手付金等の保全措置
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は宅建業法 39 条(手付の額の制限等)、41 条(工事完了前の物件の保全措置)、
41 条の 2(工事完了後の物件の保全措置)、施行令 3 条の 5。2026-08-01 に e-Gov の条文原文と突合済み。
0. どういう制度か
買主は、引渡しを受ける前に代金の一部を渡す。その間に売主業者が倒産すると、
物も金も手元に無いという最悪の状態になる。そこで、引渡し前に受け取る金には
第三者の保証を付けさせるのが保全措置である。
保全が要らない範囲(少額なら倒産しても致命傷にならない)が、完成前後で分かれる。
| 保全が不要な範囲 | 使える保全の方法 | |
|---|---|---|
| 未完成物件(工事完了前) | 代金の 5%以下 かつ 1,000 万円以下 | ①銀行等の保証 ②保証保険 |
| 完成物件(工事完了後) | 代金の 10%以下 かつ 1,000 万円以下 | ①②に加えて ③指定保管機関による保管 |
完成物件のほうが緩いのは、物が現に在って、最悪でも買主が押さえられるから。
指定保管機関が完成物件にしか使えないのも同じ理屈である。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 「かつ」である(5% 以下でも 1,000 万円を超えれば保全が必要)
- 超えたら、超過分だけでなく受領する手付金等の全額について保全する
- 買主が所有権の登記をしたら保全は不要(倒産しても物を失わないため)
1. 手付の額の制限
根拠: 宅建業法 39 条 1 項・2 項・3 項
手付を高くすると、買主が「解約したら大金を捨てることになる」と縛られてしまう。
そこで額に上限を置き、さらに性質を解約手付に固定して、買主に必ず抜け道を残している。
業者が自ら売主となる売買で、受領できる手付の額の上限は?
代金の額の 10 分の 2(20%)
これを超える手付は受領できず、超える部分について無効となる。
契約そのものが無効になるのではない。
業者が自ら売主となる売買の手付は、どんな性質のものとみなされる?
解約手付
「違約手付とする」「解約はできない」といった特約を付けても、
買主に不利なので無効であり、解約手付として扱われる。
解約手付による解除ができるのはいつまで?
相手方が契約の履行に着手するまで
買主は手付を放棄して、売主は手付の倍額を現実に提供して解除する。
自分が履行に着手していても、相手方が着手していなければ解除できる。
2. 保全措置が必要になる額
根拠: 宅建業法 41 条 1 項、41 条の 2 第 1 項、施行令 3 条の 5
未完成物件で、手付金等の保全措置が不要となるのはどんな場合?
受領しようとする手付金等の額が、代金の 5% 以下 かつ 1,000 万円以下のとき
「かつ」なので、代金 3 億円の 5%(1,500 万円)は 1,000 万円を超えるため保全が必要。
完成物件で、手付金等の保全措置が不要となるのはどんな場合?
受領しようとする手付金等の額が、代金の 10% 以下 かつ 1,000 万円以下のとき
未完成物件(5%)より緩い。物が現に存在しているぶん、買主のリスクが小さいため。
代金 4,000 万円の完成物件で、手付金 300 万円を受領し、その後中間金 200 万円を受領したい。
保全措置は必要?
保全措置は必要?
必要(中間金を受領する時点で、累計 500 万円が代金の 10%(400 万円)を超えるため)
しかも保全するのは超過分の 100 万円ではなく、すでに受領した 300 万円を含めた 500 万円全額。
買主への所有権移転の登記が済んだ後に受け取る金銭は、保全措置の対象?
対象外
買主が所有権の登記を備えていれば、売主が倒産しても物件を失わない。
買主が自ら所有権保存登記をした場合も同じ。
3. 手付金等とは何か
根拠: 宅建業法 41 条 1 項
条文が守っているのは「契約後・引渡し前に手元を離れた、代金になる金」である。
名前が手付でも申込証拠金でも、この性質を持てば同じ扱いになる。
「手付金等」とはどんな金銭?
契約の締結の日以後、物件の引渡し前に支払われる金銭で、
代金に充当されるもの
手付金・中間金・内金など、名目を問わない。
契約前に受け取った申込証拠金 10 万円を、契約締結後に代金に充当した。手付金等に含まれる?
含まれる
契約締結後に代金へ充当された時点で「手付金等」となり、
保全措置の要否を判断する額に算入する。
引渡しと同時に受け取る残代金は、手付金等に含まれる?
含まれない
引渡し前に支払われるものが対象。引渡しと引換えの残代金は保全の必要がない。
4. 保全の方法と効果
根拠: 宅建業法 41 条 1 項各号、41 条 4 項、41 条の 2 第 1 項
未完成物件で使える保全措置の方法は?
① 銀行等による保証(保証委託契約)
② 保険事業者による保証保険
指定保管機関による保管は使えない。使えるのは完成物件だけ。
売主業者が保全措置を講じないまま手付金を請求してきた。買主はどうできる?
手付金等を支払わないことができる(支払いを拒んでも、買主の債務不履行にならない)
保全措置を講じないで手付金等を受領すること自体が業法違反となる。
保全措置としての保証委託契約は、いつまで効力を持つものでなければならない?
少なくとも物件の引渡しまでの期間
保証保険契約も同様で、保険期間は少なくとも引渡しまでとされている。