売買と契約不適合責任
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は民法 555 条(売買)、557 条(手付)、560 条(権利移転の対抗要件)、562 条(追完請求)、
563 条(代金減額請求)、564 条、565 条(権利の不適合)、566 条(通知期間)、
567 条(危険の移転)、570 条、572 条(担保責任を負わない旨の特約)、
577 条(抵当権等がある場合の代金支払拒絶)。2026-08-01 に e-Gov の条文原文と突合済み。
0. どういう制度か
売主は「契約に適合した物」を引き渡す義務を負う。適合していなければ債務不履行であり、
買主には 4 つの手段が与えられる。
| 手段 | 売主の帰責事由 | 特徴 |
|---|---|---|
| 追完請求(修補・代替物・不足分) | 不要 | まずこれ。売主は買主に不相当な負担がなければ別の方法で追完できる |
| 代金減額請求 | 不要 | 原則として催告が要る(追完の機会を与える) |
| 損害賠償請求 | 必要 | 債務不履行の一般則(415 条)による |
| 解除 | 不要 | 541 条・542 条による |
「隠れた瑕疵」という要件はもう無く、契約の内容に適合しているかだけで判断する。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 買主に帰責事由があるときは、追完も減額も解除もできない
- 通知期間の 1 年は「不適合を知った時から」(引渡しからではない)
- 数量・権利の不適合には、この 1 年の通知期間の制限がない
1. 手付
根拠: 民法 557 条 1 項・2 項
手付は「まだやめられる」ことを金で買う仕組みである。だから相手が動き出した後は使えない。
手付を交付した買主・売主は、どうやって解除できる?
- 買主 … 手付を放棄する
- 売主 … 手付の倍額を現実に提供する
相手方が契約の履行に着手した後はできない(557 条 1 項)。
手付による解除をした場合、損害賠償を請求できる?
できない(557 条 2 項)
手付解除は債務不履行による解除ではないため。
自分が履行に着手していても、手付解除できる?
できる(相手方が着手していなければ)
条文は「相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない」と定める。
2. 契約不適合の内容
根拠: 民法 562 条 1 項・2 項、563 条 1 項〜3 項、564 条、565 条
引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約に適合しない。買主はまず何ができる?
履行の追完を請求できる(修補・代替物の引渡し・不足分の引渡し)
買主に不相当な負担を課すものでないときは、
売主は買主が請求した方法とは異なる方法で追完できる(562 条 1 項ただし書)。
代金減額請求ができるのはどんなとき?
相当の期間を定めて追完を催告し、その期間内に追完がないとき(563 条 1 項)
追完が不能、売主が追完を拒絶、定期行為で時期を経過、
催告しても追完の見込みがないことが明らかなときは、催告なしで減額請求できる。
不適合が買主の責めに帰すべき事由による場合は?
追完請求も代金減額請求もできない(562 条 2 項・563 条 3 項)
解除もできない(543 条)。
移転した権利が契約に適合しない(他人の権利で一部移転できない等)。買主の手段は?
種類・品質・数量の不適合と同じ手段が使える(565 条)
追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除。
3. 通知期間
根拠: 民法 566 条
期間を切るのは、時間が経つほど「元からあった不具合か」の判定が不可能になるからである。
数量や権利の不適合は外形で分かるので、この制限が置かれていない。
種類・品質の不適合について、買主はいつまでに通知する?
不適合を知った時から 1 年以内にその旨を売主に通知する(566 条)
通知を怠ると、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除ができなくなる。
「引渡しから 1 年」ではない。
売主が不適合を知っていた場合も、1 年の通知期間は適用される?
適用されない(566 条ただし書)
売主が引渡しの時に不適合を知っていた、または重大な過失により知らなかったときは、
期間制限を受けない。
数量の不適合や権利の不適合にも、1 年の通知期間は適用される?
適用されない
566 条の対象は種類・品質の不適合のみ。
数量・権利の不適合は、一般の消滅時効(知った時から 5 年/権利行使できる時から 10 年)による。
「担保責任を負わない」という特約は有効?
有効(572 条)
ただし、売主が知りながら告げなかった事実、
および自ら第三者のために設定・譲渡した権利については責任を免れない。
(業者が売主のときは、さらに宅建業法 40 条の制限を受ける。)
4. 危険の移転とその他
根拠: 民法 567 条 1 項・2 項、560 条、577 条 1 項、575 条
引渡しを境に危険が移るのは、その時点から物を支配しているのは買主だからである。
引渡し後に、双方の責めに帰することができない事由で目的物が滅失した。買主は代金を払う?
払わなければならない(567 条 1 項)
引渡しの時以後の滅失・損傷については、
買主は追完請求・減額請求・損害賠償・解除のいずれもできない。
買主が受領を拒み、または受領できない場合の危険は?
履行の提供があった時以後に生じた滅失・損傷は買主が負担する(567 条 2 項)
引渡しがなくても、提供の時点で危険が移る。
買った不動産に抵当権の登記があった。買主は代金をどうできる?
抵当権消滅請求の手続が終わるまで、代金の支払いを拒める(577 条 1 項)
このとき売主は、買主に対して遅滞なく抵当権消滅請求をするよう請求できる。
売主が負う「権利移転の対抗要件を備えさせる義務」とは?
買主に対し、登記・登録その他の売買の目的である権利の移転についての
対抗要件を備えさせる義務を負う(560 条)