農地法
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は農地法 2 条(定義)、3 条(農地または採草放牧地の権利移動の制限)、
4 条(農地の転用の制限)、5 条(転用のための権利移動の制限)、
16 条(賃貸借の対抗力)、18 条(賃貸借の解約等の制限)、64 条(罰則)。
2026-08-01 に e-Gov の条文原文と突合済み。
0. どういう制度か
食料を作る土地を守るための法律である。守るべきものが 2 つあり、
誰が耕すか(担い手)と農地であり続けるか(面積)にそれぞれ許可が置かれている。
| 条 | 何をするとき | 許可権者 | 市街化区域の特例 |
|---|---|---|---|
| 3 条 | 農地を農地のまま権利移動する | 農業委員会 | なし |
| 4 条 | 自分の農地を転用する | 都道府県知事等 | あらかじめ届出で許可不要 |
| 5 条 | 転用目的で権利移動する | 都道府県知事等 | あらかじめ届出で許可不要 |
3 条だけ許可権者が違い、3 条だけ市街化区域の特例がない。
耕す人が誰かは、市街化区域でも同じように重要だからである。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 農地かどうかは登記の地目ではなく現況で判断する
- 3 条の許可を受けない契約は効力を生じない(所有権が移らない)
- 相続で農地を取得するのに 3 条の許可は要らないが、農業委員会への届出が要る
1. 農地・採草放牧地とは
根拠: 農地法 2 条 1 項
農地法上の「農地」とは?
耕作の目的に供される土地(2 条 1 項)
登記簿上の地目ではなく、現況で判断する。
登記地目が山林でも現に耕作していれば農地であり、
地目が畑でも長年放置され原野に戻っていれば農地ではない。
「採草放牧地」とは?
農地以外の土地で、主として耕作または養畜の事業のための採草または家畜の放牧の目的に
供されるもの
農地と採草放牧地では、4 条・5 条の適用に違いがある
(採草放牧地の転用には 4 条の許可が要らない)。
2. 3 条(権利移動)
根拠: 農地法 3 条 1 項・6 項
3 条が守るのは「農地を、農業をやる人が持つ」という状態である。
だから市街化区域であっても例外がない——市街地の中でも、農地である以上は同じだからである。
3 条の許可が必要になるのはどんな場合?
農地または採草放牧地について、所有権を移転し、または
地上権・永小作権・質権・使用貸借による権利・賃借権等を設定・移転する場合
許可権者は農業委員会。
市街化区域内の農地を、農地のまま売買する。許可は?
3 条の許可が必要
市街化区域内の農地の特例(あらかじめ農業委員会に届け出れば許可不要)は
4 条・5 条にしかない。
3 条の許可を受けずに売買契約を締結した。効力は?
効力を生じない(3 条 6 項)
所有権は移転しない。
4 条・5 条の許可を受けずに転用した場合は、契約自体は有効だが
原状回復命令の対象となり、罰則もある。
相続によって農地を取得した。3 条の許可は必要?
不要
ただし、取得したことを知った時からおおむね 10 か月以内に、
農業委員会に届け出なければならない(3 条の 3)。
遺産分割・時効取得・包括遺贈も同様。
抵当権を設定する場合、3 条の許可は必要?
不要
抵当権は使用収益を伴わないため。
ただし、抵当権が実行されて競売により所有権が移転するときは許可が必要。
3. 4 条(転用)と 5 条(転用目的の権利移動)
根拠: 農地法 4 条 1 項、5 条 1 項
面積を守るための規制なので、すでに市街化を図ると決めた区域では緩める。
市街化区域内の農地はいずれ宅地になる前提だからである。
4 条の許可が必要になるのは?
農地を農地以外のものに転用する場合(自分の農地を自分で転用する場合)
許可権者は都道府県知事等(指定市町村の区域内では指定市町村の長)。
採草放牧地を転用する場合には 4 条の許可が要らない。
5 条の許可が必要になるのは?
農地を農地以外のものにするため、または
採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く)にするため、
権利を移転・設定する場合
許可権者は都道府県知事等。
市街化区域内の農地を転用する場合は?
あらかじめ農業委員会に届け出れば、4 条・5 条の許可は不要
「あらかじめ」なので、転用後の届出では足りない。
自分の農地に自分が住む住宅を建てる。4 条の許可は必要?
必要
例外として許可不要になるのは、2 アール(200 平方メートル)未満の農地を
農業用施設(農業用倉庫・畜舎など)に転用する場合など。
国または都道府県等が転用する場合の扱いは?
道路・農業用用排水施設など一定の施設のためであれば許可不要。
それ以外は、都道府県知事等との協議が成立することをもって許可があったものとみなす
4. 農地の賃貸借
根拠: 農地法 16 条 1 項、17 条、18 条 1 項
耕作している人を守るために、民法や借地借家法よりも厚い保護が置かれている。
農地の賃借権を第三者に対抗するには?
引渡しがあれば対抗できる(16 条 1 項)
登記は不要。借地借家法の建物賃貸借(建物の引渡し)と同じ考え方。
農地の賃貸借を解約・更新拒絶するには?
原則として都道府県知事の許可が必要(18 条 1 項)
許可を受けない解約等は効力を生じない。
農地の賃貸借の法定更新は?
期間満了の 1 年前から 6 か月前までの間に、
更新しない旨の通知をしなければ、従前と同一の条件で更新したものとみなす(17 条)
借地借家法の建物賃貸借と同じ通知期間。
5. 違反したとき
根拠: 農地法 51 条 1 項、64 条
4 条・5 条の許可を受けずに転用した場合、どうなる?
都道府県知事等は、工事の停止を命じ、または
原状回復その他違反を是正するために必要な措置を命じることができる(51 条)
罰則は 3 年以下の拘禁刑または 300 万円以下の罰金
(法人には 1 億円以下の罰金)。