人種・民族問題と地域紛争
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「政治・経済」B (2) アが探究の課題として挙げる「人種・民族問題や地域紛争の解決に向けた国際社会の取組」。
内容の取扱いは、ここで文化や宗教の多様性についても扱うよう求めています。
日本の 2 つの法律(アイヌ施策推進法・ヘイトスピーチ解消法)は、2026-09-27 に e-Gov 法令検索の条文と突き合わせました。
0. 何を押さえるか
人種は皮膚の色など身体的な特徴による分け方、民族は言語・宗教・文化・歴史などを共有しているという意識で結ばれた集団です。
一つの国の中に複数の民族が暮らすことはふつうで、国境と民族の分布は一致しません。
冷戦の時代には東西対立の陰に隠れていた民族や宗教の対立が、冷戦の終結後、各地で地域紛争として表に出ました。
| 地域 | 対立の構図 |
|---|---|
| 旧ユーゴスラビア | 連邦の解体に伴う、セルビア人・クロアチア人・ボスニアのムスリムなどの対立 |
| ルワンダ | フツ人とツチ人の対立。1994 年に大規模な虐殺 |
| パレスチナ | イスラエルとパレスチナのアラブ人との、土地と国家をめぐる対立 |
| 北アイルランド | イギリスへの帰属を望むプロテスタント系住民と、アイルランドへの統合を望むカトリック系住民の対立 |
| クルド人 | トルコ・イラク・イラン・シリアなどにまたがって住み、独自の国家を持たない |
紛争で国外へ逃れた人(難民)の保護と難民条約は、国際政治のノートで扱います。ここでは、国境を越えずに逃れている人々と、
差別をなくす条約・法律、多様な文化や宗教とともに生きる考え方を押さえます。
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 難民は国境を越えて逃れた人、国内避難民は国内にとどまって逃れている人。難民条約の保護の対象は難民
- アパルトヘイトは南アフリカの人種隔離政策。1991 年に関係する法律が廃止された
- ヘイトスピーチ解消法は差別的言動の解消に向けた取組を定めた法律で、罰則は置いていない
1. 地域紛争の構図
根拠: 学習指導要領 政治・経済-B-(2)-ア
冷戦の終結後に、世界の各地で地域紛争が表に出るようになったのはなぜとされるか?
東西両陣営の対立に抑え込まれていた民族や宗教の対立が、冷戦の終結で表に出たから
多民族を一つにまとめていた国家(ソ連・ユーゴスラビア)の解体も、民族どうしの争いを引き起こした。
1990 年代、旧ユーゴスラビアの解体に伴う紛争で、ある民族が支配する地域から他の民族を追い出したり殺害したりすることを何と呼んだか?
民族浄化
ボスニア・ヘルツェゴビナの紛争(1992〜1995 年)で行われた。1999 年のコソボ紛争では、NATO が安全保障理事会の決議なしにユーゴスラビアを空爆した。
1994 年、アフリカのルワンダで起きた大規模な虐殺は、どの民族どうしの対立によるものか?
フツ人(多数派)によるツチ人の虐殺
約 100 日間に多くの人々が殺された。国際社会が止められなかったことが、その後の国際刑事裁判の整備につながった。
1948 年のイスラエル建国をきっかけに続いてきた、イスラエルとパレスチナのアラブ人との対立で、1993 年に双方が結んだパレスチナ暫定自治についての合意は?
オスロ合意
イスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)が互いを承認し、パレスチナ人による暫定自治を始めることで合意した。その後も入植地やエルサレムの帰属などをめぐって対立が続いている。
トルコ・イラク・イラン・シリアなどにまたがって暮らし、「独自の国家を持たない最大の民族」と言われる人々は?
クルド人
第一次世界大戦後の国境の線引きで、住む地域が複数の国に分けられた。
紛争や迫害から逃れたが、国境を越えずに自国の中にとどまっている人々を何という?
国内避難民
国境を越えていないので難民条約の「難民」には当たらないが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などが支援の対象に加えている。
2. 人種差別をなくす取組
根拠: 学習指導要領 政治・経済-B-(2)-ア
1965 年に国連総会で採択された、人種・皮膚の色・世系・民族的または種族的出身に基づくあらゆる差別をなくすことを締約国に求める条約は?
人種差別撤廃条約
日本は 1995 年に加入した。
南アフリカ共和国で行われていた、白人と非白人を法律で分けて扱う人種隔離政策を何という?
アパルトヘイト
国連の非難と経済制裁を受け、1991 年に関係する法律が廃止された。1994 年には全人種が参加する選挙でマンデラが大統領に選ばれた。
1948 年に国連総会で採択された、国民的・民族的・人種的・宗教的な集団を破壊する目的で行われる行為を国際法上の犯罪とし、防止と処罰を定めた条約は?
ジェノサイド条約(集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約)
第二次世界大戦中のユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)を受けて結ばれた。
3. 文化や宗教の多様性とともに生きる
根拠: 学習指導要領 政治・経済-B-(2)-ア
人々が国境を越えて移り住むほど、一つの社会の中に異なる言語・文化・宗教を持つ人々がともに暮らすようになります。
文化や宗教の多様性を認めることは、民族どうしの対立が紛争に広がるのを防ぐ手がかりにもなります。
一つの社会の中で、複数の民族の文化を対等なものとして尊重し、共存を図ろうとする考え方を何という?
多文化主義
少数派の文化を多数派の文化に同化させようとする考え方(同化主義)と対比される。カナダやオーストラリアが政策として掲げてきた。
2019 年に制定され、アイヌの人々を法律として初めて「先住民族」と明記した日本の法律は?
アイヌ施策推進法(アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律)
1 条は、アイヌの人々を「日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族」と位置付けている。それまでのアイヌ文化振興法(1997 年)に代わる法律。
2016 年に制定された、日本の外から来た人やその子孫に対する不当な差別的言動(ヘイトスピーチ)の解消に向けた取組を定めた法律は、どのような性格のものか?
国や地方公共団体の責務と基本的な施策を定めた法律で、差別的言動を罰する規定は置いていない
本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘイトスピーチ解消法)。相談体制・教育・啓発を進めることを定めている。