譲渡所得の特例
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は所得税法 33 条(譲渡所得)、租税特別措置法 31 条(長期譲渡所得)、
32 条(短期譲渡所得)、31 条の 3(居住用財産の軽減税率)、35 条(3,000 万円特別控除)、
36 条の 2(特定の居住用財産の買換え)、33 条の 4(収用等の 5,000 万円控除)、
41 条(住宅借入金等特別控除)。2026-08-01 に e-Gov の条文原文と突合済み。
0. どういう制度か
不動産を売って得た利益(譲渡所得)は、他の所得と合算せず分離課税される。
値上がり益が一時に実現するため、合算すると税率が跳ね上がってしまうからである。
税率は所有期間で 2 段階に分かれる。
| 区分 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5 年以下 | 30% | 9% |
| 長期譲渡所得 | 5 年超 | 15% | 5% |
所有期間は、譲渡した年の 1 月 1 日現在で判定する。実際に手放した日ではない。
居住用財産にはさらに特例が重なる。
| 特例 | 所有期間の要件 |
|---|---|
| 3,000 万円特別控除 | なし(何年でもよい) |
| 軽減税率の特例(6,000 万円以下の部分は 10%) | 10 年超 |
| 特定の居住用財産の買換え特例 | 10 年超(居住期間 10 年以上) |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 所有期間は「譲渡した年の 1 月 1 日」で数える(実日数ではない)
- 3,000 万円控除と軽減税率は併用できるが、3,000 万円控除と買換え特例は併用できない
- 配偶者・直系血族などへの譲渡には、居住用財産の特例が使えない
1. 譲渡所得の計算と税率
根拠: 租税特別措置法 31 条 1 項・2 項、32 条 1 項、所得税法 33 条 3 項
譲渡所得の金額はどう計算する?
収入金額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除額
取得費が不明な場合は、収入金額の 5% を概算取得費とできる。
建物の取得費は、減価償却相当額を控除した後の額。
長期譲渡所得と短期譲渡所得は、どこで分かれる?
譲渡した年の 1 月 1 日において所有期間が 5 年を超えるかどうか
2021 年 6 月に取得した土地を 2026 年 8 月に売った場合、
実際の所有は 5 年 2 か月だが、2026 年 1 月 1 日時点では 4 年 7 か月なので短期。
相続で取得した不動産の取得費と取得時期は?
被相続人の取得費と取得時期を引き継ぐ
したがって、相続した直後に売っても、
被相続人の所有期間が 5 年を超えていれば長期譲渡所得になる。
2. 居住用財産の 3,000 万円特別控除
根拠: 租税特別措置法 35 条 1 項・2 項
自分が住んでいた家を売るのは、投資ではなく生活の都合であることが多い。
だから所有期間を問わず、まとまった額を課税対象から外す。
居住用財産の 3,000 万円特別控除の主な要件は?
- 自己の居住の用に供している家屋(またはその敷地)の譲渡であること
- 住まなくなった日から 3 年を経過する日の属する年の 12 月 31 日までに譲渡すること
- 所有期間の要件はない
- 前年・前々年にこの特例(または買換え特例等)の適用を受けていないこと
親子間・夫婦間の譲渡でも 3,000 万円控除は使える?
使えない
配偶者・直系血族、生計を一にする親族、同族会社などへの譲渡は
特例の対象から除かれている。
共有の居住用財産を売却した場合、3,000 万円控除はどう適用される?
共有者それぞれについて 3,000 万円まで控除できる
家屋全体で 3,000 万円ではない。
3. 軽減税率と買換え特例
根拠: 租税特別措置法 31 条の 3 第 1 項、36 条の 2 第 1 項
長く住んだ家ほど生活の基盤としての性格が強い。だから 10 年超という線を引いて、
そこからさらに税率を下げたり、課税そのものを繰り延べたりする。
居住用財産の軽減税率の特例(31 条の 3)の要件と税率は?
所有期間が 10 年超(譲渡した年の 1 月 1 日現在)の居住用財産の譲渡について、
- 課税長期譲渡所得金額が 6,000 万円以下の部分 … 所得税 10%
- 6,000 万円超の部分 … 所得税 15%
3,000 万円特別控除と併用できる(控除後の金額に軽減税率を適用する)。
特定の居住用財産の買換え特例の主な要件は?
- 譲渡資産の所有期間が 10 年超、かつ居住期間が 10 年以上
- 譲渡対価が 1 億円以下
- 買換資産の家屋の床面積が 50 平方メートル以上、土地は 500 平方メートル以下
- 譲渡した年の前年から翌年までの間に買換資産を取得すること
買換え特例の効果は?3,000 万円控除と併用できる?
譲渡益への課税が将来に繰り延べられる(非課税になるのではない)。
3,000 万円特別控除・軽減税率とは併用できない。
どちらが有利かを比べて選ぶ。
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)と、居住用財産の特例の関係は?
併用できない
居住した年とその前後の一定期間内に 3,000 万円特別控除・軽減税率・
買換え特例の適用を受けていると、住宅ローン控除は受けられない。
4. 収用等の特例
根拠: 租税特別措置法 33 条 1 項、33 条の 4 第 1 項
収用等により資産を譲渡した場合の特例は?
- 代替資産を取得した場合 … 課税の繰延べ(33 条)
- 代替資産を取得しない場合 … 5,000 万円の特別控除(33 条の 4)
どちらか一方を選択する。
5,000 万円控除は、買取りの申出があった日から 6 か月以内に譲渡することが要件。
収用の 5,000 万円控除と、居住用財産の 3,000 万円控除は併用できる?
併用できる(同一年で合計 8,000 万円まで)
ただし収用等の代替資産の取得(課税の繰延べ)を選んだ場合は、
3,000 万円控除と併用できない。