8種制限と他人物売買
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は宅建業法 33 条の 2(自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限)、
78 条 2 項(8 種制限の適用除外)。2026-08-01 に e-Gov の条文原文と突合済み。
0. どういう制度か
宅建業法の規制の大半は「業者が取引にかかわるとき」に働くが、8 種制限だけは働く場面が狭い。
プロが売主で、素人が買主。この一方向にだけ、民法よりも買主を厚く守る特則を置いている。
逆に言えば、業者どうしの取引には一切適用されない(78 条 2 項)。買主も自分で身を守れるからである。
| 場面 | 8 種制限 |
|---|---|
| 業者が売主 → 業者でない者が買主 | 適用される |
| 業者が売主 → 業者が買主 | 適用されない |
| 業者でない者が売主 → 業者が買主 | 適用されない |
| 業者が媒介・代理をするだけ | 適用されない |
8 つの中身は次のとおり。
- クーリング・オフ(37 条の 2)
- 自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限(33 条の 2)
- 損害賠償額の予定等の制限(38 条)
- 手付の額の制限等(39 条)
- 契約不適合責任についての特約の制限(40 条)
- 手付金等の保全措置(41 条・41 条の 2)
- 割賦販売契約の解除等の制限(42 条)
- 所有権留保等の禁止(43 条)
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 「業者が売主」でない限り、8 種制限の話は始まらない(媒介では働かない)
- 他人物売買の例外①は「取得する契約を締結している」こと。停止条件付きでは足りない
- 例外②の未完成物件は、保全措置が講じられていれば他人物でも売れる
1. 適用される場面
根拠: 宅建業法 78 条 2 項
8 種制限は「情報と経験の差」を埋めるためにある。買主も業者なら差が無いので、外す。
自ら売主でない業者に課さないのも同じで、契約の相手方として利益を得る立場にいる者を縛る制度である。
8 種制限が適用されるのは、どんな取引?
宅建業者が自ら売主となり、宅建業者でない者が買主となる売買契約
業者間の売買には適用されない。業者が媒介・代理をするだけの取引にも適用されない。
宅建業者 A が売主、宅建業者でない B が買主で、宅建業者 C が媒介した。8 種制限は適用される?
適用される
見るのは売主と買主が誰かだけ。媒介業者がいるかどうかは関係しない。
宅建業者 A が売主、宅建業者 B が買主の売買を、A が「買主に有利な特約」を付けずに締結した。違反?
違反にならない(業者間なので 8 種制限が適用されない)
たとえば契約不適合責任を一切負わない特約も、業者間なら有効。
2. 自己の所有に属しない物件の売買
根拠: 宅建業法 33 条の 2
民法では他人の物を売る契約も有効だが、業者が「まだ持っていない物」を素人に売ると、
手に入らなかったときに買主が引渡しを受けられない。そこで、業者には
「確実に手に入る見込み」が立つまで契約を禁じている。
宅建業者は、自己の所有に属しない宅地建物について、自ら売主となる売買契約を締結できる?
原則としてできない
例外は 2 つ。
① 業者がその物件を取得する契約(予約を含む)を締結しているとき
② 未完成物件で、手付金等の保全措置が講じられているとき
売主業者が、所有者から「農地法の許可が下りたら買う」という停止条件付きの取得契約を結んでいる。
この物件を自ら売主として売れる?
この物件を自ら売主として売れる?
売れない
例外①の取得契約からは、その効力の発生が条件に係るもの(停止条件付き)は除かれる。
取得できるかどうかが不確定なままだから。
他人が所有する完成済みの建物について、業者が取得契約を結んでいない。
手付金等の保全措置を講じれば自ら売主として売れる?
手付金等の保全措置を講じれば自ら売主として売れる?
売れない
例外②(保全措置)が使えるのは未完成物件の場合だけ。
完成物件は、取得契約を締結していなければ売れない。
売主業者が所有者と結んだ取得契約が「所有権移転登記は代金完済時」という内容だった。
まだ登記も引渡しも受けていないが、自ら売主として売れる?
まだ登記も引渡しも受けていないが、自ら売主として売れる?
売れる
例外①は「取得する契約を締結している」ことを求めるだけで、
所有権の移転や登記まで済んでいる必要はない。
宅建業者が、自己の所有に属しない物件について、宅建業者でない者と売買の予約をした。33 条の 2 に反する?
反する
「売買契約」には予約も含まれる。
予約であっても、買主は最終的に取得できないリスクを負うため。