相続
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は民法 887 条(子の相続権)、889 条(直系尊属・兄弟姉妹)、890 条(配偶者)、
896 条(包括承継)、898 条(遺産共有)、900 条(法定相続分)、902 条(遺言による指定)、
903 条(特別受益)、906 条・907 条(遺産分割)、909 条の 2、915 条(承認・放棄の期間)、
921 条(法定単純承認)、939 条(放棄の効力)、964 条(包括遺贈・特定遺贈)、
967 条〜969 条(遺言の方式)、1028 条(配偶者居住権)、1042 条(遺留分)。
2026-08-01 に e-Gov の条文原文と突合済み。
0. どういう制度か
人が死ぬと、その人の財産上の地位が丸ごと相続人に移る(包括承継)。
誰がどれだけ受け取るかは、血縁の近さで順位が付いている。
| 順位 | 血族相続人 | 配偶者の相続分 | 血族の相続分 |
|---|---|---|---|
| 第 1 順位 | 子(およびその代襲者) | 2 分の 1 | 2 分の 1 |
| 第 2 順位 | 直系尊属 | 3 分の 2 | 3 分の 1 |
| 第 3 順位 | 兄弟姉妹 | 4 分の 3 | 4 分の 1 |
配偶者は常に相続人になる。血族は先順位がいれば後順位は相続しない。
遺留分は、この法定相続分に対する割合として計算する。
| 相続人 | 遺留分(総体) |
|---|---|
| 直系尊属のみ | 被相続人の財産の 3 分の 1 |
| それ以外 | 被相続人の財産の 2 分の 1 |
| 兄弟姉妹 | なし |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 兄弟姉妹に遺留分はない
- 代襲相続は、子なら再代襲するが、兄弟姉妹は 1 代限り
- 相続放棄をした者は代襲原因にならない(初めから相続人でなかったことになる)
1. 相続人と相続分
根拠: 民法 887 条 1 項〜3 項、889 条 1 項・2 項、890 条、900 条、901 条
配偶者と子 2 人が相続人。それぞれの法定相続分は?
配偶者 2 分の 1、子は 2 分の 1 を等分して各 4 分の 1
子が複数いれば頭割り。
嫡出でない子の相続分も、嫡出子と同じ。
配偶者と被相続人の父母が相続人。相続分は?
配偶者 3 分の 2、直系尊属 3 分の 1(父母で等分するので各 6 分の 1)
配偶者と兄弟姉妹なら、配偶者 4 分の 3、兄弟姉妹 4 分の 1。
父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(半血)の相続分は?
父母の双方を同じくする兄弟姉妹の 2 分の 1(900 条 4 号ただし書)
代襲相続はどこまで及ぶ?
- 子が相続開始以前に死亡・欠格・廃除で相続権を失ったとき → 孫、ひ孫と再代襲する
- 兄弟姉妹の場合 → 甥・姪の 1 代限り(再代襲しない)
相続放棄をした者には代襲相続が生じない。
2. 承認と放棄
根拠: 民法 915 条 1 項、920 条、921 条、922 条、938 条、939 条
3 か月という期間は、相続財産に借金が多いかどうかを調べる時間である。
何もしなければ全部引き受けたことになる(単純承認)ので、
動かないことが選択になっている。
相続の承認・放棄はいつまでにする?
自己のために相続の開始があったことを知った時から 3 か月以内(熟慮期間)
期間内に限定承認も放棄もしなければ、単純承認したものとみなされる(921 条 2 号)。
相続放棄の効果は?
初めから相続人とならなかったものとみなされる(939 条)
そのため代襲相続も生じない。
放棄は家庭裁判所への申述によってする。
限定承認はどうやってする?
相続人全員が共同して、家庭裁判所に申述する(923 条)
相続によって得た財産の限度でのみ債務を弁済すればよい。
一人でも反対すれば限定承認はできない。
相続財産を処分してしまった。承認・放棄はできる?
単純承認したものとみなされる(921 条 1 号・法定単純承認)
放棄した後に財産を隠匿・消費した場合も単純承認とみなされる。
なお、保存行為や短期賃貸借は処分に当たらない。
3. 遺産分割
根拠: 民法 898 条、906 条、907 条 1 項・2 項、903 条 1 項、909 条、909 条の 2
遺産分割の効力はいつにさかのぼる?
相続開始の時にさかのぼる(909 条)
ただし第三者の権利を害することはできない。
遺言で遺産分割を禁じることはできる?
できる(相続開始の時から 5 年を超えない期間)
共同相続人の契約でも 5 年以内の分割禁止ができ、
相続開始の時から 10 年を超えない範囲で更新できる。
特別受益(生前贈与・遺贈)を受けた相続人の相続分はどうなる?
その贈与・遺贈の価額を相続財産に持ち戻して計算し、
算出した相続分から受益の価額を控除する(903 条)
婚姻期間 20 年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与・遺贈したときは、
持戻し免除の意思表示があったものと推定される(903 条 4 項)。
遺産分割前に、預貯金の一部を単独で払い戻せる?
できる(909 条の 2)
各相続人は、預貯金債権額の 3 分の 1 に自己の法定相続分を乗じた額
(金融機関ごとに 150 万円を上限)を単独で行使できる。
4. 遺言
根拠: 民法 960 条、961 条、964 条、967 条〜969 条、1022 条、1023 条、1004 条
遺言は本人が死んだ後に効力を持つので、本人に確かめられない。
だから方式が厳格に決まっており、外れると無効になる。
遺言をするのに必要な年齢は?
15 歳に達していること(961 条)
未成年者でも 15 歳以上なら、法定代理人の同意なく単独で遺言できる。
自筆証書遺言の方式は?
全文・日付・氏名を自書し、押印する(968 条 1 項)
財産目録については自書でなくてもよい(各ページに署名押印が必要)。
加除訂正には、その場所を指示し、変更した旨を付記して署名し、変更箇所に押印する。
公正証書遺言の方式は?
証人 2 人以上の立会いのもと、遺言者が公証人に口授し、
公証人が筆記して読み聞かせ、各自が署名押印する(969 条)
推定相続人・受遺者やその配偶者・直系血族は証人になれない。
遺言書の検認が必要なのはどれ?
自筆証書遺言と秘密証書遺言(1004 条)
公正証書遺言と、法務局に保管された自筆証書遺言は検認不要。
検認は遺言の有効・無効を判断する手続ではない。
遺言を撤回できる?前の遺言と後の遺言が抵触したら?
遺言者はいつでも、遺言の方式に従って遺言の全部または一部を撤回できる(1022 条)。
撤回権を放棄することはできない。
前の遺言と後の遺言が抵触するときは、抵触部分について
後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす(1023 条)。
5. 配偶者居住権と遺留分
根拠: 民法 1028 条 1 項、1030 条、1037 条、1042 条 1 項、1046 条 1 項、1048 条
配偶者居住権が成立する要件は?
被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた配偶者が、
①遺産分割、②遺贈、③死因贈与、④家庭裁判所の審判
によって取得したとき(1028 条)
存続期間は、別段の定めがなければ配偶者の終身。
登記をしなければ第三者に対抗できない。
配偶者短期居住権とは?
相続開始時に無償で居住していた配偶者が、
遺産分割により建物の帰属が確定する日または相続開始から 6 か月を経過する日の
いずれか遅い日まで、無償で使用できる権利(1037 条)
登記はできず、対抗力はない。
遺留分の割合は?
- 直系尊属のみが相続人 … 被相続人の財産の 3 分の 1
- それ以外 … 被相続人の財産の 2 分の 1
これに各自の法定相続分を掛けたものが個別的遺留分。
兄弟姉妹に遺留分はない。
遺留分を侵害されたとき、何を請求できる?
遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できる(1046 条・遺留分侵害額請求権)
現物の返還を求めるのではない(2018 年改正)。
遺留分侵害額請求権の期間制限は?
相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から 1 年、
または相続開始の時から 10 年(1048 条)
10 年は除斥期間とされる。