不法行為
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は民法 709 条(不法行為による損害賠償)、712 条・713 条(責任能力)、714 条(監督義務者)、
715 条(使用者責任)、716 条(注文者の責任)、717 条(土地工作物責任)、
719 条(共同不法行為)、722 条(過失相殺)、724 条(消滅時効)。
2026-08-01 に e-Gov の条文原文と突合済み。
0. どういう制度か
契約関係のない者どうしで生じた損害を、どちらに負わせるのが公平かを決める制度である。
原則は「悪いことをした人が払う」だが、それでは被害者が救われない場面のために
他人の行為について責任を負う類型が用意されている。
宅建で問われるのは、この 2 つがほとんどである。
| 誰が責任を負うか | 免れる方法 | |
|---|---|---|
| 使用者責任(715 条) | 被用者を使用する者 | 選任・監督に相当の注意をしたこと(中間責任) |
| 土地工作物責任(717 条) | 第一次は占有者、占有者が免責されれば所有者 | 占有者は必要な注意をしたこと。所有者は免責されない(無過失責任) |
工作物責任の所有者が逃げられないのは、危険な物を持っている以上、
そこから生じた損害は持ち主が負うべきだという考え方(危険責任)による。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 工作物責任で最終的に責任を負うのは所有者(無過失でも免れない)
- 使用者が賠償したら被用者に求償できるが、信義則上相当と認められる限度に制限される
- 不法行為の損害賠償債務は、催告を要せず「損害発生の時」から遅滞に陥る
1. 一般の不法行為
根拠: 民法 709 条、710 条、712 条、713 条、722 条 2 項、724 条
不法行為の成立要件は?
① 故意または過失があること
② 他人の権利または法律上保護される利益を侵害したこと
③ 損害が発生したこと
④ 行為と損害との間に因果関係があること
加害者に責任能力があることも必要(712 条・713 条)。
不法行為による損害賠償債務は、いつから遅滞に陥る?
損害の発生時(不法行為の時)から(判例)
催告は不要。債務不履行による損害賠償債務が
「請求を受けた時」から遅滞になるのと異なる。
不法行為の損害賠償請求権の消滅時効は?
- 被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から 3 年
- 不法行為の時から 20 年
人の生命または身体を害する不法行為では、主観的起算点が 5 年になる(724 条の 2)。
被害者側にも落ち度があった。賠償額はどうなる?
裁判所は、被害者の過失を考慮して損害賠償の額を定めることができる(722 条 2 項)
債務不履行の過失相殺(418 条)が「必ず考慮する」のに対し、
不法行為では任意的であり、また責任を免れさせることはできない。
2. 責任無能力者と監督義務者
根拠: 民法 712 条、713 条、714 条 1 項・2 項
未成年者が不法行為をした。本人は責任を負う?
自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは責任を負わない(712 条)
おおむね 12 歳前後が目安(判例)。
この場合、監督義務者が責任を負う(714 条)。
監督義務者の責任を免れる方法は?
監督義務を怠らなかったこと、または義務を怠らなくても損害が生じたことを証明すること
証明責任が監督義務者にある中間責任。
3. 使用者責任
根拠: 民法 715 条 1 項〜3 項、716 条
事業から利益を得ている者は、その事業に伴う損害も負うべきだという考え方(報償責任)による。
だから外形上、事業の執行に見えれば足りる。
使用者責任が成立する要件は?
① ある事業のために他人を使用していること
② 被用者が事業の執行について第三者に損害を加えたこと
③ 被用者自身に不法行為が成立すること
「事業の執行について」は外形から判断する(外形標準説・判例)。
職務権限を逸脱していても、外形上職務の範囲内に見えれば成立する。
使用者が免責されるのはどんな場合?
被用者の選任および事業の監督について相当の注意をしたこと、
または相当の注意をしても損害が生じたことを証明したとき(715 条 1 項ただし書)
実際に免責が認められることはほとんどない。
使用者が被害者に賠償した。被用者に求償できる?
できる(715 条 3 項)
ただし判例により、信義則上相当と認められる限度に制限される。
逆に、被用者が賠償した場合に使用者へ求償することも認められる(逆求償・判例)。
注文者は、請負人が第三者に加えた損害について責任を負う?
負わない(716 条)
ただし、注文または指図についてその注文者に過失があったときは責任を負う。
4. 土地工作物責任
根拠: 民法 717 条 1 項〜3 項
建物の設置・保存に瑕疵があり、通行人が負傷した。誰が責任を負う?
第一次的には占有者(賃借人など)。
占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたことを証明すれば、
所有者が責任を負う(717 条 1 項)
所有者は無過失でも免責されない(無過失責任)。
工作物の瑕疵が施工業者の手抜きによるものだった。所有者はどうできる?
損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、
その者に対して求償権を行使できる(717 条 3 項)
竹木の栽植・支持に瑕疵があった場合は?
土地の工作物と同様に扱われる(717 条 2 項)
倒木で損害が生じた場合も、占有者→所有者の順で責任を負う。
5. 共同不法行為
根拠: 民法 719 条 1 項・2 項
数人が共同して他人に損害を加えた。責任はどうなる?
各自が連帯して損害賠償の責任を負う(719 条 1 項)
被害者は誰に対しても全額を請求できる。
共同行為者のうち誰が損害を加えたか分からないときも、各自が連帯責任を負う。
不法行為を教唆・幇助した者は?
共同行為者とみなされ、連帯して責任を負う(719 条 2 項)