 10)は 。2 乗の合計は なので、分散は
- B 班の偏差は 。2 乗の合計は なので、分散は
- なので、A 班のほうが散らばっている。
平均値だけでは違いが分からない例。
問 4 ある 10 人が 1 週間に読んだ本の冊数を調べた。1 冊が 2 人、2 冊が 3 人、3 冊が 4 人、4 冊が 1 人だった。平均値と分散を求めよ。
平均値 2.4 冊、分散 0.84
方針 同じ値の人が何人もいるので、「冊数 × 人数」を合計して全体の人数 10 で割る。平均値が小数になるので、分散は偏差を使わず「2 乗の平均値 − 平均値の 2 乗」で求める。
- 冊数 と人数 を表にまとめ、 と の行を足す(下の表)。
- 冊数の合計は なので、平均値は
- 冊数の 2 乗の合計は なので、2 乗の平均値は
- 平均値の 2 乗は
- 分散は
| 冊数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 人数 | 2 | 3 | 4 | 1 | 10 |
| 2 | 6 | 12 | 4 | 24 | |
| 2 | 12 | 36 | 16 | 66 |
ここで間違えやすい 割る数は値の種類の数 4 ではなく、人数の合計 10。また、2 乗するのは冊数だけで、人数は 2 乗しない。
問 5 平均値 6、分散 4 の 5 個のデータに、値 6 を 1 個加えた。6 個のデータの平均値と分散を求めよ。
平均値 6、分散
方針 もとの 5 個の値は分からないが、平均値からは「合計」が、分散からは「偏差の 2 乗の合計」が逆算できる(どちらも個数を掛ければよい)。そこに加えた 1 個の分を足して、6 個で割り直す。
- もとの合計は「平均値 × 個数」で、
- 値 6 を加えた合計は なので、新しい平均値は 。平均値は変わらない。
- もとの偏差の 2 乗の合計は「分散 × 個数」で、
- 平均値が 6 のままなので、もとの 5 個の偏差は変わらない。加えた値の偏差は で、その 2 乗は
- 新しい偏差の 2 乗の合計は 。これを 6 個で割って、分散は
平均値と同じ値を加えると、散らばりは小さくなる(分散は 4 から へ)。
ここで間違えやすい 割る数を 5 のままにしない。偏差の 2 乗の合計が同じでも、個数が 6 に増えたので分散は小さくなる。