業務上の規制
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は宅建業法 31 条(業務処理の原則)、45 条(秘密を守る義務)、47 条(業務に関する禁止事項)、
47 条の 2(不当な履行遅延等の禁止)、48 条(従業者証明書)、49 条(帳簿)、50 条(標識・案内所等の届出)、
施行規則 17 条の 2、18 条。2026-08-01 に e-Gov の条文原文と突合済み。
0. どういう制度か
書面や免許の規制が「取引の節目」を押さえるのに対し、ここは日々の営業のふるまいを縛る。
勧誘の現場や、事務所に何を備えるかといった、外から見えにくい部分である。
備え置くもの・掲示するものは 4 つあり、置く場所と保存期間で区別する。
| 置く場所 | 期間 | 閲覧させる義務 | |
|---|---|---|---|
| 従業者証明書 | 従業者に携帯させる | — | 請求があれば提示 |
| 従業者名簿 | 事務所ごと | 最終記載日から 10 年 | ある |
| 帳簿 | 事務所ごと | 閉鎖後 5 年(自ら売主の新築住宅は 10 年) | ない |
| 標識 | 事務所・案内所等 | — | 掲示 |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 従業者証明書は取引士証で代用できない(逆も同じ)
- 帳簿には閲覧義務がなく、従業者名簿にはある
- 案内所等の届出は業務開始の 10 日前まで、免許権者と所在地の知事の両方へ
1. 業務に関する禁止事項
根拠: 宅建業法 47 条、47 条の 2
規制の中心は「判断に必要な材料を歪めないこと」である。だから、嘘を言う(47 条 1 号)だけでなく、
言わないことも、払えないはずの人に払わせることも同じ列に並んでいる。
業者が、相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項について故意に告げなかった。違反?
違反(47 条 1 号)
故意に事実を告げない不作為も、不実のことを告げるのと同じく禁じられる。
2 年以下の拘禁刑または 300 万円以下の罰金(併科あり)。
契約を結ばせるために、手付金を業者が貸し付けた。違反になる?
なる(47 条 3 号・手付貸与等の禁止)
手付の分割払いを認めることや、手付について信用の供与をすることも同じく禁止。
一方、手付金そのものを減額するのは違反にならない。
「この土地は必ず 2 年後に値上がりします」と告げて勧誘した。違反?
なる(47 条の 2 第 1 項・断定的判断の提供)
将来の環境や利益について断定的判断を提供することの禁止。
故意でなくても、断定的に告げた時点で違反となる。
勧誘に先立って業者名・氏名・勧誘目的を告げなかった。違反?
なる(47 条の 2 第 3 項、施行規則 16 条の 12)
相手方が契約しない旨を告げたのに勧誘を続けること、
迷惑を覚えさせる時間の電話・訪問も同じく禁止される。
2. 秘密を守る義務
根拠: 宅建業法 45 条、75 条の 3
宅建業者の守秘義務は、廃業した後も続く?
続く(45 条は「宅地建物取引業を営まなくなった後」も及ぶと定める)
宅地建物取引士についても同じ(75 条の 3)。
守秘義務が解かれる「正当な理由」とは?
- 裁判の証人として証言を求められたとき
- 税務署等の調査に応じるとき
- 取引の相手方に告知義務がある事項を伝えるとき
- 本人の承諾があるとき
「他の従業者に伝える」など業務上必要な範囲での共有も正当な理由に当たる。
3. 従業者証明書と従業者名簿
根拠: 宅建業法 48 条 1 項〜4 項、施行規則 17 条の 2
証明書は「この人は本当にこの業者の人間か」を確かめるためのもので、
取引士かどうかとは別の話である。だから代用がきかない。
従業者証明書は、誰に携帯させる?
すべての従業者(代表者・非常勤の役員・アルバイトを含む)
取引の関係者から請求があったときは提示しなければならない。
取引士証で代用することはできない。
従業者名簿の保存期間と、閲覧の義務は?
最終の記載をした日から 10 年間保存する。
取引の関係者から請求があれば閲覧させなければならない
事務所ごとに備える。従業者でなくなった者も記載を消さずに残す。
4. 帳簿
根拠: 宅建業法 49 条、施行規則 18 条
帳簿はいつ記載し、どれだけ保存する?
取引のあった都度記載し、各事業年度の末日に閉鎖して、閉鎖後 5 年間保存する
自ら売主となる新築住宅に係るものは 10 年間。
取引の関係者から帳簿の閲覧を請求された。応じる義務はある?
ない
閲覧させる義務があるのは従業者名簿だけ。帳簿は備付け・保存の義務のみ。
5. 標識と案内所等の届出
根拠: 宅建業法 50 条 1 項・2 項、施行規則 19 条
標識は「ここは誰の営業所か」をその場で示す掲示物なので、事務所でも案内所でも要る。
一方、届出は役所が把握していない場所で契約が行われるのを防ぐためのものなので、
契約行為等を行う案内所だけが対象になる。
標識はどこに掲示する?
事務所および案内所等(公衆の見やすい場所)
契約行為等を行わない案内所(展示会場等)にも標識は必要。
また、他の業者が売主である物件の分譲を代理・媒介する案内所では、
その案内所を設置した業者が自らの標識を掲示する。
契約の申込みを受ける案内所を設置する。届出はいつまでに、誰に?
業務を開始する日の 10 日前までに、
免許権者と案内所の所在地を管轄する都道府県知事の両方へ届け出る
契約行為等を行わない案内所には届出義務がない(標識だけでよい)。
売主業者 A の物件を、業者 B が案内所を設置して媒介する。誰が届出をする?
案内所を設置した B
標識も B が掲示する。ただし B の標識には、
売主である A の商号・免許証番号を記載する。
6. 不当な履行遅延
根拠: 宅建業法 44 条
不当な履行遅延として禁止されるのは、何についての遅延?
宅地建物の登記・引渡し・取引に係る対価の支払いの 3 つ
これ以外の業務(重要事項説明の遅れなど)は 44 条の対象ではない。
6 月以下の拘禁刑または 100 万円以下の罰金。