金融のしくみと日本銀行
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「政治・経済」A (1) ア (イ) の「金融の働きと仕組み」。内容の取扱いは、ここで金融に関する技術変革と企業経営に関する金融の役割にも触れるよう求めています。
直接金融と間接金融、信用創造の名前、日本銀行の 3 つの役割、公開市場操作の向きは公共でも扱います。ここでは信用創造を数えること、日本銀行の金融政策の手段がそれぞれいまどう位置づけられているか、
日本銀行の独立性、金融の自由化、フィンテックなどの技術変革まで扱います。
日本銀行の目的と理念は 2026-09-27 に e-Gov 法令検索の日本銀行法 1 条・2 条と、金融政策の手段の位置づけは同日に日本銀行のサイト(「教えて!にちぎん」の公定歩合・準備預金制度・金融市場調節の項)と突き合わせました。
0. 何を押さえるか
金融は、お金が余っているところから足りないところへ資金を融通することです。銀行は預金を集めて貸し出すことで、世の中に出回るお金(預金)を増やします。
日本銀行は日本の中央銀行で、「銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行う」ことを目的とし(日本銀行法 1 条)、その理念は「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」です(同 2 条)。
| 金融政策の手段 | いまの位置づけ |
|---|---|
| 公開市場操作(オペレーション) | 金融市場調節の中心。国債などの売買や資金の貸付けで、市場の資金量と短期金利に働きかける |
| 基準貸付利率(かつての公定歩合) | もう政策金利ではない。補完貸付制度の金利として、短期市場金利の上限を画する |
| 預金準備率操作 | 準備率は 1991 年 10 月を最後に変えられておらず、いまは金融政策の手段として使われていない |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 公定歩合はもう政策金利ではない。いまの操作目標は短期の市場金利(無担保コールレート・オーバーナイト物)
- 買いオペ(日本銀行が国債などを買う)は資金を供給して金利を下げる(金融緩和)。売りオペはその逆(金融引締め)
- 信用創造で増えるのは預金。準備率が低いほど、生み出される預金は多くなる
政策金利の水準や、日本銀行が持つ国債の額は、金融政策決定会合のたびに変わりうるので、カードの答えにしていません(最新の値は日本銀行の「金融市場調節方針」の公表文で確かめてください)。
1. 金融の働きと仕組み
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(イ)
銀行は、預金の一部だけを支払いに備えて手元(日本銀行の当座預金など)に残し、残りを貸し出します。貸し出されたお金はまた別の銀行に預金され、その一部がまた貸し出されます。
これをくり返すと、最初の預金(本源的預金)の何倍もの預金が生まれます。これが信用創造です。
本源的預金が 100 万円、預金準備率が 10 % のとき、信用創造によって新たに生み出される預金はいくらか(すべて預金され、銀行は準備以外をすべて貸し出すとする)?
900 万円
預金の総額は 100 ÷ 0.1 = 1,000(万円)。そこから最初の 100 万円を引いた 1,000 − 100 = 900(万円)が、新たに生み出された分。
戦後の日本で、企業が資金の多くを銀行からの借入れに頼り、特定の銀行(メインバンク)と長く結びついていた資金調達の形は、直接金融と間接金融のどちらが中心だったか?
間接金融
1980 年代以降、株式や社債で市場から直接資金を集める直接金融の比重が高まっていった。
金融機関を除く企業・個人・地方公共団体などが持つ通貨(現金と預金など)の量を何という?
マネーストック
日本銀行が統計を作っている。日本銀行が供給する現金と日銀当座預金の合計は、マネタリーベースという。
2. 日本銀行と金融政策
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(イ)
日本銀行の金融政策は、政策委員会が開く金融政策決定会合で決まります。
かつては公定歩合を上げ下げする政策、預金準備率を変える政策も使われましたが、いまは公開市場操作による金融市場調節が中心です。
かつての「公定歩合」は、現在はどう呼ばれ、どんな役割を持っているか?
基準貸付利率(基準割引率および基準貸付利率)。補完貸付制度の金利として、無担保コールレート(オーバーナイト物)の上限を画する
金利の自由化が進んで、預金金利などと公定歩合の連動がなくなり、公定歩合は政策金利としての役割を終えた。
金融機関に、預金の一定割合以上を日本銀行に預けるよう義務づける制度で、その割合を上げ下げして金融を調節する手段は、いまの日本でも使われているか?
使われていない(準備率は 1991 年 10 月を最後に変更されていない)
準備預金制度そのものは残っている。短期金融市場が発達した主要国では、準備率操作は金融緩和・引締めの手段として使われていない。
1997 年に全面的に改正された日本銀行法(1998 年施行)で強められた、日本銀行が政府から離れて金融政策を決めることができる性質を何という?
日本銀行の独立性(中立性)
あわせて、政策を決める過程を国民に明らかにする透明性も求められた。金融政策は、政策委員会の金融政策決定会合で多数決により決まる。
2001 年に日本銀行が導入した、金利ではなく金融機関が日本銀行に持つ当座預金の残高(資金の量)を操作目標にした政策を何という?
量的緩和政策
短期金利がすでにほぼ 0 % まで下がり、金利を下げる余地がなくなっていたため。2006 年に解除された。
3. 金融の自由化と金融に関する技術変革
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(イ)
戦後の日本の金融は、金利や業務の範囲を国が細かく決め、弱い金融機関も守る「護送船団方式」で運営されてきました。
1990 年代にはこれを改め、金利と業務の自由化が進みました。さらに、情報通信の技術が金融の姿を大きく変えつつあります(金融に関する技術変革)。
1996 年から進められた、「フリー・フェア・グローバル」を掲げて金融市場を自由で国際的なものに変えようとした大規模な改革を何という?
日本版金融ビッグバン
銀行・証券・保険の垣根を低くし、手数料を自由化した。金融機関の破綻が相次いだ時期と重なる。
金融機関が破綻したとき、預金保険制度による保護が元本の一定額とその利息までに限られ、それを超える預金には払い戻しの保証がないことを何という。2002 年から段階的に始まったこのしくみは、2005 年に普通預金などにも広げられた。
ペイオフ
保護される上限は、1 金融機関ごとに預金者 1 人あたり元本 1,000 万円とその利息(2026 年時点)。利息の付かない決済用預金は全額が保護される。
金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた言葉で、スマートフォンの決済や AI を使った資産運用など、情報通信技術を使った新しい金融サービスを何という?
フィンテック(FinTech)
学習指導要領が扱うよう求める「金融に関する技術変革」の中心の一つ。現金を使わないキャッシュレス決済の広がりも、その一つ。
インターネット上でやりとりされ、国や中央銀行が発行していない財産的価値で、日本の法律で 2020 年から「仮想通貨」に代えて使われている呼び名は?
暗号資産
資金決済に関する法律の改正で呼び名が変わった。取引の記録を多数のコンピューターで分散して管理するブロックチェーンという技術が使われている。価格の変動が大きい。