報酬額の制限
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は宅建業法 46 条(報酬の額)、47 条 2 号(不当に高額の報酬を要求する行為の禁止)、
および国土交通省告示(宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額)。
2026-08-01 に e-Gov の条文原文と突合済み(告示は e-Gov 法令 API の対象外のため、機械での突合から外れる)。
0. どういう制度か
媒介の依頼者は、報酬が高いかどうかを自分では判断できない。だから業法は上限を法定し、
超えて受け取ること自体を禁じる。もらえる額の計算は、次の 3 本を順に当てはめるだけである。
① 売買・交換の速算式(代金は消費税抜きで計算する)
| 取引額 | 一方から受け取れる上限 |
|---|---|
| 200 万円以下 | 取引額 × 5% |
| 200 万円超 400 万円以下 | 取引額 × 4% + 2 万円 |
| 400 万円超 | 取引額 × 3% + 6 万円 |
② 媒介か代理か
- 媒介 … 一方から①の額まで(双方から受け取れば合計は①の 2 倍)
- 代理 … 一方から①の 2 倍まで。ただし相手方からも受け取るときは、合計が①の 2 倍以内
③ 消費税
課税事業者は上限に 1.1 を掛ける(免税事業者は 1.04)。
建物の代金には消費税が乗るが、土地は非課税。速算式に入れるのは税抜きの取引額である。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 代理でも「双方からの合計」は媒介の 2 倍を超えられない
- 貸借は、依頼者双方から受け取る合計が借賃の 1 月分まで
- 依頼者の依頼によらない広告費用は請求できない
1. 売買・交換の報酬
根拠: 宅建業法 46 条 1 項
上限を「一方から」で決めているのは、業者が双方の媒介をすると仕事も倍になるからである。
代理は依頼者のために全部を担うので 2 倍まで認められるが、取引全体から抜ける総額は変わらない。
代金 5,000 万円(税抜・土地)の売買を媒介した。売主から受け取れる報酬の上限は?(課税事業者)
5,000 万円 × 3% + 6 万円 = 156 万円、消費税を加えて 171 万 6,000 円
400 万円超なので「3% + 6 万円」。速算式は消費税抜きの取引額で計算する。
売主から代理を、買主から媒介を依頼された。合計いくらまで受け取れる?
媒介の上限額の 2 倍まで(代理の上限額と同じ)
代理だから 2 倍、媒介だからさらに 1 倍、と足すことはできない。
一つの取引から業者が受け取れる総額は、常に媒介の上限額の 2 倍が天井。
建物の売買で、代金が「5,500 万円(うち消費税 500 万円)」だった。速算式に入れる額は?
5,000 万円(税抜きの本体価額)
建物には消費税が課されるので、必ず税抜きに戻してから計算する。
土地は非課税なので、そもそも消費税が含まれない。
交換する物件の価額に差があるとき、報酬計算の基礎となる額は?
高いほうの価額
差額(交換差金)ではない。
2. 低廉な空家等の特例
根拠: 宅建業法 46 条 1 項
安い物件でも現地調査の手間は変わらないため、通常の速算式では割に合わず取引が成立しない。
そこで調査費用を上乗せできる特例が置かれている。
低廉な空家等の売買の媒介で受け取れる報酬の特例は?
取引額 800 万円以下の宅地建物について、
通常の報酬額に現地調査等の費用を加えて、30 万円(+消費税)まで受け取れる
売主・交換の依頼者から受け取る場合の特例。あらかじめ依頼者に説明し、合意が必要。
低廉な空家等の特例は、買主からも受け取れる?
受け取れない
特例が使えるのは、売主(交換の依頼者)から受け取る場合に限られる。
代理の場合の上限は 60 万円(+消費税)。
3. 貸借の報酬
根拠: 宅建業法 46 条 1 項
貸借は金額が小さく、双方から満額を取ると賃料に対して重くなりすぎる。そこで
取引全体から 1 月分という総枠を先に決め、その中でどう分けるかを当事者に委ねている。
貸借の媒介で、依頼者の双方から受け取れる報酬の合計の上限は?
借賃の 1 月分(+消費税)
代理の場合も、双方から受け取る合計は借賃の 1 月分が上限。
居住用建物の貸借の媒介で、一方の依頼者から受け取れる上限は?
借賃の 0.55 月分(税込)
ただし、媒介の依頼を受けるに当たって依頼者の承諾を得ている場合は、
一方から 1.1 月分(税込)まで受け取れる。
店舗用建物の貸借で権利金の授受がある。報酬はどう計算できる?
権利金の額を売買代金とみなして、売買の速算式で計算できる
計算した額と「借賃の 1 月分」を比べて、高いほうを上限にできる。
ただし居住用建物にはこの扱いが使えない。
4. 報酬以外の金銭
根拠: 宅建業法 46 条 2 項、47 条 2 号
上限規制は「名目を変えれば抜けられる」のでは意味がない。だから費用の名目でも
原則として別途請求できない。例外は、依頼者が自分で頼んだぶんだけである。
業者は、報酬の上限を超えて広告費用を請求できる?
依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額なら請求できる
業者が自分の判断で出した広告の費用は、報酬に含まれるので別途請求できない。
依頼者の特別の依頼による遠隔地への現地調査の費用は、別途請求できる?
できる(依頼者の承諾があり、実費に相当する額であること)
これも「依頼者から特別に依頼された」ことが条件。
通常の物件調査にかかる費用は報酬に含まれる。
上限を超える報酬を「要求した」だけで、実際には受け取らなかった。違反になる?
なる
46 条 2 項は受領を禁じ、47 条 2 号は不当に高額の報酬を要求する行為そのものを禁じている。
要求した時点で違反となり、1 年以下の拘禁刑または 100 万円以下の罰金の対象。
業者は報酬額をどのように掲示する?
事務所ごとに、公衆の見やすい場所に報酬の額を掲示する(46 条 4 項)
掲示義務があるのは事務所だけで、案内所には掲示義務がない
(案内所に掲示するのは標識)。