35条書面
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は宅建業法 35 条 1 項(説明事項)、2 項(割賦販売の追加事項)、4 項(宅建士証の提示)、
5 項(宅建士の記名)、6 項(相手方が業者である場合の特則)。
2026-08-01 に e-Gov の条文原文と突合済み。
区分所有建物・貸借の追加事項は別ノートに分ける。
0. どういう制度か
買う側・借りる側は、その物件について業者が持っている情報を持っていない。
何を知らされないまま契約したのかすら分からないまま判を押してしまうので、
法律の側が「これだけは契約前に必ず伝えろ」という項目を並べた。それが 35 条。
制度の芯は 「判断材料を、判断する前に渡す」 の一本。ここから形式面がすべて決まる。
- 契約が成立するまでの間に … 成立後に渡しても判断材料にならない
- 取得する側・借りる側に … 売主や貸主は既に知っている
- 宅建士が説明する … 内容を理解した専門家でなければ質問に答えられない
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 相手が業者なら「説明」は要らない(書面の交付だけでよい)
- 提示するのは宅建士証、記名も宅建士。ただし専任である必要はない
- 「定めがあるときは」と書かれていない項目は、定めが無くてもその旨を伝える
1. 誰が・いつ・誰に
根拠: 宅建業法 35 条 1 項柱書・4 項・5 項・6 項
説明の相手は、これから取得しようとする者・借りようとする者。
売主や貸主は物件を知っている側なので対象にならない。
相手が業者の場合に説明が省けるのは、プロ同士なら書面を読めば足りるからで、
このときは宅建士証の提示も不要になる(説明という場面自体がないため)。
35 条書面は、いつまでに、誰が、誰に対して交付・説明する?
契約が成立するまでの間に、宅建士が、取得しようとする者・借りようとする者に対して
売主・貸主は相手方に含まれない。
交付するのは業者、説明するのは宅建士。
買主が宅地建物取引業者だった。35 条の手続はどうなる?
書面の交付だけでよい(説明は不要)
プロ同士であれば書面を読めば判断できるため。
説明の場面がないので、宅建士証の提示も要らない。
重要事項の説明をする宅建士は、専任の宅建士でなければならない?
その必要はない
説明も記名も「宅建士」であれば足りる。
専任である必要はなく、その事務所の従業者である必要もない。
重要事項の説明をするとき、宅建士証はどうする?
相手方から求められなくても提示しなければならない
提示を怠ると指示処分の対象になる。
なお 37 条書面の交付のときは提示義務がない。
35 条の説明を行う場所に制限はある?
制限はない
どこで行ってもよく、相手方の承諾を得れば IT を用いた説明も認められる。
場所が要件になるのはクーリングオフの「事務所等」の話であって、35 条とは無関係。
2. 物件そのものに関する事項
根拠: 宅建業法 35 条 1 項 1 号〜6 号の 2
物件の素性は登記簿と法令を調べなければ分からない。
買主が自力で確認できない情報ほど、説明義務の中心に置かれている。
登記について説明すべき事項は?
登記された権利の種類・内容と、登記名義人(または表題部の所有者)の氏名
権利の内容まで説明する。
移転登記の申請の時期は 35 条ではなく 37 条の記載事項。
法令に基づく制限について、どこまで説明する?
契約内容の別(宅地か建物か、売買・交換か貸借か)に応じて政令で定めるものの概要
すべての制限ではなく、政令が契約類型ごとに絞り込んでいる。
私道に関する負担は、どんな契約でも説明する?
建物の貸借では説明不要
借りて住むだけの者に私道の負担は生じないため。
宅地の貸借では必要になる点に注意。
飲用水・電気・ガスの供給、排水のための施設について説明すべきことは?
整備の状況。整備されていない場合は、整備の見通しとその特別の負担
未整備であることを告げるだけでは足りない。
造成・建築の工事が完了していない物件では、何を説明する?
完了時における形状・構造その他省令で定める事項
現況を見ても分からないため、完成後の姿を示させる。
既存の建物のとき、建物状況調査について説明すべきことは?
調査を実施しているかどうか、実施している場合は結果の概要。
あわせて設計図書・点検記録等の保存の状況
対象は実施後、省令で定める期間(原則 1 年)を経過していない調査。
調査の実施そのものは義務ではない。
3. 金銭に関する事項
根拠: 宅建業法 35 条 1 項 7 号・10 号〜13 号
代金以外にどんな金が動くか、払った金が返ってくるのか——
契約前に分からなければ資金計画が立たない項目群。
代金・交換差金・借賃以外に授受される金銭について、35 条で説明するのは?
その額と授受の目的
時期は含まない(授受の時期を書くのは 37 条)。
手付金・敷金などが対象。
手付金等を受領しようとする場合、35 条では何を説明する?
保全措置の概要
保全措置を講じるかどうかではなく、講じる措置の概要を説明する。
支払金・預り金については「保全措置を講ずるかどうか」とその概要である点と対になっている。
代金についてのローンのあっせんは、35 条で何を説明する?
あっせんの内容と、あっせんに係る貸借が成立しないときの措置
37 条では「定めがあるときに、不成立の場合の措置」を書く。
35 条のほうが説明範囲が広い。
契約不適合責任について、35 条で説明するのは?
その責任の履行に関して講ずる措置(保証保険契約の締結等)を講ずるかどうか、
講じる場合はその概要
責任の内容そのものではなく、履行を確保する手段の有無を説明する。
4. 「定めがなくても説明する」項目
根拠: 宅建業法 35 条 1 項 8 号・9 号、35 条 2 項
35 条の項目は「〜に関する事項」と書かれており、定めが無ければ無いと伝えるのが説明になる。
37 条が「定めがあるときは、その内容」と条件付きで書かれているのと対照的で、
ここが両書面を分ける一番よく問われる違い。
契約の解除や損害賠償額の予定について、契約に定めが無い場合、35 条ではどうする?
定めが無い旨を説明する(説明を省略できない)
35 条は「解除に関する事項」「損害賠償額の予定又は違約金に関する事項」と定めており、
定めの有無自体が買主の判断材料になる。
37 条は「定めがあるときは、その内容」なので、無ければ記載しない。
割賦販売の場合、35 条で追加して説明すべき 3 つの事項は?
現金販売価格、割賦販売価格、引渡しまでに支払う金銭の額と賦払金の額・支払の時期・方法
一括で買う場合と比べていくら高くつくのかを示させる趣旨。