損害賠償額の予定と特約の制限
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は宅建業法 38 条(損害賠償額の予定等の制限)、40 条(契約不適合責任についての特約の制限)、
42 条(割賦販売契約の解除等の制限)、43 条(所有権留保等の禁止)。
2026-08-01 に e-Gov の条文原文と突合済み。
0. どういう制度か
8 種制限のうち、契約書の「特約」の形で買主を追い詰めるものをまとめて封じる 4 か条である。
どれも買主に不利な部分だけを削るという同じ作りをしていて、契約全体は生かす。
| 条 | 何を止めるか | 効果 |
|---|---|---|
| 38 条 | 賠償額の予定+違約金が代金の 2 割超 | 超える部分が無効 |
| 40 条 | 契約不適合の責任を民法より買主に不利にする | 特約が無効→民法に戻る |
| 42 条 | 割賦販売でいきなり解除・一括請求 | 催告なしの解除等ができない |
| 43 条 | 代金の大半を受け取っても登記を渡さない | 登記の留保が禁止される |
38 条だけは「超える部分が無効」で、40 条は「特約まるごと無効」。ここが最頻出の差である。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 38 条の 2 割は、損害賠償額の予定と違約金の「合計」で見る
- 40 条で有効にできるのは「引渡しの日から 2 年以上」という通知期間の特約だけ
- その特約が無効になると、民法どおり「不適合を知った時から 1 年以内の通知」に戻る
1. 損害賠償額の予定等の制限
根拠: 宅建業法 38 条 1 項・2 項
賠償額をあらかじめ決めておくのは双方にとって便利だが、業者が一方的に高く設定すると
買主は解除も債務不履行もできなくなる。そこで上限を切って、超えた分だけを削る。
業者が自ら売主となる売買で、債務不履行による損害賠償額の予定と違約金を定めるときの上限は?
合計して代金の額の 10 分の 2(20%)
損害賠償額の予定と違約金は合算して判断する。
代金 3,000 万円の売買で、損害賠償額の予定を 500 万円、違約金を 300 万円と定めた。どうなる?
合計 800 万円のうち、600 万円(代金の 2 割)を超える 200 万円が無効
契約全体や特約全体が無効になるのではなく、超える部分だけが無効。
手付の額の制限(39 条)と同じ作り。
損害賠償額の予定を定めなかった場合、賠償額は代金の 2 割に制限される?
されない
38 条は「予定を定めるとき」の上限であって、
予定を定めていなければ実際に生じた損害額を請求できる(2 割を超えてもよい)。
2. 契約不適合責任についての特約の制限
根拠: 宅建業法 40 条 1 項・2 項
民法は「不適合を知った時から 1 年以内に通知」を求めるが、これは起算点が買主の主観なので、
売主にとって責任がいつまでも消えない。そこで引渡しから 2 年という客観的な線までは
業者側にずらすことを認め、それ以上に買主を不利にする特約は丸ごと無効にしている。
業者が自ら売主となる売買で、契約不適合責任について有効に定められる特約は?
不適合を通知すべき期間を 引渡しの日から 2 年以上とする特約
これ以外に、民法の規定より買主に不利となる特約は無効。
「契約不適合責任を一切負わない」という特約を定めた。どうなる?
特約が無効となり、民法の原則に戻る
つまり買主は、不適合を知った時から 1 年以内に通知すれば、
追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除ができる。
特約が無効になるだけで、責任が 2 年になるわけではない。
「引渡しの日から 1 年以内に通知しなければ責任を負わない」という特約は?
無効(2 年に短縮されるのではなく、民法の原則に戻る)
引渡しから 2 年以上でなければ有効にできない。
1 年半でも無効になる。
「契約締結の日から 2 年」とする特約は有効?
無効
起算点は引渡しの日でなければならない。
契約締結日は引渡日より前になるのが通常で、そのぶん買主に不利になるため。
40 条の特約制限は、買主が宅建業者の場合にも適用される?
適用されない(8 種制限なので業者間取引には及ばない)
業者間なら「一切責任を負わない」特約も有効。
3. 割賦販売契約の解除等の制限
根拠: 宅建業法 42 条 1 項
分割払いは、1 回の遅れがそのまま契約全体の崩壊につながる。少額の遅延で家を失わせないよう、
必ず一度立て直す機会を与える手続を挟ませている。
割賦販売で賦払金の支払いが遅れた。売主業者はすぐ契約を解除できる?
できない
30 日以上の相当の期間を定めて書面で催告し、
その期間内に支払われないときでなければ、解除も残代金の一括請求もできない。
「賦払金の支払いが 1 回でも遅れたら催告なしに解除できる」という特約は?
無効
42 条 2 項により、これに反する特約は無効とされる。
4. 所有権留保等の禁止
根拠: 宅建業法 43 条 1 項・2 項
代金の大半を受け取ってもなお登記を渡さないと、業者が倒れたときに買主は物件を失う。
受け取った額が 3 割を超えたら、担保は物件から離すという線が引かれている。
割賦販売をした業者は、いつまでに所有権移転の登記をしなければならない?
受領した額が代金の 10 分の 3 を超えるまでに登記等をする
3 割を超えて受け取ったのに登記を移さない(所有権留保)ことは禁止される。
所有権留保が例外的に許されるのはどんな場合?
買主が、代金の残債務について抵当権・先取特権の登記を申請する見込みがないとき、
または保証人を立てる見込みがないとき
売主が別の担保を得られないなら、留保を続けてよいという整理。
売主業者が、引渡し済みの物件を割賦代金の担保として譲り受けることはできる?
できない(譲渡担保の禁止)
引渡し後に、代金債務の担保として物件を譲り受けることは 43 条 2 項で禁じられている。