地方自治
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「政治・経済」A (1) ア (ア) の「地方自治」。
地方自治の本旨と直接請求の基本に加えて、地方公共団体の事務の区分と国との争いの解決、住民による監査と住民投票、
大都市の制度、地方財政の立て直しのしくみまで扱います。
条文は 2026-09-27 に e-Gov 法令検索の日本国憲法・地方自治法と突き合わせました。
0. 何を押さえるか
憲法 92 条は、地方公共団体の組織と運営を「地方自治の本旨」に基づいて法律で定めるとしています。本旨とは、
地方のことを国から独立した団体が決める団体自治と、その団体の運営に住民が参加する住民自治です。
| 地方公共団体の事務(2000 年から) | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 自治事務 | 法定受託事務以外のすべて。地方公共団体が自らの判断で行う | 都市計画、学校、介護保険、飲食店の営業許可 |
| 法定受託事務 | 本来は国(または都道府県)が果たすべき役割だが、法律で地方公共団体に任せたもの | 国政選挙の事務、旅券(パスポート)の交付、戸籍 |
| 地方の歳入 | 区分 | 使い道 |
|---|---|---|
| 地方税 | 自主財源 | 自由 |
| 地方交付税 | 依存財源 | 自由(一般財源) |
| 国庫支出金 | 依存財源 | 国が指定する(特定財源) |
| 地方債 | 依存財源 | 主に公共施設の建設など |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 住民監査請求は住民 1 人でもできる。有権者の 50 分の 1 以上の署名が要るのは、直接請求としての事務の監査請求
- 条例に基づく住民投票の結果には、法的な拘束力が無い。拘束力があるのは、憲法 95 条の特別法の住民投票
- 地方交付税は使い道が自由、国庫支出金は使い道が決まっている
1. 地方自治の本旨と国との関係
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(ア)
戦前の府県は国の出先機関に近く、知事も国が任命する官選でした。日本国憲法は地方自治に独立の章(第 8 章)を置き、
1947 年から知事も住民の直接選挙で選ばれるようになりました(憲法 93 条 2 項・地方自治法)。
地方自治は住民が身近な問題を自ら処理する中で、民主政治に必要な能力を身につける場になるという意味で、イギリスの政治学者ブライスが述べた言葉は?
「地方自治は民主主義の学校である」
フランスのトクヴィルも、アメリカの地域の自治を観察して、地方自治と自由の結びつきを説いた。
2000 年施行の地方分権一括法で、地方公共団体の事務は 2 つに分けられた。国政選挙の事務や旅券の交付はどちらに当たる?
法定受託事務(もう 1 つは自治事務)
国が地方公共団体を下部機関として使う機関委任事務が廃止され、その多くが自治事務になった。
国の関与(是正の要求など)に不服がある地方公共団体が審査を申し出る、総務省に置かれた機関は?
国地方係争処理委員会(地方自治法 250 条の 7)
国と地方を上下ではなく対等・協力の関係とした地方分権改革の中で、争いを中立の第三者が審査するために設けられた。
2. 首長・議会と住民の参加
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(ア)
首長と議会の議員をどちらも住民が選ぶ二元代表制のもとで、首長には議会が議決すべきことを代わりに処分する権限も与えられています。
住民は選挙のほか、直接請求や監査請求・住民投票を通じて行政に参加します。
議会を招集する時間的な余裕がないほど緊急なときや、議会が議決すべき事件を議決しないときに、首長が議会に代わって処分することを何という?
専決処分(地方自治法 179 条)
首長は次の議会に報告し、承認を求めなければならない。
住民が、首長や職員による違法・不当な公金の支出などについて監査委員に監査を求め、必要な措置を求めることを何という?何人から請求できる?
住民監査請求(地方自治法 242 条)。住民 1 人でも請求できる
監査の結果に不服があるときは、裁判所に住民訴訟を起こせる(242 条の 2)。直接請求の事務監査請求(有権者の 50 分の 1 以上の署名)とは別の制度。
市町村合併や原子力発電所・基地の建設などをめぐり、地方公共団体が独自の条例を作って行う住民投票の結果には、法的な拘束力がある?
無い(首長や議会は結果を尊重するが、従う法的な義務は無い)
これに対し、1 つの地方公共団体だけに適用される特別法の住民投票(憲法 95 条)は、過半数の同意が無ければ国会はその法律を制定できない。
3. 大都市の制度
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(ア)
都道府県と市町村の二層が基本ですが、大都市には都道府県の仕事の一部を担う市や、市に近い仕事をする区があります。
政令で指定され、児童福祉や生活保護など、本来都道府県が行う事務の一部を処理できる市を何という?指定を受けるための人口の要件は?
指定都市(政令指定都市)。人口 50 万以上(地方自治法 252 条の 19)
区(行政区)を置くことができる。区長は市長が任命する職員で、選挙では選ばれない。
東京都の 23 区のように、区長と区議会の議員を住民が選挙で選び、市に準じた事務を行う「都の区」を何という?
特別区(地方自治法 281 条)
指定都市の区(行政区)と違い、地方公共団体の一種。2012 年の大都市地域特別区設置法で、東京都以外でも住民投票を経て特別区を置けるようになった。
4. 地方財政
根拠: 学習指導要領 政治・経済-A-(1)-ア-(ア)
地方の歳入のうち自ら集める地方税の割合が低く、国からの財源に頼る状態は「3 割自治」と呼ばれてきました。
地方税が歳入に占める割合は地方公共団体ごとの差が大きく、総務省の「地方財政白書」が毎年の状況を公表しています。
国が地方公共団体に使い道を指定して交付するお金を何という?使い道が自由な地方交付税との違いを、「財源」の言葉で言うと?
国庫支出金(補助金・負担金など)。国庫支出金は特定財源、地方交付税は一般財源
国庫支出金は国の方針に沿った事業に使わせるため、地方の自主性を弱めるとの指摘がある。
地方公共団体が借金をするために発行する地方債は、2006 年度から国の許可がなくても発行できるようになった。それまでの許可制に代わった制度は?
協議制(国や都道府県と協議すれば、同意がなくても発行できる)
財政状況が悪い団体の発行には、引き続き許可が必要とされる。
2007 年に成立し、地方公共団体の財政の悪化を早い段階でつかんで立て直させるため、財政指標の公表や財政再生計画の策定を義務づけた法律は?
地方公共団体財政健全化法(地方公共団体の財政の健全化に関する法律)
北海道夕張市が 2007 年に財政再建団体になったことが制定のきっかけとなり、夕張市はこの法律のもとで財政再生団体になった。